彼らは百代の過客にして

元禄二年三月二十七日、師匠の松尾芭蕉と共に陸奥への旅に出た曾良。早速、この心待ちにしていた日を俳句にしようとするが、最初の五文字が思いつかない。
歴史に名を遺す俳人・松尾芭蕉の代表作『奥の細道』、その始まりの瞬間を、弟子の曾良の目線で描く歴史短編小説。創作者としての苦しみに共感し、それに対する芭蕉の問答に、こちらも導かれるような気持ちです。
始まりの日はとてもワクワクするものですが、そこには「別れ」も含まれています。忙しなく過ぎていく季節の中だからこそ、一度立ち止まって、それを表したいと思わせるのかもしれません。