第4話 序盤からクライマックスを迎えたサキュバスな姉
私は今、弟の布団に包まれています。
「んんんんんあふああああああああああああああ!」
序盤からクライマックス!
あまりの刺激的なシチュに下半身はもう、下半身の域を脱し始め、私の鼻と口から入り込んでくる弟の香りは脳と肺を痺れに痺れさせます。
ヤバい。
これは想定以上にヤバたにえんです。
理性が吹き飛んでしまう。
不幸中の幸いは、これが私の部屋であるということ。
弟が傍にいないこと。
もし弟の部屋だったら、失神していたかもしれません。
もし傍にいたらきっと襲ってしまい、バッドエンド中のバッドエンドを迎えていたことでしょう。
そんな虚構未来はさておき、なぜこのようなことになったのか。
端的に説明すると、私のあまりの病状の苛烈さ(壁を破壊してしまうほど苦しんでいた)にお母さんはとにかく暖かくするべきだと思ったらしく、家族全員の布団を私の上に乗せてきたのです。
まあ、基本的に私も弟もほぼ体調を崩したことがなかったですし、なんなら私の家系全般、体調を崩すことがない健康体揃いなので、お母さんも看病の仕方を心得ていません。
そんな大量の布団の中に、弟のモノもあったというわけです。
お母さんの優しさが生んだ奇跡。
そう、私はたまたまその奇跡による道徳的配慮の結果を享受しているだけなのです。
私は何も悪くありません。
何も悪くないのですから、これから私はより弟の(布団)の中にダイブしようと思います。
ちなみに、さすがに暑いので弟の布団以外はどかしました。
季節は夏手前の五月末。
薄いとはいえ、羽毛布団四枚はムリゲーです。
「さあ、いきますか、ね」
改めて言いますが、私は悪くありません。
さよなら、現実。
もう会うことはないかもしれませんね。
「お姉ちゃん、大丈夫?」
「んぐっふうううううううううう!」
突然、部屋に入って来る弟。
思わず変な声が出ます。
「だ、大丈夫⁉」
「だだだだだ、大丈夫だよ」
私はなんとか笑顔を作り出します。
弟は私の状況などもちろん知らないので、ベッドのへりに腰掛けます。
「そ、それで、どうしたの?」
そんな私の言葉に、やや頬を朱に染めながら弟は言葉を紡ぎます。
「いや、お姉ちゃん、最近どうしたのかなって。あれだけ一生懸命やってた生徒会も部活も辞めちゃうし、体調だって悪くなるしで……。その、心配になってさ」
めっちゃいい弟です。
最近は思春期もあり、前ほど私と話をしてくれなくなった弟ですが、私の変化を感じ取り、心配してくれていたようです。
涙腺だるんだるんなりますわ。
まあ下半身はすでにだるんだるんですが。
「全然大丈夫だよ。ただ、のんびりとした時間を過ごしたいなって思っただけだから」
「そんな老後迎えたみたいに言わないでよ」
言って、弟は笑います。
しばし笑った後、すう、と息を吸い込み立ち上がる弟。
「うん、まあそれだけ。お姉ちゃんが問題ないならいいよ」
「心配してくれてありがとね」
「ううん。家族だしね」
照れくささを誤魔化すように、後頭部を掻きながら、弟は部屋を後にしました。
「家族……か」
私と弟は家族。
そうであるからこそ、弟も思春期と言う高い壁を乗り越えて心配しに来てくれたのです。
彼の想いに、思わず姉的な私も顔を覗かせます。
ただ、サキュバスな私ももちろんがちがちに顔を覗かせています。
「まあ、弟がいい子なことは置いておいて、やることやりますか」
そう決意し、私は布団に潜り込んだのでした。
体中のいろんなところがじゅんじゅわーでした。
サキュバスな姉の弟悶々日記 りつりん @shibarakufutsuka
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