間違い探し_了

翌日、学校に行くと、教室の扉を開けた瞬間、みんなが僕の方を見た。

「お、おはよう」

挨拶をしてみたが、誰も返してくれない。

なんだ?一体何が?

僕の席の周辺が人だかりになっていて、僕が近づくと人垣が割れた。


そこにあるはずの僕の席が無くなっていた。


「おいおい、なんの冗談だよ!」


僕が思わず声を荒げると、仲のいい▲▲が僕に言った。

「俺たちじゃねえ。朝来たらもう無くて、俺たち探したんだ。でも、どこにもなくて………」

「そんなわけ……」

言いかけた時、校内放送のチャイムが鳴った


「2-Bの●●、至急職員室に来なさい」


「……お前何やったんだ?」

▲▲に言われ、思い出したのは昨日の資料室での出来事だった。



職員室に到着するとそのまま校長室に連れていかれた。校長室にはやはり先生たちが集まっていたが、一人見覚えのない女性が立っていた。


「彼が該当する生徒です」

校長がどこか苦し気に女性に報告した。


「うん、うん。なるほどね」

女性は頷くといきなり僕の手を握ってこう言った。

「あんた、呪われたよ」


「あ、え?」

一瞬言われた意味が理解できなかった。

ノロワレタ?


「助ける方法は……」

担任の先生が女性に聞いた。


「無いことはない。けど……」

女性は親指と人差し指で丸を作った。

「追加料金頂きます」

それはそれは良い笑顔だった。


…………………………………………………


「おねーさんて霊媒師ってやつなんですか?」

職員用玄関を出て帰ろうとする女性を僕は呼び止めた。

あの後、塩をかけられたり、水を飲まされたりなんやかんやあって、僕にかけられた呪いは物の10分ぐらいで解けたらしい。

さっさと帰ろうとする女性にようやく追いついたのだった。

「うん?君か。まあそんなところかな」


「あの、何があったのか教えてもらえませんか」

僕がそういうと、女性は少し困ったように笑った。


「君、授業はどうした。受けなくていいのか?」

もう2時間目が始まっているころだろう。

今さらだ。

僕は首を縦に振った。


「ふーん、まあ少しだけならいいかな」

女性はその場に胡坐をかいて座ったので僕は驚いた。


「君も座りなさい」


「あ、はい」


仕方ないので僕も近くの地面に体育座りした。


「さて、まず今回の件は全て資料室から始まっている」

僕が座ると女性はすぐに話し始めた。


「君もなんとなく理解したと思うが、あそこが真の3-Aだ。今1階にある3-Aは基本的に無関係だ。そして真の3-Aには一つの呪縛があり、それが原因で封印されていた。その呪縛というのが座席を動かしてはならないというあれだ」


そこまではなんとなく理解できていた。


「で、今回君はその封印を解いて教室内に入り、しかも、机を動かさないというルールを破った。フルコンボだな。まずあの部屋にどうやって入ったんだい?」


「扉の鍵が勝手に開いて……」


「招かれたのか。なるほどね」


「招かれた……」


「何分昔のことで、彼ら先生に話を聞いてもさっぱりだったが、現場を見たら明らかだったよ。やつ・・は間違い探しをしているんだ」


間違い探し?


「大方いじめにでもあっていて、机を隠されたことがあったんだろう。だから机の数を数え続けている。机が足りなくなったら学校中を探し回るんだ。昨日君が教室に入った際に机が倒れた。その時、不幸にも机の脚が折れた。まあこれは経年劣化のせいなのだろう。でもそれがきっかけで机が不足した。君は過去のいじめっ子と同じことを意図せずやってしまったわけだ」


それで、呪われた……?


「とりあえず、今日はやつとの縁を切っておいた。これでだめならアタシのところに来ると良いさ。無料で祓ってあげよう」

費用は学校からもらったからねと付け足しながら、彼女は僕に名刺を差し出した。

「株式会社 アマテラスシステム 代表取締役 仙狐 玉藻せんこ たまも……?」


「そ、おおむね24時間対応してるから。じゃねー」


狐仙さんは立ち上がっておしりを払うと帰っていった。


僕も立ち上がっておしりを払う。


とりあえず大丈夫らしいが本当だろうか。

まあでも、僕はもうこの事件について調べるのは止めることにした。

きっと掘り返さない方が良いこともあるんだ。

今はそう思った。


さて、どうやって教室に戻ろうかな。



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間違い探し 浅川さん @asakawa3

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