第24話 終わり?

「玲。ついたよ。」

ヤートはそう言うと馬車を止めました。


私はヤートの声で目が覚めました。


起き上がって前の方をみるとそこには大きな森がありました。


(森?)


私は疑問に思いました。


「なんで森があるの?前は洞窟だけだったのに。」


私がそういうとヤートは静かに答えました。


「簡単なことだよ。洞窟からすれば僕たちは“ハンター心臓”へ向かおうとしている…。いわば敵のようなものだから、洞窟は森を作って妨害しないといけないからね。さぁ、進むよ。」


ヤートはそのまま馬車を動かし始めました。


「ヤート待って。別にあなたも一緒に来る必要ないでしょ。これ以上進んだらヤートだって危険な目に遭う。だからここで降ろして、ここからは一人で行くから。」


しかし、ヤートは馬車を止める気配はありませんでした。


私はヤートの肩を掴みました。


するとヤートはそれを無理やり振りほどいて怒ったかのような顔でこちらを見てきました。


「何が危険だ!そんな事レオに馬車を出せと言われた時から知っているよ!だけど来たんだ!だから来たんだ!そんな所に玲を一人で行かせたくはないから。」


気が付くとヤートは泣いていました。


馬車も御者がいなくなり止まっていていつでも降りようと思えば降りられました。

それでも、私は馬車を降りようと思いませんでした。


ヤートが泣いているのをみて放っておけないだけかもしれないし、その言葉が響いたのかもしれません。

私自身それは分かりませんでした。


だけど、私はヤートの傍まで行き背中をさすりました。





その後、私はヤートと一緒に洞窟を目指しました。


森の木々は高く生い茂っていて視界が悪くなっていました。


ヤートは慎重に馬車を進ませました。


私はいつモンスターが襲ってきても良いようにコールを出して構えていました。


しかし、モンスター達は全く現れませんでした。


それどころかさっきから生き物の姿が見えません。


そしてそれは突然現れました。


だんだんと見えてきたのではなく本当に突然馬車の目の前に現れました。


「洞窟だ。」


そうそれは私たちの目指していたパペット洞窟でした。


ヤートは洞窟の前で馬車を止め降りました。


「ここからは馬車じゃ入れない。そして残念ながら僕もここには入れない。だから、ここからは玲。君が1人で行ってほしい。」


「分かった。ここまでありがとう。あとは一人で頑張る。」


そう言うとヤートは真剣な表情で私の肩に手を乗せて言いました。


「多分この先玲が考えてもいないような事が起きると思う。だけど自分を見失わないで。強く生きて。」


私は静かに頷きました。






その後、ヤートは引き返して帰って行ったのを見送った後に洞窟の奥へと進んでいきました。


洞窟の中は前に来た時よりも薄暗くなっていました。


(前来たときはもっと苔が沢山生えていたのに、今は殆ど無い。)


私は警戒をしながら進みました。


少し歩いていくと日が入ってくる開けた場所が見えてきて私は足早に向かって行きました。


その場所は周りが壁で囲まれていて中央には泉があり、その奥の壁には水が滴っていてその水が溜まって泉が出来たように見えます。また、足元には草が生い茂っています。


そう前来た時と殆ど変わりのない場所がそこにはありました。


私は泉の近くに行きました。


すると突然地図が光始めました。


私は地図を取り出し、中を確認しようとしました。


しかし、地図は取り出すと突然動き始め、泉の方へ放り出され泉の中へ入って行きそうでした。


しかし、地図は水面ぎりぎりで止まり宙に浮いていました。


私はゆっくり泉の中に入ろうと一歩泉へ足を出したときに地図は泉の中心へ行き図面をこちらに向けるように開きました。


私は泉に入ろうとするのを止め地図を見ました。


するとさっき書いてあった図面とは違う図面が書かれているのに気が付きました。


私は図面をじっと見つめ何が書かれているのか見ようとしました。


そして、そこに書かれているものが分かった時、私は目を見張りました。



そこに書かれていたのは祠でした。


それ自体はいたって普通の祠だったのですが、私が驚いたのはその下に書かれていたことでした。



『ハンターは番人としてここに眠る』



私が読んだその時でした。


地図が突然水面に波紋を広げながら図面に書いてあった祠へと変わりました。


祠は石材と木材で出来ていて屋根の下に赤い木材で出来た扉のような物があります。


地図が祠に変わった時に出来た水面の波紋が完全に収まった時に私と祠の間にアクリル板のようなもので出来た橋のようなものが作られました。


橋と行っても薄い板を一枚置いたような道です。


私は恐る恐る橋のようなものへ一歩を踏み出しました。


橋のようなものは以外にも丈夫なようで私が乗っても壊れそうな雰囲気はありませんでした。


私はゆっくりと祠の方へと歩きました。


祠の前まで来ると赤い扉が開きかけている事が分かりました。


(もしかしたら…。この中にハンターが?)


