時空超常奇譚4其ノ四. 超短戯話/黒境の時空線

銀河自衛隊《ヒロカワマモル》

時空超常奇譚4其ノ四. 超短戯話/黒境の時空線

■超短戯話/黒境クロの時空線

 夕方、急いでバイト先に帰ろうと東京駅の横須賀線ホームで電車を待っていた男は、天井から幾つもの黒い線が垂れているのに気づいた。それが何なのか、見た事がないので判断が出来ない。黒い線はホームをウロウロと動いている。

 その線の一つが左側から徐に近づき、影のように何事もなく右側へと通り過ぎた。それは黒い線状の物体で透けて見える。表現はし難く、例えるものが浮かばない。

 何なのかなと見ていると、左腕に何かが触れた。それが別の黒い線だと気づいたと同時に、パチッと電気が走りホームの後方へとった。その拍子に、胸ポケット挿していた買ったばかりの赤のフリクションペンが黒い線に引っ掛かった。その時ほんの一瞬だけ目を瞑った。


 目を開けると、ホームではない場所にいた。今し方までホームで電車を待っていた筈なのだが、瞬間移動でもしたようにシチュエーションが変化している。

「確か、ここは乗り換えの階段を下がった中二階のような、東京駅とは思えない不思議なスペース……」

 そこは、たくさんのコインロッカーが整然と置かれた東京駅とは俄には信じられない奇妙さを醸し出していて、朝夕の乗り換え時に常々不思議だなと思う空間だった。コインロッカー群の端に自販機があり、その隣に最近設置された時間貸しオフィスのブースが3つ並んでいる。

「あれ、何故ここにいるのかな……ホームにいた筈……」

 前頭葉のニューロンが思考の海で溺れ、情報処理機能を失って正常な判断が出来ない。一言で表現するなら、全く何だかさっぱりわからない。狐に摘まれるとはこんな感じなのかも知れない。

 3つのブースの時間貸オフィスのガラスドアが開いている。3つとも使えそうだ。時間がないので、資料を纏めてメールで送ろうと、その1つに入った。

 ちょっとした違和感はあった。ブースには鍵はなく、操作パネルらしきものもない。パソコンがあり、ワード機能とメールは使えそうに見える。このまま使ったら無断使用になってしまうのかも知れないと思いつつも、取りあえず資料を纏めてメールでバイト先に送信した。


 これで良しと鞄に資料を詰めて椅子を引いた瞬間に足を椅子に引っ掛け、よろけた拍子に壁に手をつくと、壁がすっぽりと抜けた。

 その向こう側にはどこかのオフィスがあって、着ぐるみを着た上半身裸の抱き合う男と女?がいた。その生物が何なのかは一見しただけではわかり難い。かなり大きなその生物の頭にはウサギのような長い耳があり、顔はゴリラにそっくりだ。人のようでもあり、そうでないようにも見える。着ぐるみなのか、或いは化け物なのかも知れない。

 男と女?は、男と視線が合うと驚いたように隠れた。男には状況が掴めない。

 

 コンコン・と時間貸オフィスのドアを叩く音がした。

「警備の者ですが、まだ終わりませんか?」

 そう言って、サングラスを掛けた警備員の男が顔を出した。「まだ」とはどういう意味だろうか、時間は午後5時前で警備員に急かされる時間ではないと思われるが。

「今終わりました。唯、壁が抜けて……」

「えっ?」

 警備員の男は驚いてブースの中を覗き込み、抜けた壁とその向こう側の部屋を確認すると、男に「向こう側の部屋に誰かいましたか?」と訊いた。

 男が「半裸のゴリラみたいなのがいました」と答えると、「ヤバい、逃げますよ」と言って、唐突に走り出した。

「何故?」という男の質問を吹き飛ばして、警備員の男が振り向きもせずに一心不乱に駆け出して行く。男は仕方なく後に続いたが、当然の如く納得がいかない。

「何故、逃げるんですか?」

 しつこく訊く男に、警備員の男は走りながら面倒臭そうに後方を指差した。後ろを振り向いた男はぎょっとした。そこに、怒気を漲らせて向かって来る巨大な青鬼がいた。優に3メートルはあるだろう逆上した青鬼へと変形した異形の顔が恐ろしい。

