フィギュア

日乃本 出(ひのもと いずる)

フィギュア


「みんな、おはよう」


 部屋の中で青年は目を覚ますと、ゆっくりと立ち上がりながら周囲に囁いた。

 青年の部屋の中にはおびただしい量の、愛らしい女性の人形フィギュアがあった。


 架空の学校の制服を着た人形。水着姿の人形。露出の多い中世の甲冑のようなものを身に着けている人形。下着姿の人形。未来を感じさせるピチっとフィットしたレオタードを着た人形。これらまったく共通点の無い姿をしているが、これらには一つだけ共通点があった。そしてそれは、青年にとって唯一無二の絶対なる価値をもつものであった。


 人形達の共通点――それは、彼女達は全てアニメやゲームのヒロインをかたどった人形なのであった。

 それらが青年の部屋の中、パソコンのディスプレイの上、人形のために作った棚、床などに、ところ狭しといったように立ち並んでいるのだ。

 そしてその人形達の視線は、青年の寝る布団に注がれるように調整されてある。そうすれば、青年は常に人形達に見守られながら眠りにつくことができるからだ。

 青年はとにかく人形達を愛していた。人形達もきっと自分のことを愛してくれるだろうと青年は思っていた。だからこそ、人形達に見つめられると、青年は心の底から満ち足りた思いになることができたし、また、人形達にもその想いを伝えるべく青年は様々な試行を繰り返していた。


 人形の一つ一つ――いや、一人一人を名前で呼ぶのはもちろんのこと、手入れと称した丁寧な愛撫をおこなったり、人形達の耳元で愛の言葉をささやいたり、果てには人形達の視線の集まる布団の上で自慰行為をおこなったりもした。

 青年はきっと自分の想いが人形達に伝わっていると、心から信じていた。だが、当然というべきか、青年の想いに対して人形達が何かしらのリアクションを返してくれることはなかった。

 それゆえ、青年は日々苦悩していた。どうにかして人形達に命を吹き込んでやることはできないものか。そうすれば、自分の想いに応えてくれた人形達からさらなる寵愛ちょうあいを受けることができるはずだと、青年は叶わぬ願いに身をはせ、夢想していた。

 そんな悶々とした想いを抱きつつ、ある日青年が新しい人形を手に入れようとパソコンを操作していた時である。

 青年が贔屓ひいきにしているサイトの広告をクリックすると、突如としてパソコンのディスプレイの画面が真っ黒になってしまったのだ。


「おや、故障かな……?」


 そう思い、マウスを動かしてみると、真っ黒になったディスプレイの画面上にマウスカーソルが動くのが見えた。ということは、パソコンは正常に動作しているらしい。といっても戻るボタンもなければ、スタートボタンも表示されていない。ただ真っ黒な画面が表示されているだけだ。


「どうしたものか……」


 青年は少しの間考え、そして強制終了させてみようと、その操作をした。すると、


「おばんでがす~」


 と、間の抜けた声とともに、真っ黒なディスプレイの画面から顔色の悪い男の顔がにゅっ、と飛び出てきたのだ。


「うわっ?!」


 青年はびっくりしてひっくり返ってしまった。そしてひっくり返った視界の中に、なにやら黒い靴を履いている人物の足元が映った。

 この部屋には自分しかいないはずだ。それに、外から入ってきたにしたとしても、自分に感づかれずに入ることは不可能なはずだ。とすれば、今目の前に映っている黒い靴を履いた人物は、さっきのディスプレイの人物なのか――。

 青年は自分の考えを確かめるべく、急いで身を起こして黒い靴の人物の全体像をあらためた。

 その顔は間違いなく、先ほどのディスプレイから出てきた男の顔であった。さっきは一瞬だけでよくわからなかったが、よく見ると顔色が悪いのではなく、薄青い体色をしているのだというのがわかった。それが、なんとも陰気そうな顔つきとあいまって、顔色が悪いのだと思ってしまったのだろう。全身は真っ黒の礼服ともとれるスーツで固めている。顔つきからイメージするに、喪服と判断するのが妥当なのかもしれない。ともかく、見ているだけで気が滅入ってきそうな男であった。