そう思った私は祠の扉を開けてみました。


すると突如として辺りが強い光に包まれました。


私は咄嗟に目を手で覆いました。


光は少しすると弱まっていきました。


私は手を外して辺りを見ました。


辺りは白い霧が掛かったかのように視界が悪いです。


そんな中でも見えた自分の隣にいる人に私は驚きを隠しきれませんでした。



そこには秋音がいたのです。



「なんで秋音がここにいるの!?」


私がそういうと秋音自身も驚いていました。


「本当だ。なんで、私がこの姿でいられるの?」


二人が困惑していると霧の奥の方から声がしてきました。

「それはここがの空間だからです。」


そう言いながらの中から一人の男性が出てきました。


男性は20代後半のような姿で高身長でした。


服装は黒いスーツを着て黒い皮手袋を付けていました。


私が話すよりも先に秋音が男性の所へと駆け寄って行きました。


「ハンター!」


秋音はそう言いながら男性の両手を握りました。


ハンターと呼ばれていた男性は静かに握られている手を払いました。


「その名で呼ばないでください。秋音様。あと今はここで話をするような時ではないはずですよ。」


秋音は少し残念そうにしながらも私の所へ戻ってきました。


男性はほっと一息つくと私の方を見ました。


「改めまして、私はこの空間を管理しているハンターと言います。黒宮 玲様でお間違いいりませんね?」


「…‼。はい、そうです。」


私は自分の名前を教えてもいないのに言い当てられ驚きながらも答えました。


「分かりました。奥でお連れ様がお待ちです。こちらへどうぞ。」


ハンターは淡々とした口調でそう言った後に、くるりと後ろへ振り向くとそのまま歩いていきました。


すると秋音が私の手首を掴んできました。


「誰が待っているのか分からないけど行ってみましょ?」


「…。そうね。」


私は少し警戒しながらも秋音と一緒にハンターの後を追いました。





しばらく歩いてみると四角い木製の椅子が二つとその間に木製の丸いテーブルが置いてある場所に来ました。


ハンターは椅子の一つを引くと

「お連れ様をお呼び致しますのでこちらにお掛けになってお待ちください。」

と言ってきました。


私は言われた通りに椅子に座りました。


すると秋音とハンターは反対側に置いてある椅子の奥へと進んでいきました。


二人の姿は白い霧のせいですぐに見えなくなりました。




少しの間待っていると霧の中から一人の女性が出てきました。


出てきた女性の姿に私は自分の目を疑いました。



そこにいたのはお姉ちゃんでした。



私は驚きのあまり立ち上がってしまっていました。


そして私はじっとお姉ちゃんの方を見つめました。


(この人は本当にお姉ちゃんなのか?またドッペルゲンガーのように姿を真似しているだけの別の生物なのでは?)


私は目の前にいる人が本物のお姉ちゃんなのか必死になって考えました。


しかし、そんな疑いは一言で消え去りました。


「ようやく会えたね。玲。」


「‼。」


私は聞き慣れた声で私の名前を呼ばれ疑問は確信へと変わりました。


(この人はちゃんと、私の知っているお姉ちゃんだ。)


私はお姉ちゃんの所へ行こうとしました。


だけど、お姉ちゃんはそんな私なんて気にせずに席に着きました。


私もそれを見てから静かに席に戻りました。


「さて、時間もあまり残されていないから手短に説明していくわね。まずはなんで私がここにいるのかって話をしましょう。」


「そう!だってお姉ちゃんは“現代ナウ”で死んだじゃん!」


「それに関しては半分正解だわ。私は、いえ正確には私の分身は確かに死んだわ。」


「分身?」


「ええ。そもそも私はもう死んでいるの。あの戦争よりも前にね。いや。死んでいるとはちょっと違うかしら。正確には封印されていたのよ。」


「封印?」


「そう。私は今この場所に封印されているの。理由としては私の今の役職が原因ね。」


「今お姉ちゃんはどんな役職なの?」


「そもそもここは“分岐点の間”といってここから私の後ろに行けば現実世界に、玲のいる方へ行くとクロスワールドへと戻れる。その分岐場所がここよ。私はここの門番をしているのよ。」


