Specters《スペクターズ》
橋元 宏平
Specters《スペクターズ》
【
アメリカ軍に
かつては、五〇名いた部隊は、今や
四八名は戦死、病死、
「『
やがて「
少尉と曹長は、
少尉は、生まれつき
戦場を駆ける姿は、
一方、曹長は生まれつき、体が弱かった。
その分、誰よりも
副隊長の曹長が、
少尉も、曹長の狙撃の腕には、絶対的な信頼を寄せている。
これだけなら、自軍の兵達はふたりに
だが、ふたりとも性格に
少尉は、
ひとたび戦場へ出れば、
精鋭部隊隊員数名も、
少尉が
その上、
高らかに笑いながら、返り血を浴びて
軍人としては最強だが、人として守るべき
曹長は、
居場所がバレたらマズい狙撃手でありながら、
血と泥に
また強すぎるがゆえに、
だが、
【補給拠点占領作戦】
今回の「
目的の拠点は、敵軍の
ここを
敵軍にとっては、大事な拠点。
なんとしても、この拠点を
敵軍は
相手も本気ということで、「
「隊長、今回の作戦は?」
「突っ込む」
「OK☆」
作戦なんてものは、ないも
このやり取りは、任務開始の
どう動くべきかは、その時になってみなければ、分からない。
無線は
先日
左手首に
作戦開始時刻になると、ふたりは拠点へ向かって駆け出した。
ふたりは、事前に決めた
曹長は、大量の
曹長は遠距離狙撃は得意だが、近接射撃となると
「
ただし、
「MP-443
しかし、
少尉は状況に応じて、この二
「おっ、いいもん見ぃ~っけ。も~らいっと」
さらに、今、撃ち抜いた敵兵が持っていた
「
上下左右の
ただし、
「
曹長はリズミカルにM27 IARを連射しながら、それに合わせて歌なんて
「M27 IAR(
ただし、かなり重いので、
「
装備は充分に
弾切れしたり、銃が壊れたら、
撃ち抜かれた敵兵は、もう二度と、銃を握ることはない。
戦場では、使えるものはなんでも使う。
曹長も、敵兵の
曹長は
少尉が拾った
「あ、もう弾切れた。弾くれ」
前を走る少尉に、曹長がバトンリレーの要領で
「はいは~いっ、弾で~す♪」
「サンキュ。いやぁ、この銃、いいなぁ。
素早く
左手で
さぁ、ここからが本番だ。
目的の狙撃ポイントが、見えてきたところで、
「隊長、ここで分かれましょう!」
「おう。じゃあ、またあとでな。行ってきま~す!」
「は~いっ、行ってらっしゃ~いっ♪」
曹長は、少尉と別れると、コンクリート製の壁に張り付き、聞き耳を立てる。
曹長は耳と
上から、
他にも、数名の気配、銃を構える音、話し声などが聞こえた。
どうやら、敵軍の狙撃手も、ここを狙撃ポイントとして、立てこもっているようだ。
ならば、奪うのみ。
曹長は、音を立てずに手にした
「M16」は、
「
威力の高さと射程、
他のARでは対応しにくい、遠距離での
だが、精密射撃には、高い
「ズキューン!」でお
上記の説明で分かる通り、狙撃銃としては最適な銃ではない。
暗殺者本人も、作中で認めている。
暗殺が目的なら、もっと遠距離狙撃に
では何故、暗殺者はM16を使用しているのか。
連載開始前、作者は知人のイラストレーターに問い掛けた。
「殺し屋に持たせる銃は、何が良いか?」と。
モデルガンメーカーの社員を
作者がうっかり「狙撃に使うこと」を伝えなかったことが、最大の
曹長は苦手な近接戦闘で、数発
「はいっ、お休みなさ~いっ☆ そこで、おねんねしててちょうだいね~♪」
永遠の眠りに
こうしておけば、死体が
狙撃ポイントを無事
「お? このスナ(
落ちていた
「
本体だけで七kgの重さがあるが、非常に高い
しかし、
「
大型軍用拳銃としては画期的な、
強力な弾丸を安全に発射出来る、
曹長は、ようやく身を落ち着けて、少尉に無線機で話し掛ける。
「隊長~、ポイント確保しました~♪」
『よし、良くやった。さっそくだけど、
「OK☆」
こうして、少尉が特攻を仕掛け、曹長が狙撃で援護する、いつもの
戦況が有利になってきた頃、「航空支援部隊」から無線が入った。
「
「
曹長は
今日は雲が厚く、
雲の
偵察機は、状況を
放置しておくと、
曹長は、
「
曹長の「
航空機発見から撃ち墜とすまでの速度も、
「
なお、「
しかし、これが罠であることに、曹長はこの時、気付くことはなかった。
偵察機が飛行すれば、曹長が撃墜する。
ミサイル程の大きなものが発射されれば、自分の居場所を教えたも同然。
「ここだっ!」
曹長がいる建物は、一斉に敵兵に取り囲まれた。
複数の
「マズいっ!」
曹長は、
急いで荷物をまとめると、
幸い、ここは二階。
飛び降りても、軽傷で済む。
しかし、窓の下も、曹長が降りてくるのを、敵兵達が待ち構えていた。
「マジかよっ?」
『どうした?』
少尉の問い掛けに、曹長は焦りをにじませた、早口で答える。
「場所がバレて、囲まれましたっ!」
『マジかっ? 大丈夫かよ?』
「大丈夫じゃないですよ! 大ピンチですよっ! でも、なんとかするしかないありませんよねっ!」
とりあえず、降りる場所を確保すべく、下へ向かって「M27 IAR」を乱射した。
「おぉりゃぁぁああああぁぁっ!」
建物を取り囲んでいた敵兵達が、次々と倒れていく。
これで飛び降りても、倒れた敵兵がクッションになってくれる。