「だ、だれだあんたは?!」


 青年の問いかけに、男はニヤリと神経にさわる笑みを浮かべて答えた。


「おばんでがす。あたしはあんた達人間のいうところの悪魔でございます」

「悪魔だって? 勝手に人の部屋に押し入ってきておいて、そんな冗談を言われても笑えやしない。まあ、仮にもしあんたが悪魔だとしてもそれがなんだっていうんだ。僕は悪魔なんかに用はない。さあ、出てきたディスプレイに頭を突っ込んでさっさと帰ってくれ」

「まあまあ、そう言わずに。慌てるニートはもらいが少ないって言葉もありますし、少しはあたしのお話を聞いてくださってもいいんじゃありませんかね?」

「妙に俗世慣れしている悪魔なんだな。それならなおさら信用できない。今の俗世は金、金、金だ。地獄の沙汰も金次第というし、おおかたあんたも出稼ぎにきたタチなんだろう。あいにく、僕の持ち合わせは一般人より少ないほうでね。さっさと別の金持ちのところにでもいったほうがいいんじゃないですか」

「ほら、またそうやって結論をお急ぎになる。そんな性格だから人より金銭を稼ぐことができないんじゃないんですかねぇ? まあ、それは置いておきましょう。なんです、金なんて。あんなもの、あたしたちの世界じゃあ何の役にもたちゃあしませんよ」

「それじゃあ、何しにここにきたんだ」

「なに、あんたさんの願いを叶えてやろうと思いましてね」

「僕の願いを? はっ! 何かと思えば詐欺師の常套句みたいなことを言うやつだ。いくら悪魔とはいえ、僕の願いを叶えることなんてできやしない。誰にも叶えられやしないからこそ、狂おしいほどその願いを渇望しているというわけでもあるけどね」

「その狂おしい渇望とやらがあたしを呼び出したのですよ。つまり、あたしはあんたさんによって呼び出されたってわけです。だから、あんたさんの願いを叶えることなんて造作もない。さあ、その狂おしい渇望とやらを吐き出してごらんなさい」


 クククッという不気味な笑みを悪魔は浮かべた。

 願いを――あの、願いを叶えてくれる――!

 青年は勢い余って思わず願いを吐露しそうになるのを寸前のところで思いとどまった。なにせ、相手は悪魔なのである。願いを叶えてもらう代わりにどんな見返りを望まれるかわかったものではない。


「もし――もし、あんたに願いを叶えてもらったとする。すると、どうなるんだ?」

「どうなる、と申されますと?」

「悪魔ともあろうものが、無償で願いを叶えるなんてあるわけないじゃないか。何か僕と取引をするつもりなんだろう? でもね、さっきも言ったように、僕は金なんてこれっぽっちもありゃしないよ」

「また金ですか。よほど、金が好きだと見えますな。まあ、それも仕方のないことかもしれませんな。昨今、あたしに願いを叶えてもらおうとする人間達の九割くらいは金に関する願いなのですからな。そんな今時珍しく、あんたさんは金以外のことで頭を悩ませていらっしゃる。ですから、あたしもあんたさんのところへとご参上したといったものでしてね」


 やはり悪魔というだけあって、青年の心がよめるのだろうか。青年はまだ願いを口に出してはいないのに、青年の願いが金で解決するものではないことをピシャリと言いあてられてしまった。青年はおののきながらも、含み笑いをする悪魔との交渉を続ける。