「待てコラ、喰ってやる」

 今にも食らいつく猛獣のようだ。警備員の男の「ヤバい」の声がした。既に状況は相当にヤバい。更に何がヤバいのか。

「5時になる」

 5時になると何が起こるのか、男には理解の出来ない事のオンパレードだ。

「何が……何で……どうなって?」

 男の狼狽振りに気づいた警備員の男が走りながら概説した。

「午前9時から午後5時までは金融市場が開いているので鬼達は仕事に忙殺されるのですが、5時を過ぎて市場が終わると同時にストレスの発散場としての「鬼ごっこ」が始まるんですよ」

 その言葉で全ての状況を把握するのは難しい。そもそもここは日本ではないのか。何故鬼が金融市場で働いているのか。何故鬼に喰われる事になるのか。男は恐る恐る重要ポイントとなりそうな「鬼ごっこ」の意味を訊いた。それ以外も聞きたい事は山程あるのだが、取りあえず置いておく。

「「鬼ごっこ」って何ですか?」

「そこら中から鬼に変形した奴等が襲って来ます」

「捕まったら?」

「鬼以外のものは全部喰われます」

「誰に?」

「鬼に」

 随分と事もなげに言うものだが、相手が鬼なのだから当然の答えだ。それでも何故鬼に喰われなければならないのかは永遠の謎。そして、警備員の男が長耳ゴリラか鬼かそうでないのかもまた謎だ。

 咄嗟に警備員の男が「右」と叫んで角を曲がった。男は考える事もなく条件反射で後を付いていった。前方に小さな川があり橋が架かっている。その橋の中央に大きな門とシャッターがあり、閉まり掛けている。その大門が何かはわからないが、世界を分離しているように見える。

「あの門を抜けられないと死にますよ」と言う警備員の男の言葉も、引き続き当然の如く何を言っているのか理解は出来ない。尤も、既にこの状況に理解出来る事など皆無で、男の前頭葉は遠く遥か彼方を旅したままのグレートジャーニーだ。

 

 シャッターの降り切る間際で大門を超えた。その直前までたくさんの人々が橋を渡り大門を超えて来ていた。川の向こう側では青鬼や赤鬼が奇声を発して騒ぎ、祭りの様相を呈している。人々は、命辛がらという感じではなく、警報音の鳴り始めた踏切を渡るように慣れた様子で歩いている。男と警備員を追っていた青鬼は橋の向こう側で止まり、何やら悪罵を吐いている。鬼は橋を渡れないようだ。


 大門を過ぎて一安心と一息吐いた男は、「もう大丈夫ですよ」と言う警備員の男に、質問したい激しい衝動に駆られた。だが、何から訊いたら良いのか、頭に何も浮かばない。

「もしかして、アナタはニンゲンノ世界の人?」

 男は頷きながら、やっとの思いで「ここはどこですか?」と訊いた。

「ここは「コッチノ世界」で、川の向こうは「アッチノ世界」、アナタのいた世界は多分「ニンゲンノ世界」ですね」

 一応の説明を聞いて、尚も全くわからない。

「何故鬼に喰われる?」

「奴等が長耳族の鬼だから」

「午前9時から午後5時まで忙しい筈の鬼が、5時前に追いかけて来たのは何故?」

「さぁ、何でしょう。壁を壊したからかな、それとも何か見ましたか?」

 思い返したが、3メートルはあると思われる二匹のウサギ耳のゴリラが半裸だった以外に特別なものを見た記憶はない。

「奴等はそういう場を他人、いや他鬼に見られるのを極端に嫌いますから、きっとそのせいですね」

 二人がそんな会話を交わすと、どこからか学校のチャイムのような音がした。時刻が5時になった事を知らせているらしい。

たまに、ニンゲンノ世界からアッチノ世界に迷い込んで鬼達に喰われちゃう間抜けなニンゲンや暴れて街を壊すニンゲンとか、逆にアッチノ世界からニンゲンノ世界に迷い込んで『ガッコウ』という場所で袋叩きにされた鬼がいたらしいって聞いた事はありますけど、まさかこんな近くにその類がいるなんてね」