「それが封印されているのと何が関係あるの?」


「“分岐の間”は本来誰も来られてはいけない場所なの。だからここを封印して誰も来れないようにしたの。」


「なるほど。」


「さて、話を戻すわよ。私はここに封印されているわけだけど。今までいた人が突然消えては不自然過ぎるでしょ。だから封印される前に自分の分身を用意してゆっくりと居なくなるようにするの。」


「おお~。お姉ちゃん頭良い。」


「まぁ。その分身が変にドッペルゲンガーを飼って好き勝手やっていたから困っていたのよ。そこでちょうど玲が現れて退治してくれたから良かったわ。分身も戦争で死んだし。」


「ちょっと待って。つまりあのドッペルゲンガーはお姉ちゃんの分身が飼っていたの?」


私は食い気味にお姉ちゃんに聞きました。


しかし、お姉ちゃんはそれでも冷静に答えました。


「そうよ。」


「なんでドッペルゲンガーを飼っていたの?」


「知らないわ。」


「そう…。」


「もういいかしら?」


「ええ。ありがとうお姉ちゃん。」


「それで玲にこの場所の門番として聞かないといけない事があるの。」


「何?」

「玲には2つの選択肢があるの。1つ目はこのままクロスワールドに残る事。2つ目は元の世界…。地中に帰る事よ。」


「…え?戻ることなんて出来るの?」


私がそう聞くとお姉ちゃんは少し困ったかのような顔をしました。


「もしかしてあんた…。クロスワールドの仕組みについて理解せずにここまで来たの?」


「…そうだよ。」


私がそう言うとお姉ちゃんの困り顔は呆れ顔へと変わりました。


「分かったわ。それじゃあ一から説明するわ。まずこの世界は正確にいうと異世界じゃないのよ。」


「え⁉じゃあここはどこだっていうの!」


私はお姉ちゃんの話を遮るように言いました。


お姉ちゃんは少しイラついているかのような顔をしています。


「話は最後まで聞きなさい。まずこの世界は私達、悔みながら死んだ人の思いが集まって出来た世界なの。色々な種族がいるのはそのせい、人の『あんな風になれたななぁ。』、『死ぬまでにこんな事やりたかったな。』が形となって表れているものなの。」


「ほう。」


「だから玲も『人を笑顔に出来ることをしたかった。』がこの世界では出来ているのよ。」


「確かに!じゃあここは色々な人の想いが詰まった世界なのだね。」


「そう。その通り。さてここで玲には一つ問題が残っているの。」


「何?」


私は和んだ表情をしながら首を傾げて聞きました。


しかし、その表情はお姉ちゃんの一言で一瞬にして凍りました。


「あなたまだ生きているのよ。」


「⁉」


「驚くのも無理はないわ。だって一度は死んだからね。」


私は一つ一つ言葉を選びながら聞きました。


「…じゃあ。なんで。生きているのよ…。私。」


お姉ちゃんはただ一点に私を見つめながら言いました。


「地球の医学が進歩し過ぎたの。玲が自殺して少ししてからご近所の人がやってきて玲を見つけたの。その時に心肺蘇生をしながら救急車を呼んで、集中治療室に入った玲は一命を取り留めたの。だから地球では昏睡状態として病院にいるわ。」


「そんな…。」


私の事など気にせずにお姉ちゃんは話を続けました。


「さて本題に戻るわよ。玲がこのままクロスワールドに残るというのなら世界はバランスを崩して、じきに消滅するわ。もし玲がこのまま地球に帰るのなら苦しい思いをするのは玲だけで済む。さてどっちを選ぶ?」


「そんなの…。私…。」


そこから先の言葉は出ませんでした。


(だって、世界を消すか、またあの地獄に戻るかでしょ。そんなの…。)


「………決められないよ。」


私がそう言うとお姉ちゃんは退屈そうな顔をしてこちらを見てきました。


「まぁ。どちらでもあなたの好きな方を選びなさい。」


私は必死になって考えました。



(このままクロスワールドに残ればソフィーさんや村長さん、トキハさんに、それにレオさんだって消えてしまう。それならいっそのこと…。)


