第1章 第7話
気がつくと、ぼくは別館に続く渡り廊下をあるいていた。その先には、ちいさな共有スペースと図書館がある。大きなガラス張りの窓越しに外を見ると、木に囲まれたグラウンドと青く澄んだ空が広がっていた。野球部の白い人影が、ボールを追いかけて走っているのが遠くに見えた。ぼくは、歩を緩めながら、ぬるくなったコーラを飲み干した。からになったペットボトルを小脇に抱え、ぼくは別館の扉を押した。
休日だというのになぜか鍵は開いていた。中は思いの外涼しく、からだの熱がすうっと引いていくのを感じた。左手の図書館は無人のようで暗く、本が静かに佇んでいた。ぼくは、静寂に身を委ね、静かに、共有スペースのゴミ箱に近づいた。
「ガコン。」
ぼくの意思に反し、空のペットボトルは大きな音を立てて、ゴミ箱に転がり込んだ。サッと目の端でなにかが動く。ぼくは顔をすこししかめて、その方向に目を向けた。
共有スペース右奥、窓際のベンチ席。陽がさしていて、少し影になっている。青い空を背にして、人影がぼんやりと浮かび上がる。その暗さに少しずつ目がなれていく。
そこでは君が本を片手に、静かにこちらを見ていた。
蝉の
第一章完
夏、風をまち、秋、空をはむ。 しののめ @shinonome0224
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