 警備の男が口端を上げた。嘲っているのがミエミエだ。

「ニンゲンノ世界には鬼はいないんですか?」

「いません」

「それにしては、あんまり驚かないんですね?ワタシなんか初めて見た時は失禁しましたよ」

 決して驚いていない訳ではない。男の意識は現実に追いつこうと必死で走り続けているのだが、余りに妙竹林みょうちくりんな現実に追いついけないでいる。未だに自分がどこにいるのかさえわからない。

「警備員さんは、何故鬼が出るような世界にいるんですか?」

「警備のバイトですよ。本当はあんな鬼のいるアッチノ世界なんかには行きたくないんですけどね。コッチノ世界は不況だから仕方がないんです。アッチノ世界はバブルだから人手不足のアウトソーシング、ワタシ達にとっては出稼ぎです。結構たくさんの人がコッチからアッチに行っているんですよ」

 出稼ぎに行って喰われるかも知れない命懸けのバイト、それがコッチとアッチの世界観なのだろう。

「で、コッチノ世界にワタシが住んでいて、アッチノ世界には長耳鬼が住んでいる」

「なる程」

 男は、何となく自分が今いる世界がざっくりと掴めた。


 橋から続く道を暫く歩くと、前方に駅の改札が見えた。左側には線路と踏み切りがある。男は「あっ」と声を上げた。線路を舐めるように数十本のあの黒い線が行き交っている。

 警備員の男は、黒い線を見ながら驚くでもなく男に言った。

「えっと、ニンゲンノ世界の時空線はどこかな……あれ、ないな」

「ない?」

「大丈夫ですよ。時空線はグルグル回っていますから、待っていれば来ますよ」

「あの黒い線は何なのですか?」

「あれは黒境クロと言って、それぞれの次元世界の入り口です」

「どうやって見分けたらいいのです?」

 幾つもの黒い線はどれも同じで特徴はなく、見分ける方法など知る由もない。

「大丈夫、その内に黒境クロの方から寄ってきますから」

 男は、既に疑問を持つ事を放棄し達観している。不思議な事を疑問に思ったところで解消されないのはわかっている。自分が今この理解の遥か外にある状況に対応出来るのは、言われたままに、そのままに行動する事だけなのだ。

「じゃ、ワタシは家に帰りますので、ここで失礼しますね」

 達観していた筈の男は、一抹の不安に堪えられずに訊いた。

「あの、私はこれからどうしたらいいですかね?」

「ご自由に。そうだ、この拾い物を差し上げます。特別にワタシの分も。では」

 そう言って警備員の男は去っていった。残された男は、訝し気に手渡されたソース味とカレー味の2本のうまい棒をじっと見つめたまま、その意味を考えた。

「何故、うまい棒なんだろう?」

 考えても答えが出ないものは出ない。仕方なく、うまい棒でも食べようかと思っていると、左腕に何かが触れた。それが別の黒い線だと気づいたと同時に、パチッと電気が走り線路の後方へとった。同じ事があった気がするが、そんな些事を気にしている場合ではない。

 一瞬だけ目を瞑って、目を開けるとそこに子供がいた。

 5年生の田口タカシの学校では、毎年の夏休みの宿題に流行りがある。2年前に、公園で拾ったセミの幼虫が孵化する観察日記を幼馴染の澤波サキが出して金賞を取ると、翌年にはそれが宿題の流行りとなってかなりの数のセミの観察日記とセミの標本が宿題として出されて学校中がセミだらけになった。夏休みの宿題は最終的に金賞、銀賞、銅賞が選ばれる事になっている。