私は迷いながらも答えを出そうとしました。


「私は…。地球に…。」


その時でした。


私の髪を結んでいた紐が解けてしまったのです。


そしてふとその解けた紐が目に入りました。


そして、その瞬間、走馬灯のように今までクロスワールドにいた時の思い出が蘇って溢れてきました。



ソフィーさんと一緒に寝た小屋の事



サーカス団でのショーやフットマンの事


そしてフットマンから貰った小説の事



現代ナウ”の郊外の小さな村にいた老紳士とその息子さんの事



秋音の事



トカゲの事



レオさんの事



そして、



結局一番色々なことでお世話になったトキハさんの事。



全ての思い出が一瞬にして蘇ってきました。


そんな中で微かに声が聞こえてきました。


「…い!玲!聞こえているかい!玲!」


トキハさんの声です。



私は辺りを見ましたがトキハさんの姿はありませんでした。


しかし、お姉ちゃんにもこの声が聞こえていたみたいで必死になって姿を探していました。


「馬鹿な!一体どこからこんな声が!」


私は声の出どころを探すのを止め、ふと紐に視線を落としました。


「玲!聞こえているなら返事しなさい!玲!」


どうやら声はこの紐から聞こえていたようです。


「うん!聞こえているよ!ちゃんと…。聞こえているよ!」


紐から安心したトキハさんの声が聞こえてきました。


「そうかい。それは良かった。そんなことより玲。今あんたの姉ちゃんがいるのでしょ?そいつの近くまでこの紐持って行ってくれないかい?」


「うん。分かった。」


私はトキハさんの言う通りにお姉ちゃんの近くに紐を持っていきました。


するとお姉ちゃんは不思議そうに首を傾げました。


「何?紐?これが一体どうしたの?」


「あ~。聞こえているかい?玲の姉ちゃんとやら。」


「‼」


さすがのお姉ちゃんも紐から突然声がして驚きを隠しきれていませんでした。


トキハさんはそんな事お構いなしに話を続けました。


「話しは全部この紐経由で聞かせてもらったわ。何せこの紐は通話魔法を掛けておいたからね。それで、何?玲がクロスワールドにいたら世界が消滅する?ふざけた事言っているんじゃないよ!玲がこっちに居ようが居なかろうがこっちの世界はなんとかやっていくから変に心配するものじゃないのよ!良い?この世界の住人は私たちなの!この世界を今後どうしていくかもどうなっていくかも私たちの勝手でしょ!そんなことを勝手に決めつけんな!」


「…。」


「…。」


トキハさんの勢いに負けて私とお姉ちゃんはその場で黙り込んでしまいました。


すると遠くの方からヤートの声が聞こえてきました。


「ちょっと玲の姉ちゃんに聞きたい事があるのだけど良い?」


「…何?」


「そっちの医療ってどういう状態なの?昏睡状態ってことは延命作業が行われているはずだよね?その期限は?いつまでも目の覚めない人の延命をしている程の物資量はどの世界でもないはずだよ。」


「それは…。」


お姉ちゃんと私は、また黙り込んでしまいました。


それでもヤートは話をしました。


「分からないってことだよね?つまり、こっちの世界が消滅する前に向こう地球の玲は死ぬ可能性だってあるはずだよ。そうなったら玲は事実上死んだ人になる。つまりクロスワールドも受け入れるしかなくなり自然と世界のバランスも安定するのではないのかな?」


「それは確かにそうかもしれないけど…。危険過ぎるわ。その前に壊れるかもしれないわ。」


お姉ちゃんがそう言うと紐からレオさんの声がしてきました。


「っけ。自分の妹の事より世界かよ。」


その一言にお姉ちゃんは激怒したかのような表情になりました。


「何が言いたいのよ!世界より…、私の唯一の居場所より妹を優先しろって言いたいの?それこそふざけないでよ!私は頑張ってようやく手に入れた居場所なの!こんなことで消されるわけにはいかないのよ!」


私はただ茫然と立ち尽くしていました。


「お姉ちゃん…。さっき私の好きにしなさいって言ったよね。なのになんで私を地球に行かせようと必死になっているの?」


お姉ちゃんはまた黙りました。


「ねぇ。なんか言ってよ!ねぇ!」


私はそう言いながらお姉ちゃんの服の袖を掴みました。


するとお姉ちゃんは私の手を振り払ってきました。


「正直あんたなんかさっさと死んじゃえば良いって思っていたのよ。なんでアイツら勝手に逃げ出しただけで私の方にしわ寄せが来るのよ。そのせいで仕事仲間の人にいじめられるし、もううんざりしていたのよ!あの自殺だってそうよ。もう楽になりたかっただけなのよ。」