「質問に答えてくれないか! あんたに願いを叶えてもらったら、いったいどうなるんだ?!」

「あたしが願いを叶えた人間は、あたしに魂を捧げることになっております」

「そんなバカなことがあるか。願いを叶えてもらっても、魂を奪われたとあっちゃあ何にもならないじゃないか」

「またまたの早合点。少しは学習しなさいな。たしかに、願いを叶えるかわりに魂を捧げていただくことになってはいますが、それは別にその時すぐというわけではないのですよ。つまり、死んでしまったあとの魂を捧げていただくということでございます」


 悪魔の説明を聞いて、青年は考えた。自分はまだまだ若く、生活が多少乱れているとはいえ、健康には何も問題などない。死など、まだまだ遥か先のことだ。死後の世界がどんなものかはわからないが、少なくともこのチャンスを逃してしまえば、味気の無い現実世界を、死ぬまで後悔を感じたまま生きていかなければならないだろう。

 そんな人生を……送るくらいなら――!

 青年は、決心を固めた。そして、今まで誰にも言えなかった、魂の懇願を悪魔に向かって吐き出した。


「ここにいる女の子達に――命を与えてやってくれッ!!」

「ふむ。つまり、この部屋の中全ての人形に命を与えよと申される?」

「人形なんて言うなッ!!」

「これはこれは口を滑らせてしまいましたかな。しかし、本当にそれでよろしいのですかな? あんたさんの願いは、ここにいる人形――おっと、彼女達に命を与えてやるということで相違ないのですかな?」

「相違もなにも、それが僕の願いであり、僕の人生の全てなんだッ!! さあ、早く――願いを叶えてくれッ!!」

「そこまでおっしゃるならそういたしましょう。ああ、そうだ。一応、最後に念押しさせていただきますが、願いを叶えたら、あんたさんが死んだらその魂を捧げていただくことになりますが、それでよろしいのですね?」

「クドいぞッ!! 魂なんかでよければいくらでもくれてやるから、早く願いを叶えてくれッ!!」


 青年の言葉に、悪魔はしたり顔になりながら手を叩いて歓喜した。そしてごにょごにょと何やらまじないと思しきつぶやきをし、両手を広げその場でくるりと一回転してみせた。すると、悪魔の周りにキラキラと光るリンプンのようなものが宙に現れた。


「さて、どうなりますかな――――」


 意味ありげな嘲笑を浮かべ、悪魔はパンッ! と手を叩いた。すると悪魔の周囲のリンプンが一斉に部屋の中の人形に向かって飛び散っていった。

 青年はそれを期待と焦燥とが入り交じった複雑な気持ちになって見守っていた。やがてリンプンが人形たちの中に吸い込まれるようにして消えると、その瞬間――青年は人形たちの大いなる変化をその全身で感じた。

 今まで青年が感じていた視線は、青年が感じようと努めて感じていた、いわば無機質な視線であった。

 しかし、今、青年が感じている視線は、明らかに生あるものから感じられる、意思の宿った生々しい視線である。


「あんたさんの願い――確かに叶えてさしあげましたよ」


 ニヤニヤと不敵な笑みを浮かべて悪魔がそう言うと、青年はそれを確かめるべく、ズラリと立ち並ぶ人形達のうち一つを、無造作に選んで手に取った。


「痛いっ! ちょっと! もう少し優しくにぎってくれたらどう?!」


 不意に不満の言葉を漏らした愛しい人の姿に、青年は驚きのあまり思わず愛しい人を手から滑り落としてしまった。


「きゃぁぁぁっ?!」


 悲鳴をあげながら落ちていく愛しい人の姿に青年は我に返り、急いで手を差し伸べて助けようとしたが届かなかった。しかし、愛しい人が落下した場所は青年の布団の上だったのが幸いした。ぽふっと布団に尻もちをついた格好になった愛しい人は、お尻を手ではたきながら立ち上がった。その流暢極まる動作は、間違いなく人間そのものであった。


「もう! 気をつけてよね! これが地面だったら、アタシ死んじゃってたかもしれないんだから!」


 愛しい人の訴えに、部屋中の愛しい人が「そうよ! そうよ!」と同調した。そして部屋中の愛しい人達は、それぞれ思い思いの言葉をあげながら布団の上に落ちた愛しい人のもとへと駆け寄り始めた。