 去年、氷で冷やした電気抵抗の実験で三年連続の金賞を取ったサキに、強い対抗心を燃やすタカシは、今年こそはと意気込んでいる。

「サキ、今年は何を出すんだよ?」

「ナイショだよ。でも今年もワタシが金賞だな」

 余裕綽々のサキに、タカシが得意げな顔で言った。

「残念だね、サキ君。今年このボクが金賞をもらう事はもう決まっているのだよ」

「へぇ、何を出すんだよ?」

 サキの質問に、タカシが妙な事を言い出した。

「『バニーゴリラ』を捕まえるんだよ」

「何だよ、それ?」

「叔父さんが子供の頃に捕まえた異次元生物なんだ」

「異次元生物、そんなの本当にいるのか?」

「まあ、見てろって」

 翌日、タカシが奇妙なものを学校に持って来た。

 金網式ネズミ捕りに、エサなのだと言うカステラが申し訳程度に付いている。このエサで『バニーゴリラ』なる生物を捕獲する。具体的には、中央に設置されたリングに頭が掛かるのだと言う。どこからこんな奇想天外な発想が出て来たのか。捕獲器にクラスメイト達の質問が止まらない。

「『バニーゴリラ』って何だ?」

「異次元の生物だよ」

「どこから来るんだ?」

「だから、異次元から来るんだって言ってるじゃん」

「見た事あるのかよ?」

「叔父さんが子供の頃に捕まえたんだよ」

「何でこんなの学校に持って来たんだ?」

「『バニーゴリラ』は異次元から学校に現れるんだ」


 クラスメイトの質問攻めに疲れたタカシは、サキと一緒に叔父さんに直接真偽を確かめに行ったのだが、タカシの期待通りの言葉は返って来なかった。

「叔父さんが子供の頃捕まえた『バニーゴリラ』をボクも捕まえる事にしたんだ」

「何だい、それ?」

「『バニーゴリラ』だよ」

「あぁ『バニーゴリラ』かぁ。子供の頃、漫画雑誌に「異次元の生物を捕まえよう」っていう特集があって、捕獲器をつくった事があったな」

 サキが興味本位で訊いた。

「『バニーゴリラ』ってどんな生物なんですか?」

「確か、耳が長くて顔がゴリラで、怒ると鬼になるんだったかな……」

 サキの質問が続く。

「『バニーゴリラ』は捕まえたんですか?」

 サキが真剣な目で訊いたが、答えは予想通りと言うのか、残念と言うのか、そんな答えが即座に返って来た。

「まさか、そんなもの捕まえられる訳ないよ。でも、その時エサに使ったうまい棒のソース味とカレー味の2本が黒い線みたいなのに引っ掛かって消えたんだよ。あれは不思議だったな。それと『バニーゴリラ』がどこかの学校に現れてボコボコにしたなんて噂があったけど、本当かどうかはわからないね」

 思惑が外れ、早々に帰る事になった。当然なのだが、大人の戯言が子供に通用する事はない。そして、そこに子供にとっての大いなる夢と誤解が生まれるのだ。サキが嘲笑気味に言った。

「あんなの妄想じゃん。大体さ、そんな生物がいたら今頃動物園にいるだろ?」

 サキの正論のツッコミにも、タカシは「『バニーゴリラ』はボク達とは違う異次元からやって来るんだ」と譲らなかった。

 話の組み立てがつたなく、顕かにテレビの見過ぎだ。


 ある日の朝、学校に一番で登校したタカシは捕獲器を見ながら、口をへの字にして「『バニーゴリラ』出て来ないな」と呟いた。

 その背後に、教室の天井から垂れ下がる黒い線がタカシに近づいた。

 二番で登校したサキが「おはよう」と教室に入った。タカシが振り向いて「おう」と返したそのタイミングで、黒い線がタカシに触れた。

 途端にパチッと電気が走り、後方へとったその瞬間にタカシの姿が消えた。


 タカシが目を開けると、そこに複数の巨大な生物の顔があった。タカシはリングに頭が引っ掛かっていて身動きがとれない。タカシの周りは金属製の網で囲われていて、頭上にはカステラの匂いのする塊が付いていた。

