最強の怪人爆誕! その名も——

空夜風あきら

まさかの最強怪人爆誕!(爆)



 とある悪の組織にて。


 キメラ改造技術と呼ばれる、人間に他の生物の因子ファクターを混ぜ合わせて改造人間を作り出す技術を使い、怪人を作り出す部署があった。


 今、その改造手術を終えた実験体が、それっぽい雰囲気の部屋の中で目覚めると、自分に改造を施した白衣の博士に問いかけた。


「それで博士、自分は一体なんの因子ファクターを加えられた怪人なんですか? ——突然に手術が始まったから、聞きそびれてましたが」


「聞いて驚け、怪人33号。お前に融合された因子ファクターは……『犬』と『コオロギ』と『イカ』だ」


「待って。……え、なんで?」


「なにがだ?」


「いや、なにがだ——じゃないが? なんで? え、なんでその三つをよりにもよって選んだ?」


「ふっ、それはな、33号……実験の前日に私が見た夢に、それら三つが出てきたからだ」


「験担ぎか? おい、一富士二鷹三茄子じゃないんだよ。——はぁ?! そんなふざけた理由でクソみたいなメンツのキメラにされた俺の身にもなれよ!?」


「いやあ、どれも入手が困難じゃない生物でよかった。なんせ急遽、使う生物を変更したもんだからな」


「マジでなんで変えたし。……てか、変更したってことは、元は違うやつ使うつもりだったんすよね? 元は何でやる予定だったんすか?」


「元? 元はアレだ、『ライオン』と『大鷲』と『サメ』だ」


「陸海空の最強そろってんじゃん! ちゃんとそれでやってくれよぉ〜! それなら伝説の怪獣グリフォンって感じにちゃんとなってたじゃん! ——いやサメはちょっと違うけど! でもそっちのが絶対強そうじゃん! なんで変えたし! てかこれ変更するって言ってよく許可されたよな! マジでなんでなんだよ!」


「いや、それはだって……ライオンとか今や、めっちゃ貴重な生き物だし、こんな実験に使うのとかどうなの? ——って上から言われて」


「いや悪の組織のくせに、なによく分かんないコンプラに従ってんすか?」


「その点、犬とコオロギとイカなら……な? なんの文句も言われなかったわ」


「クソが! イカも最近不漁だろうが!」


「え、そこ?」


「犬だって、動物愛護団体が黙ってないだろ!」


「いやウチ、悪の組織だし……」


「そこはそれでいくのかよ」


「…………ん、あれ、コオロギは?」


「は? コオロギとか知らん」


「えー、コオロギにだけ辛辣〜」


「うるせぇ! 虫ケラなんて知るか!」


「でも今は、君こそがその虫ケラの因子入ってんだけどね」


「きいぃぃぃぃ!」


「あ、その叫び声、なんか怪人っぽいね」


「ぶっ殺すぞ! ……てかマジで、『犬』と『コオロギ』と『イカ』でどうやって戦うんすか——? 無理だろこれ……」


「いやいや、案外いけるって! ……たぶん」


「おい最後コラ」


「ちゃんと君にはその三つの生物の力が備わっている。そう、三つもだぞ? だから大丈夫」


「……じゃあ、実際のところ、俺は一体何ができるんです? どんな能力が備わってんすか?」


「君の体には——『犬の尻尾』と『イカの発光器官』と『コオロギの触覚』が備わっている」


「おかしいだろチョイス! せめてそこはそれぞれの一番の持ち味もってこいって! ——『犬』なら嗅覚! 『イカ』は触手! んで『コオロギ』は……なんだろ、羽根とか? いや、なんかリーンリーンて言って音波攻撃とか? ……ま、まあ、なんかあんだろコオロギも!」


「いやね、急遽変更したから、そこまで調整する時間なくて……」


「だからぶっ殺すぞって」


「それで、まあ……一番取り付けやすそうな要素選んだ、みたいな?」


「あのさぁ! 俺これさぁ! イヌの尻尾と虫の触覚が生えてて、あとなんか光るだけとか言わないよね? ね?」


「まあ……大体そんな感じ」


「ねぇ、それでどうやってヒーローと戦うの? あいつらさぁ、普通にめっちゃ強い武器とか能力とか使ってくるじゃん。これじゃ普通に無理じゃーん?」


「大丈夫、安心しろ」


「え、なんか秘策でもあるんすか……?」


「——いや、武装開発部が開発を進めていた新型の強化スーツがある。これはマジで強いから、これを使えば大丈夫」


「いやキメラ手術受けた意味」


「ぶっちゃけキメラ手術はさ……もう主流のやり方じゃないっていうか、この改造部も、もはやただの伝統部署的な扱いだし……」


「え、マジ……??」


「部署の予算や人員も削られまくってて、ライオンとかマジ、連れてくるの超大変だった……」


「ならちゃんと使えや……」


「だってさぁ、連れてきたら連れてきたで、貴重な動物ガーとか嫌味言われるんだよ? もう博士やんなっちゃう……(;ω;)」


「もうアンタのキャラが分かんねぇよ……」


「そういうことだから、せっかく手術受けたけど、そのスーツ着て頑張ってね」


「いやマジで……なんで俺、手術受けたん? てかもうそれ、見た目がまあまあキモくなって光るようになっただけじゃん俺。ひどくね……?」


「ほら、スーツあるから、これ」


「はぁ、これがそーなんすか」


「怪人らしく、ちゃんとピッチリスーツだぞ」


「いや知らんけど」


「——あ、ダメじゃん君、尻尾と触覚が邪魔でスーツ着れないわww」


「切れぇ!! もうこんな尻尾ぉ!!」



 ◆


 強化スーツは着れない怪人33号だったが……

 詳しく調べてみたところ、三つの生物の因子がなんか奇跡的に合わさっており、よく分からないけど身体能力がえらいことになっていたので、新型強化スーツ無しでも鬼のような強さを発揮することができた。

 彼はヒーローをバッタバッタと(コオロギだけにww?)薙ぎ倒し、組織内で一躍いちやく時の人となる。

 この功績を評価され、改造部署も花形部署に返り咲くことができ、博士も満面の笑みでニッコリしたとかなんとか。

 ——夢のお告げに従ってよかった、と博士は思ったのだった。


 めでたしめでたし。


 。

 。

 。

 

「さあ、今日もヒーローと戦い勝利するのだ! 最強の怪人33号——いや、『イヌコオロギイカ』よ!」


「いや名前! 俺はソレ絶対認めねぇからな!」



 ——おしまい。


 

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