「…そう。そうだったのね。分かったわ。」


気が付くとお姉ちゃんの目には涙が流れていました。


「分かってくれたの。じゃあ。向こう《地球》へ行ってくれるかしら?」


その言葉を聞いた瞬間、私の中の何かがプツンと切れました。


そして私は迷わず全力で来た道を戻り始めました。


後ろでお姉ちゃんが叫んでいます。


「待って、どこに行くの!そっちはクロスワールドよ!やめて戻ってきて!もうこれ以上私を苦しめないで!」


私はお姉ちゃんの姿が霧で隠れるぎりぎりの所で振り返りました。


「私ね決めたの。自分に正直に生きるって。今まではお姉ちゃんに会いたいって思って生きてきた。だけど…。今は違う!今のお姉ちゃんは昔のお姉ちゃん。私の大好きな頃のお姉ちゃんとは違う!だから私も自分のために、私自身が生活していて楽しかった方で過ごしていたい!だから!私はこっちに残るって決めたの!じゃあね!私のお姉ちゃん!」


そう言って私は再びクロスワールドの方へと走り始めました。


するとまた後ろから声が聞こえてきました。


けど今度はお姉ちゃんではありませんでした。


今度はヤートや村長さんにトキハさんの叫び声でした。


「「戻ってこい!玲!」」


その後に続くようにレオさんが叫びました。


「また!皆で!一緒に暮らそうぜ!」


私も走るスピードを緩めることなくそれに応じて叫びました。



「はい!!」



そうして走っていると辺りの霧が段々と濃くなっていきました。


私はそれでも走ることを止めませんでした。


すると周りの霧がゆっくりと夕日のような色の霧に変わっていきました。


私はそれでも走り続けました。


すると、段々と霧が薄くなってきました。


そうして、辺りが見えてきて自分がどこにいるのかようやく分かりました。


ここは桜木村の門の目の前でした。


時間帯的には夕方なのでしょうか。


空が赤くなっていました。


私が門を通って少しすると‘バル‘の方からレオさん達が走ってくるのが分かりました。


そしてそのまま私の所に来た時にこう言ってきました。



「「玲!おかえり!」」



その一言で私は涙が出てきましたが、そんなこと気にせずに私もこう言いました。


「ただいま!」


そう言った時に私はこうも思いました。


(やっぱり、私の居場所はここだな。)



それから私たちは一度‘バル‘に戻ることにしました。


帰っている途中は皆和気あいあいと話しをしながら帰っていました。


すると村長が真剣な表情で私の方を見てきました。


トキハさんもそれに気が付いたみたいです。


「どうしたの村長?そんな顔して。」


「いや、玲に一つ聞きたい事があってじゃの。」


「私?」


(なんだろう…。)


「お前さんはこれからどうするつもりじゃ?」


「どうするってどういうことですか?」


「お前さんの性格なら多分世界のバランスを整える方法を探すのだろうと思ってな、それならしばらく旅をして調べるのもありじゃと思っての、だから聞いてみたのじゃ。このままここに残ってくれるのか。はたまた、調べるのに専念するために旅にでるのか。どっちにするつもりじゃ?」


「それは…」


私が言いきる前にレオさんが割り込んできました。


「そんなの選ぶ必要もないだろ。ここを拠点としてゆっくり調べていけば良い。ここにいる皆で。」


レオさんがそう言うとヤートとトキハさんは静かに頷きました。


「皆…。」


「どうやら決まったようじゃな。」


私もゆっくりと頷きました。


そうしたらトキハさんが先頭に出てきて言いました。


「はいはい。今はそんな事考えずに玲が帰ってきた事を喜びましょ。話はまた明日から!」


「それもそうだな!」


レオさんがそう言いながら笑いました。


(そうだ。またゆっくり初めていけば良い。世界の事も全部。)


ふと空を見るともうすぐで夕日が沈み夜になろうとしていました。


だけど、夜は必ず明けます。


それと同じように私たちもきっとこれからどんな事があろうと大丈夫なはずです。


私の物語はこれで終わってしまいますが、これからも私の人を救う活動は続きます。


なので、心のどこか隅の方で応援してもらえると嬉しいです。


それでは地球の皆さん。


おやすみなさい。


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異世界のサンタは鬼でした。 脱走 桜エビ丸 @SAKURAEBIMARU

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