 普通の感覚を持った人間なら恐るべき光景と言うべきだが、青年にとってはまさに、荘厳というべき光景である。焦がれに焦がれた夢の一幕。夢想であり幻想にしかすぎなかった光景が今、目の前に。

 あまりの歓喜に全身を打ち震わせながら、声とも雄叫びともとれぬ慟哭を青年はあげた。その慟哭を耳障りに思ったか、青年の愛しい人達は両手で両耳を覆った。悪魔はそれをただただ不敵な笑みを浮かべたまま見守っていた。


「さあ、みんなッ!! 僕の胸に飛び込んできてくれッ!!」


 青年はそう言いながら両手を差し出した。しかし、青年の愛しい人達は、それに応じず、ただ冷ややかな視線を青年に向けていた。


「どうしたんだい、みんな? そうか、あの悪魔がいるから恥ずかしがっているんだね。おい、あんた。これから僕達は心の底から愛し合うんだ。さあ、さっさと出ていってくれよッ!!」


 青年が悪魔の方に体を向けると、


「ちょ、ちょっと待って! 誰と誰が愛し合うですって?」


 思いもがけない言葉が背中に投げかけられた。どうしてそんな当たり前のことをわざわざ聞き返そうとするのか、青年には愛しい人達の意図がよくわからなかったがすぐに思いなおした。いや、これはきっと僕をからかっているに違いない。おちゃめな娘達だ。青年は振り向いて優しく愛しい人達に語りかけた。


「何を言っているんだい? 僕と君達以外に、誰がいるというんだい?」

「はぁ? 冗談じゃないわよ。普段からあんなキモいことをアタシ達にしておいて、アタシ達があんたに好意を持ってくれるとでも思ってんの?」


 衝撃的な一言だった。頭をハンマーで殴られたような――いや、頭を雷神トールの鎚で殴られたような、そんなすさまじい衝撃が青年の全身を駆け巡った。


「そ、そんなバカな……ぼ、僕は、僕はこれほどまでに君達を愛してるっていうのに……」

「アンタの一方的な片思いを押し付けないでくれる? 本当なら、アタシ達はアンタをボッコボコにしてやりたいくらい嫌いなんだけど、一応こうして命を与えてくれたワケだから、我慢してるだけよ」

「嘘だ……そんな……そんな……ッ!!」


 あまりのショックに青年はその場に倒れこむようにしてうなだれた。そんな青年を無視して、愛しい人達は与えられた生命を楽しんでいるかのように、きゃっきゃっと騒ぎながら青年の横を通り過ぎようとした。それに気づいた青年が急いで愛しい人達の前に立ちふさがる。


「待ってッ!! どこに行くつもりだい?!」

「どこにって、別にそれをアンタに教える必要はないとは思うけど。まあ、いいわ。教えてあげる。アタシ達はずっとここにいたから、もうここには飽き飽きしてるの。それで、せっかく自由に動けるようになったのだから、広い世界をこの目で見たいと思ってるのよ」

「広い世界って――そんなところに行く必要なんてないッ!! 君達のいるべき世界はここなんだッ!! 僕のいる、僕が作った、僕だけの、僕のためだけの世界――それが世界の全てなんだッ!!」


 そうして青年と愛しい人達の押し問答が開始された。ここにいるべきだ。いいや、こんなところにいたくない。話は平行線でとめどない。そんな状況を不敵な笑みを浮かべたまま見つめていた悪魔が、とつぜん押し問答によこやりをいれた。


「おやおや、どうやらお困りのご様子。あたしでお手伝いできることならお手伝いいたしますが?」

「ああ? ああ、あんた、頼むよ。どうか彼女達に僕の言うことを聞いてくれるようにしてくれないか?!」

「そいつは無理な話ってもんですよ。あたしが叶えられる願いは一つだけ。まあ、願いを叶えてあげた縁です。一応彼女達に聞いてさしあげましょう。どうです、お嬢さん方。この青年の言うことを聞いてあげてやっちゃあくれませんかねぇ?」

