花束を送ります

ミンイチ

本編

第1話

 僕はただひたすらに逃げ続けている。


 僕を追いかけているものはよく見えない。


 しかしそこにいるということは分かるし、それに捕まると酷いことになると直感で感じている。


 最初には僕を含めて25人がいたが、はぐれたり捕まったりして、今は1人で逃げている。


 逃げているこの場所は常に曇った空をしており、行き止まりはないが出口もないように感じる。


 そして、体が疲れにくく飲食、睡眠も不要のようだ。


 あくまで体が“疲れにくい”だけであり、疲れないわけではない。


 体感ではおおよそ2日間、その間ずっと逃げ続けてやっと追い手を撒けたようだ。


 疲れた体を休ませるために座り、しかしいつでも逃げられるように構えておく。


 いつの間にか空は晴れ、赤く染まっていた。


 僕は夕焼けで赤く染まっているのかと思ったが、空は時間が経つにつれどんどん赤くなっていき、周囲も赤く染まった。


 赤くなるのが止まり、少し時間がたった頃、いきなり追っ手が現れた。


 すぐに走り出してそれらから逃げ始めた。


 逃げ始めでは後ろからだけ、そして1体だけだったのが時間が経つにつれどんどん多くなり、前や左右にも出てくるようになった。


 それでも僕はおそらく5日間走り続け、それらから逃げ続けた。


 しかし、終わりはいきなり現れた。


 あまりにも長い間を逃げ続けたので注意力が落ち、曲がり角の先にそれがいたのに気が付かなかったのだ。


 それ捕まった瞬間、体にいくつもの手が巻きついたような感じがして気を失った。



 気がつくと、僕は花に囲まれていた。


 色と種類が全て違う花が23あった。


 いきなり僕は誰かに持ち上げられる感覚がした。


 顔を動かせないが、僕はどこかに運ばれているようだ。


 運ばれた先は鏡だった。


 そこには、24の花でできた花束があった。


 そして、その花束には「逃げ切りおめでとう」の文字が書かれたカードが貼ってある。


 そして、この花束を持っていいたのは、逃げ始める時にいた25人の1人だ。


 僕は必死に声を出そうと、体を動かそうとしたが、声が出ることも体が動くこともない。


〜〜〜〜〜〜〜


 私はなんとかあの悪夢から逃げ切った。


 最後の最後に捕まってしまうと思ったが、いきなり周りのあれらが消えていなくなった。


 周りを見回してみると、ここはどこかの控え室のようなところだった。


 真ん中にある机の上には24の花でできた花束があった。


 そして、「逃げ切りおめでとう」と書かれたカードが貼ってある。


 しかし、その花ひとつひとつに奇妙な違和感を感じるのはなぜだろう。


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