 巨大な生物にはウサギのように長い耳があり、ゴリラにそっくりの顔でタカシを見ている。それが『バニーゴリラ』である事は間違いない。


 巨大な生物達は「時空間ネズミ捕りに何か掛かってるぞ」と言いながらタカシの顔を覗き込んだ。タカシの全身を得も言われぬ恐怖が包み込む。

「何だコレは?」

「ニンゲンとかいう生物じゃないか?」

「なる程。それなら早いとこ潰してしまおうぜ」

「そうだな。ニンゲンはヤバいから、暴れ出す前に潰してしまうに限る」

 タカシは鎖を解かれたが、恐怖が去った訳ではない。金網の中から出られない状況に変わりはない。

 怖い、帰りたい。タカシの目から大粒の涙が落ちた。

 

 次の瞬間、タカシの前にいきなり男が現れた。男は若いサラリーマン風で強そうではないが、少なくとも子供のタカシよりこの状況を解決出来る可能性を秘めているように見える。

 男は、見るからに小学生であるタカシに訊いた。

「ここで何をしてるの?」

 泣きじゃくるタカシは状況を正確に伝える事は出来ないながらも、わからない状況を伝えた。

「こ、こ、ここがどこだかわからない。ど、ど、どうしたらいいのかもわからない」

 震える小学生を励ましてこの難局から救い出す、それが大人の役目だ。が、男にはそんな大役を果たせる自信がない。何と言っても、ここがどこで、何がどうなっているのかは、全く、さっぱりわからない。本音を言うと、泣きたいのは男の方なのだ。


「大丈夫。こういう時はさ、まず落ち着いて考えることが大事なんだよ」

 タカシは男の空元気に頷いた。と言うよりも、頷く以外にない。

「そうだ。これをあげるよ」

 男は、警備員の男から貰ったうまい棒のソース味とカレー味の2本の内の1本を、タカシに渡した。こんな時は何でいいから食べるに限る。

 男は金網の鍵を外し、二人はうまい棒を齧りながら脱兎の如く逃げた。唯々只管、走った。

 後ろから、鬼に顔を変えた『バニーゴリラ』が叫び声を上げて追い駆けて来るのが見えた。男はまた鬼かと呟いた。男はこの奇妙な世界に迷い込んでから、走り続けている。いい加減走るのには辟易しているが、走れば駅と線路或いはホームが現れて、そこに黒い線がやって来る。そう考えればきっと現実になるような気がした。


 男とタカシの二人は、真っ直ぐに続く一本道を唯只管に走った。男は再び「あっ」と声を上げた。前方に線路が見えた。後ろからは、未だ鬼が追って来ている。


 線路に沿って幾つもの黒い線がウロウロと移動している。

 その中に、男の探す黒い線があった。あれこそニンゲンノ世界への入り口に違いないと男は確信した。何故なら、赤いフリクションペンが引っ掛っている。

「あの赤いペンが引っ掛った黒い線を捕まえるんだ。そうすれば、元の世界に戻れる筈だから」

 その言葉に絶対の根拠はないが、流れからすればそうなるに違いないだろう。男の言葉にタカシは頷いた。二人は必死の思いで走り、赤いフリクションペンの引っ掛った黒い線に飛びついた。

 新学期を迎え、タカシのクラスに新任の教師が赴任した。教師は白いチョークで黒板に名前を書いて挨拶した。

「高梨一郎です、宜しく。何か質問はあるかな?」

 タカシが手を上げた。

「先生、鬼に追い掛けられたらどうしたらいいですか?」

 タカシの不思議な質問に訝しがるクラスの生徒を他所に、教師はにやりと笑いながら確信を持って言った。

「うまい棒を齧って逃げよう」


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