箱庭少年とハコニワガール
ShiotoSato
「ハコニワガール」
『霧島さん。話って…?』▶︎
クラスの高嶺の花と呼ばれている少女、霧島さん。その彼女が僕に話って…一体何だろう。▶︎
『あのね。実は––––』▶︎
彼女のシャンプーだろうか、ローズの香りが風に乗って漂って来た。▶︎
『…あなたのこと、好きなんです』▶︎
『えっ––––!?』▶︎
衝撃だった。もちろんそれは嬉しくない訳が無く。▶︎
『……僕なんかで、良いんですか?』▶︎
『え…?』▶︎
『僕、ドジしてばっかりだし…誰かにいつも迷惑かけてるんです。そんな僕なんかと––––』▶︎
『…違いますよ』▶︎
彼女が、優しい口調で言う。▶︎
『そこが、愛らしくて好き…なんです』▶︎
『霧島さん……』▶︎
『だから、その。私と––––』▶︎
僕は。▶︎
『ぼ、僕の方こそお付き合い願います!!』▶︎
気付いたら、そんなことを口走っていて。▶︎
『……え、あ…』▶︎
しまった!▶︎
『……ふふっ』▶︎
でも彼女は微笑み。▶︎
『…私も、そのつもりでしたよ』▶︎
––––この学校という箱庭の中で、また一つ。
新たな恋が、実った。▶︎
–––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––
「…何してんだよ、俺」
大学には行かず、ろくに仕事もしていない俺。
今も、先月発売された恋愛シミュレーションゲーム「ハコニワガール」を遊んでいた。
けれど内容はどれも息の詰まるものばかりで。
「……ふぅ」
今年の夏も、この部屋でずっと過ごすだけで終わってしまうのだろうか。
「……まるで、俺が箱庭にいるみたいじゃないか」
もちろん自分に行動力がない故なのは分かってるけど。
…さっきので、ゲームのストックは無くなってしまった。
「……よいしょっと」
箱庭と呼ぶには汚すぎるこの部屋を。
俺は、脱出する。
そんなゲーム脳な発言を思い付き、苦笑した。
けれど俺は。
立ち上がって、自分で部屋を出た。
箱庭少年とハコニワガール ShiotoSato @sv2u6k3gw7
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