現代日本に息づく因習と生贄の文化

 辺境の孤島にひとり長期出張を命じられた、とある冴えないサラリーマンのお話。

 古い社会の悪しき風習を描いた現代ものの掌編です。

 冒頭、突然の長期出張を言い渡される主人公。
 何もない田舎の島、そこに何か大きな仕事があるわけではなく、でも会社の都合上誰かひとりはいてくれないと困る、という理由での島流し。

 この時点でもう因習&生贄してて笑いました。
 抵抗せずスッと受け入れてしまう主人公も。
 元々の性格もあるにせよ、やっぱりその文化に染まって生きてきたんだものね……。

 個人的に、因習と呼ばれるものに対しては、「一見不合理なようでもそれでコミュニティが成り立っているのだから……」と思うところもあるのですけれど。
 しかし「ただ不合理なだけで何も利益がない」となれば話は別。
 まして、その犠牲となる立場からすれば、せめて何かの役に立たなければ浮かばれません。

 なので終盤以降、因習に抗おうとする主人公の姿は非常に胸がすきました。
 本当に派手に暴れてくれるんだもの……いままで大人しかった人が急にキレるの大好き。

 結びの展開、というか、最終話で語られるその後の顛末も好きです。
 主人公の暴れっぷりが(なんなら豹変ぶりも)楽しいお話でした。