神との面会 23/2/02

!~よたみてい書

そこに神様がおられた

「鳥居の前で一礼をする」


 わたしは自分の身長の二倍ほどの高さがある赤い鳥居の前で、顔にかけている猫のお面を左手で押さえながら頭を一回下げた。


 そして頭を上げて、キャットステップ――素早い横っ飛び――で参道の脇に移動し、手水舎――手を洗う水がためられていて、ひしゃくが置かれている建物――に歩いていく。


 参道の真ん中は神様が通る道なので、人間である参拝者は端を通らなければいけない。


 そして辿り着いたら、ひしゃくを持ち、左右の手を手水屋の神聖な水で清め流し、いざ再び参道の脇を通って賽銭箱の前に向かった。


 すると、いつもと様子が違う子に気付く。


 神社の扉が閉められていた。


 扉のガラス窓部分から神社内の様子をうかがうと、ご老人の女性と少し年を重ねた女性が座布団の上に座っている。


 そして奥には神主もいた。


 私は恐る恐る扉を開いて、音をたてないように中に入っていく。

 

 祈祷だ。


 神主による祝詞のりとも聞こえてくる。 


 ちなみに、インターネッツを利用してこのことについて調べたところ、祈祷している所に偶然参拝できた場合は、神様から歓迎されているという事。

 さらに神様から幸運の恩恵をもたらしてくれるとか。

 自分が祈祷の申し込みをしていないのにもかかわらず、こんなに恵んでいただけて貰えるのは嬉しい。


 また、【他人が祈祷中に無関係者の参拝客がお参りしても大丈夫なのか】、という疑問については、インターネッツでも情報は見つけられなかった。

 大事な情報が無いよ!


 というわけで、とりあえず二礼二拍手一礼を終えてから、縁起のいい五円玉を奉納する。


 願い事は、精神的な病のこと、これからの人生のこと、仕事のこと、そして創作活動のことについて、強く、そして念を押して力添えをお願いしてきました。


 もちろん、近くに置いてあったおみくじが入った箱に百円玉を投下して、一枚神様の言葉として受け取ります。


 祈祷を邪魔しては悪いので、わたしはキャットウォーク――静かに移動――で社内から離れるのだった。




 家に到着し、衣服や荷物を整え終えたら、持ち帰ってきたおみくじを開けて内容を確認する。


 【大吉】


 書かれていたわたしの簡潔な運勢欄にはそう書かれていた。


 細かいことはここでは省くけれど、神様はわたしに、【貧者ひんじゃいつくしみ、弱者を助けよ】と書かれていた。

 いや、啓示を与えてくださった。

 道しるべを示していた。


 神様にそう言われたら、そうするしかない。


 わたしは顔につけていた猫のお面を外しながらゆるんだ顔をさらけ出した。


「ちなみに神様、わたしも貧者であり弱者なんですけど!」

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