駆込み訴え

イエス像、ユダ像・・・・聖書理解。当時の研究がその程度であったのか、いまの、私の乏しい知識からみても、正直、あまりに独創的に過ぎる。
あくまでも聖書、新訳のを材にとった創作であり、不正確さに目をつぶるとして。
太宰治の独白、それにつきる。ユダの皮を被っての。イエスは、志賀直哉だとか川端康成といったところか。井伏鱒二もあるかもしれぬ。
で、その根幹にあるのは、両親であろうし。
結局、太宰治はなにを書いても、根幹にあるのは同じということ。

民衆から強大な支持を得て、日々輝きを増していくイエス。
すべてを投げ捨て、弟子として付き従っていた男。

憧れ、尊敬、崇拝、違和感、疑念、嫉妬、軽蔑、怒り――

偉大な言動をするイエス背後で、現実的な対策に奔走していた弟子。
歳も境遇も似たような立場だったはずなのに、なぜこんなにも不平等なのだろうと思い悩む彼の姿が、これでもかと書き殴られています。
イエスへの敬愛と嫉妬に揺れ動く彼を『器の小さい人間だ』と憐れみ、「生まれてこなければ良かったかもしれない人間」とすら言われる悲しみと怒り。

遠い他人の弱さは寛容する一方で、身近な人間の後ろ暗い感情に厳しく接するのは、弟子だったからこそかもしれま…続きを読む