黒洞々たる夜

芥川龍之介がまだ二十代前半、夏目漱石に『鼻』を絶賛されてデビューされたころの作品ですね。
いま芥川龍之介はほとんど読まれないし、キャラクター化され再注目されているとはいえ、読まれているときもわりと低く見積もられていましたね。
谷崎潤一郎との比較だの志賀直哉との比較だの。
この作品については、河野多恵子が、末尾の「外には、ただ、黒洞々たる夜があるばかりである。
 下人の行方ゆくえは、誰も知らない。」
は蛇足だと評していましたし。
はなしの面白さといい、文章のうまさといい、私は大好きです。
谷崎潤一郎、志賀直哉、河野多恵子、諸氏より好きですね。
芥川龍之介を超えを目ざし成功したとされる三島由紀夫よりも。
嫌な作品がないんですよね。
本作『羅生門』も言わずもがな好きです。
もし未読でしたら、文豪というレッテルに惑わされず、ためらわず、読んでいただきたいものです。