第6話 盗賊ギルド

元の部屋に戻るとゲラルドからさまざまな説明を受ける。


「まず、このギルドは盗賊ギルドを名乗っているが、他とは中身がまるで違う。そりゃ殺しだって盗みだってするがな。そんで、ここらのスラム一帯を占めてる徒党は組織として俺らの下に当たる。」

僕には驚きの連続だった。

ゲラルドがいうには、この盗賊ギルドはこの地域のスラム全てを管理しているのだとか。スラムには街では生きられない人が落ちてくる。その人たちが集まって新たな街であるスラムを形成するが、力のない人たちではうまくいかないことが多い。その結果、多くの人間が死ぬ。団長とゲラルドも元はそのようなスラムの一員だったようだ。その現状を変えるために2人は力を持ちスラムをまとめ上げた。スラムに並ぶ商品たちもこの盗賊ギルドの手配によるものだ。街となったスラムは貴族に税を納めなければならない。これもこのギルドが賄っている。つまり、このギルドはスラムに住む弱者たちのヒーローなのだ。

「ゲラルドはすごいな。立ち上げた組織がこんなにも大きくなって多くの人に感謝されるなんて。」

「いや、この組織が大きくなったのは全部団長のおかげだ。腕っぷしには自信があったしなぜか魔法が使えたが俺はそれだけだ。この組織の脳は団長1人なんだ。俺がいなくてもこの組織はここまで来れてると思うぜ。」

(団長、強さだけじゃなく賢さもあるのか。)

「そういえば団長の名前ってなんなんだ?」

「名前、か。団長は名前を捨てたんだ。」

「捨てた…?」

「あぁ、組織の長になるって決めた時に、生まれ変わらなければいけないと感じたらしくてな。変な奴なんだ、あいつは。団長の名前を知るのは今はもう俺だけだ。」

ゲラルドの笑みには少し悲しさが見えた。


「次はお前がする仕事についてだ。」

僕の仕事は大きく分けて2つだった。一つは訓練。僕は鍛えたら強くなるらしい。この組織の武力として期待されているのだ。これは僕にとっても好都合だ。もう一つはスラムの治安維持だ。スラムには関所がない。誰でも入れるし出ていけるのだ。そのため、盗人や悪人も入ってきやすい。ゲラルドが僕を見つけたのも治安維持中だったようだ。まぁゲラルドは面白そうなガキがいるから少し見逃したらしいが。それでいいのだろうか。


「どうだ?理解できたか?この話を聞いたあとでなら忠誠を誓えるか?」

ゲラルドは軽い感じで聞く。

「忠誠を誓うまではいかないけど、やってることの理解と共感はできるし積極的に協力するよ。」

「よし!今はその程度でいいか!」

僕はふと思った。

「ゲラルド、この話は団長のところに行くまでにするべきなんじゃないの?そうすれば俺もうまくできたかもしれないのに。」

「まぁそうだなー。でも団長があそこであんな質問するのは初めてなんだ。団長はお前に何か感じたんだろうな。頭もいいが直感も働くからな団長は。」

ゲラルドは笑って言う。

「それに、この話聞いてもお前は忠誠を誓えないんだろ?あの場で誓えないって言えるなら、これを聞いたことで変わることもないだろ。」

「まぁそうだな。」

(なんであそこで誓うって言えなかったんだろう。地球じゃうまくやるための嘘なんていつもついてきたのに。)

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異世界を生きる僕 ぱるめざん @yoshi___1202

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