穴の10 ぷはぁ2
「ぷはぁ……ぷはぁ……」
虹彩を放つ薄緑のハロゲンランプが夜のプールを照らす。
人がまばらな残業和了のこの時間にふらりと立ち寄って泳ぐのが僕のささやかな息抜きの時間だ。
「ぷはぁ……ぷはぁ……」
人目をはばかることなく、本気で手足を伸ばしてクロールする。
着水時の手のフォームが重要だ!
おっと。いつになく饒舌だ!いかんいかん。
ささやかながらタイムが向上したことに気をよくした僕は、いつもなら帰ってビールを飲む時間だというのにしつこくフォームの確認を行っていた。
ふと外の闇に怯んで鏡のようになった窓に目をとめた。
スパッツタイプの競泳水着姿の僕の胸には青い穴が空いている。
何かが頭の片隅に引っ掛かった気がしたが、はて…?
僕はステンレスの梯子から再びプールに降り立った。ストンと。
50メータープールのちょうど真ん中、天井に張られた目印を通過した時だった。
頭の中で警報が鳴り響いた。
ビープ…ビープ…ビープ…BEER
BEER…BEER…BEER…BEER…BEER!!!!!
「最終警告が通達されました」
「最終警告が通達されました」
「速やかに警告に従って下さい」
「速やかに警告に従って下さい」
ハロゲンランプは真っ赤に変わり、明滅しながら緊張感を加速させる。
「なに…!? 何なの…!?」
無意味に天井を見上げて、視線をあちこちに移したが、原因など見つからない。
他の利用客達はこちらを向いて目を閉じ直立不動で合掌している。
「ぎゅおんおんおんおんおん…!!」
気が付いたときには遅かった。
胸の穴はプールの水を半分ほど飲み込むと苦しそう小さな声で「
blue blue blue 深川我無 @mumusha
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