有名出版社KADOYAMAに勤める真木が新しく担当することになったのは、10本もの連載作品を抱える人気ウェブ小説家六地蔵リクオ。しかしこの男、言動の端々に怪しい部分が見られ、彼の口から語られる創作論もどこか空々しい……果たしてこの男の正体は?
ウェブ小説にはウェブ小説ならではの良さがある。作品を書いている途中でも不特定多数の読者に読んでもらったり、さらにリアルタイムで感想がもらえたりするなんて、昔のアマチュア作家には考えられなかっただろう。そう考えると大変良い時代である。しかし、良いこともあれば、その反面悪いことも当然あるわけで……。
そして本作ではそのウェブ小説の悪い側面がグッと凝縮されているのである。ネタバレになるので詳しくは読んでもらいたいのだが、本作で描かれるのは夢のあるサクセスストーリーなどではなく、一人の作家がウェブ小説の地獄に転がり落ちていく過程! そしてここで書かれていることはけっして特別なことではない。承認欲求を持つ誰もが、一つ間違えればリクオのような沼にはまりかねないのだ……!
ただのエンタメ小説として読んでも面白いが、色々と教訓を得られる秀逸で残酷な一作だ。
(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=柿崎 憲)