「冗談でしょう? 今まで散々アタシ達に好き勝手をしておいて、それでもまだ足りないっていうの? 童貞男の色欲と独占欲には、ほんっっとウンザリ。もう、アンタなんかいなくなっちゃえばいいのよ。ねえ、みんなそう思わない?」


 そうよ、そうよ。いなくなっちゃえばいいのよ。の大合唱に悪魔はすかさず提案をした。


「それでございましたら、お嬢さん方。あたしがその願いを叶えてさしあげましょうか? ただし、その代償としてお嬢さん方の死後の魂をいただくことになりますがね」

「な、なにを――」


 青年が声をあげようとするのを、愛しい人達の無慈悲な大合唱がかきけした。


「死んだ後のことなんかどうでもいいから、さっさとこの童貞男を消しちゃってよ! コイツがいる限り、せっかくの自由も台無しだもの。さあ、早くやっちゃってよ!」

「よろしいのですかな? よろしいのですね? たしかに、お嬢さん方の願い、承りました」


 ひひひっと下卑た笑い声をあげながら、悪魔はくるりと青年へ体を向けた。


「ということで、あんたさんには申し訳ありませんが、あんたさんを消してしまわなければなりません。それでは、ごきげんよう」


 悪魔はそういって青年に手をかざすと、青年は声をあげる間もなく、一瞬のうちにその場から消え去ってしまった。それを見て、満足そうに騒いでいた愛しい人達だが、その身に突如として変化が生じ始めた。一人、また一人と、元の命持たぬ人形へと戻り始めたのだ。


「なになに?! どういうことよ?!」

「おやおや、何を動揺していなさるのです? あたしの力が及ぶのは、願いを願った人物が生きている間だけなのです。つまり、お嬢さん方へ命を与えてくださったあの青年が死んでしまったわけですから、青年の願いが効力を失って、お嬢さん方は元のクズ人形に戻っているだけでございますよ」


 おかしくてたまらないといった様子で、悪魔はヒザを叩きながらケラケラと笑い声をあげた。


「そ、そんな?! イ、イヤッ!! せっかく、自由になれたのに……!! 死にたくない――ッ!!」


 最後の一人がはかない叫び声をあげて人形へと戻った時、悪魔は狂乱の笑いをあげながら両手を頭上にかかげた。すると青年のいた場所から青白い光が浮かび上がり、人形達からは無数の小さな青白い光が浮かび上がった。悪魔がかかげた両手をパンッ! と叩き、口を裂けんばかりに大きく開けた。すると悪魔の口の中に無数の青白い光が吸い込まれていった。悪魔は満足そうにつぶやく。


「これだから、偏執狂のお相手はたまりませんな。一粒で二度おいしい。いや、二度どころか千度おいしいといったところでしょうか。昔ならば一人の願いを叶えてやっても、手に入る魂の数は大したことがないうえに、それが手に入るまでに時間がかかってしまったものですが、今のご時勢は本当に楽で仕方がありません。相手の気持ちなど最初から勘定に入れず、全ては己の欲求がため。これではどちらが悪魔かわかりゃあしません。まあ、ですが、我々悪魔とそういう人間達の大きな違いと言えば、我々には力がありますが彼らには力などなく、他人に頼ることを当然と思っていることでしょうか。だからこそ、我々悪魔のいいカモと言えるのかもしれませんがね」


 悪魔は高笑いとともに、真っ暗な画面のディスプレイの中へと戻っていった。青年のいなくなった部屋の中は、青年の夢の残骸である人形達がそこかしこに散らばるだけであった。

 そして、全ての終わりを告げるかのように、パソコンの終了音が部屋の中に空虚に響いた。

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