飛び降りようとした時、ドアが破られて、敵兵が9-
「9-
激しい光と爆音を放ち、相手に一時的に
しかし、
「ちっくしょぉっ!」
9-
下に倒れていた敵兵のおかげで、落下のダメージはなかったのの、視力が回復するまでは、どうにもならない。
手に馴染んだ感覚から察するに、
視界が回復するまで、なんとか乗り切らなくてはならない。
戦場において、敵兵からの攻撃を察する為、目と耳は非常に重要である。
視覚と聴覚を失っていては、銃弾を避けることも出来ない。
わずか数秒間とはいえ、曹長は敵兵から
しばらくして、ようやく、ぼんやりと視力が回復してきた。
その時、何かが転がってきて、曹長の足に当たった。
すぐに、
「
爆発で発生した衝撃波や破片により、
対処法は、三つある。
①爆発する前に、遠くへ投げる。
②処理用の穴へ、放り込む。
③仲間への被害を
現時点で、②と③は選べない。
となれば、選べる方法はひとつしかない。
「ボールを相手のゴールへ、シュゥゥゥーッ!」
曹長は、迷わず
だが、判断が遅かった。
蹴ってすぐに、
曹長は、爆発に巻き込まれて、大きく吹っ飛ばされた。
「ぐがぁ……っいってぇ……っ!」
敵兵の的となり、数えきれないほど被弾している上に、
のたうち回りたくなるほどの激痛が、全身を襲う。
本能的に「死ぬ」と、悟った。
兵士になると決めた時から、いつの日かと恐れていた。
自分も、戦場で
それが、今なのかと。
死ぬことよりも、残していく人々を、友を悲しませることを恐れていた。
どうにか力を絞って、無線機に向かって、少尉に別れの言葉を告げる。
「……隊長……俺、死にます……みんなに……『すみません』と、伝えといて下さぃ……」
『バカ野郎、勝手に死ぬんじゃねぇっ!』
『曹長!』
少尉と各支援部隊は、それぞれ悲痛な叫びを上げた。
そこからの少尉と支援部隊の活躍は、
少尉は、自分の身を
弾が
「ひひひひひ……ふふふふ……あーっはっはっはっはっはっはっ!」
高笑いしながら、命を
「陸上支援部隊」も、少尉の後に続いて特攻し、銃を乱射しまくった。
「航空支援部隊」は、
「
「UH-1」に装備された「
こうして、少尉と支援部隊の活躍によって、
作戦終了後、重体で意識不明の曹長と少尉は、支援部隊に回収された。
手術を終えた軍医は「ふたりとも、多量の銃弾を撃ち込まれていて、銃弾を取り出すだけで、ひと苦労だった」と、語った。
少尉は、両手で
特に
生きていたのが、奇跡に近かった。
二日後、少尉が意識を取り戻した。
少尉は、目覚めるなり「アイツはっ?」と、飛び起きた。
軍医が「横で寝てますよ」と伝えると、痛みを思い出してベッドに倒れた。
「……今回ばっかしは、マジで、ダメかと思った……」
「俺ひとりじゃ、戦場を駆け回れねぇんだから、早く目ぇ覚ませよ」
一週間後、曹長が意識を取り戻した。
横のベッドで
「起きたかっ!」
「ぃ……?」
「無理して、
少尉が急いで軍医を呼ぶと、すぐに軍医は曹長の容態を調べ始めた。
診察が終わると、軍医は少尉に伝える。
「意識が戻ったので、もう安心です。あとは安静にして、回復を待つだけですよ」
「良かった……マジで死んだんじゃねぇかって、心配したんだからな」
少尉が笑い掛けると、曹長は口の端を上げて静かに笑った。
いつもの
【
「
我が軍は、
「
しかし、それが大きな間違いであったと、
「ついに、
それだけでは
どうやら、
のちに「
【
「拠点占領作戦」から、数日後。
敵軍の方から、「一時的休戦」を願い出てきた。
「休戦協定」は、「お互いに、しばらく戦争をお休みする約束しましょう」ってこと。
「一時休戦」であって、「
悲しいけど、これ戦争なのよね。
戦争は、一番上の人間の判断ひとつで決まる。
首脳陣が「戦争なんて、もうや~めたっ」と言ってくれれば、今すぐにでも終わる。
しかし、戦争を止める訳にはいかない「大人の
単純に
戦争が終わると、大勢の
職業軍人達は、戦う以外に能がない
それに戦争は、
実は、携帯電話・パソコン・インターネット・GPS(
皮肉なことに、戦争の
だから、戦争は終わらない。
戦争を止めた国が、あったとしたら。
自分達の弱さを認めて、強い国に
代わりに、
それも、戦術のひとつだ。
今回の「拠点占領作戦」は、いわば「
「兵糧攻め」は、歴史的にも古く、
敵は「
ところが、こっちが
敵軍も、補給拠点と大勢の兵を奪われたのは、相当な
だが、こちらも
そもそも敵軍は、曹長を狙ったのが大きな間違いだった。
少尉を狙っても、同じ結果だったが。
どちらかが倒れても、「
「
ガチファンをブチギレさせたら、超怖いぞ。
実は、「
「
我が軍最強の
近距離戦闘の戦闘狂、少尉。
遠距離狙撃の専門家、曹長。
最強
噂によると、「死神と地獄の番犬」とかなんとか呼ばれて、敵さんに恐れられてんだと。
ずいぶん
確かに、
ふたり揃って、頭のネジがぶっ飛んだバカな上に、天然ときている。
要ツッコミ。
敵さんに、教えてやりてぇわ。
「てめぇらが恐れてる『
Specters《スペクターズ》 橋元 宏平 @Kouhei-K
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