荒みブルー
黒幕横丁
荒みブルー
「ホーホッホ。少し邪魔が入ってしまったけれど、ハリゴンレンジャーレッドの魂の一部は、この私、シンフォニア様が頂いて差し上げたわよ!」
ド派手なメイクで厳つい衣装を身に纏った少女が高笑いでそういった。
「くっ。貴様、俺の魂に何をする気だ」
魂を若干抜かれたレッドは、後遺症からなのか少し辛そうにグリーンに介抱されていた。シンフォニアを仰ぎ見て睨むレッド。
「さて、どうしてあげようかしら? 魂を媒体として新たな最強怪人でも生み出してあげるとか良さそうね。仲間の魂を使って作られた怪人に倒されるハリゴンレンジャー。考えただけでも愉快でたまらないわっ!」
シンフォニアはくつくつと笑みを浮かべる。
「私達はそんな怪人には負けないわ。絶対レッドの魂は取り戻して見せる。そうよね、みんな!」
ピンクがそういうと、レンジャー達は互いを見つめ合って頷いた。
「えっ、えっ。それはとても困るわ。せっかく好きなレッドの魂が……」
『えっ』
シンフォニアが素のトーンでとんでもないことを言い放った為、レンジャー達はざわつき始める。
「シンフォニア、貴様。それはどういう意味だ。説明をしろ」
当事者のレッドは訝しげにシンフォニアに問う。
「あ、ち、違うわよ。敵である貴方達レンジャーの魂は大変貴重だから、ペーケ様にけ、け、献上するのよ」
シンフォニアが苦し紛れに言い訳を始めた。
「で、本音は?」
イエローが言うと、シンフォニアはモジモジし始める。
「だってぇー、大好きなレッドの魂だもん。やがては肉体ごと手に入れて、私のことをメロメロにしてあげちゃうんだから」
「あ、あのー、シンフォニアさん、キャラ変わってません?」
さすがのレッドもこれにはドン引きの様子で危うく意識を失いかける。
「ちょっと、待ちなさいよ!」
ピンクがシンフォニアに向かって叫ぶ。
「お、ぴ、ピンクなんとかいってや……」
「レッドは前々から私が狙ってたのよ。抜け駆けなんて卑怯よ」
「あ、れ?」
「ピンクも酷いわ、イエローちゃんだってレッドくんのこと狙ってたもん!」
「い、イエローさぁん?」
いきなり始まった、シンフォニア・ピンク・イエローの三つ巴にレッドは困惑するしか出来なかった。
「はははー。レッドはモテるなぁ、うらやましいぞー」
グリーンは呑気に笑いながら三つ巴の抗争をレッドを介抱しながら観戦していた。
「……さない」
レッドは急にゾクッと寒気が起こる。振り向くとそこにはブルーが立っていた。
どす黒い嫉妬オーラを身に纏って……。
「ぶ、ブルー?」
「許さない……。クールな二枚目キャラの俺が全くモテず、レッド、主人公のお前だけ皆にモテるなんて、許さない」
「ぐ、グリーン、ブルーがなんか怖いっ!」
レッドは涙目の声でグリーンに助けを求めるが、
「あー、彼の地雷を踏みぬいちゃったら、こりゃ誰にも止められないねー、ちょっと、俺三つ巴観戦してくるわ」
そういってグリーンはぽいっとレッドを捨て置いてどこかへ行ってしまった。
「ぐ、グリーーーーーーーーーン!」
「リア充はわが剣の業火で消えよ、必殺……」
ブルーは自分の武器である短剣を取り出し、レッドに向けて構える。
「ブルー、落ち着けって、だ、誰かブルーをとめてー」
レッドは助けを呼ぶが、誰もレッドの命の叫びは聴いていなかった。
「荒みブルー・ファイナルアターック!」
ブルーが必殺技を叫ぶと、短剣から青い炎を纏った光の鳥がレッドに向けて飛び立つ。
「ぎゃぁぁぁあああああ!!」
攻撃を受けたレッドの断末魔が雲一つ無い晴天にこだまする。
こうして、この世界に【荒みブルー】という言葉が誕生した。
この荒んだブルーを元に戻せるのは、レッド君しかいな……あー、多分無理だろうなぁ。
頑張れレッド、負けるなレッド、世界に平和が訪れるその日まで。
荒みブルー 黒幕横丁 @kuromaku125
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