第12話 第四回戦
服消失の件も何とか落着し、夕樹は次の相手へと向かった。
「やっ、ひかりん。調子はどう?」
「あ、ほしゆー! こっちは全然ダメだよ」
ひかりんこと雲間光は、星倉夕樹の数少ない友人の一人だ。唯一、あだ名で呼び合う仲でもある。
「魔力が全然収束しないの。なんか拡散しちゃって……練習じゃあそんなことなかったのに」
「意志が弱いのかな。集中力の問題じゃないんでしょう?」
「折角の演習コースなのに成績最下位になっちゃうよぉ」
ううぅ、と項垂れるひかりん。
「そうね、頑張りなさいよ。他人を蹴落として自分が1位になる、って思ってさ」
「ええ? 皆一緒に頑張ろうよー」
こういうところが意志の希薄化と魔法拡散につながっているのだろうな、と夕樹は内心溜息をついた。ひかりんの長所かつ短所だ。
「それか、いっそのこと拡散する前提で沢山魔力を収集するとか」
「そんなことできるの?」
「できると思えばできるよ。魔法は意志が大事なんだから」
それじゃあ、対戦よろしくと夕樹は手を振った。ひかりんもこくこくと頷き、端末を恐る恐るこちらに向けてきた。確かに、仄かに蒼白い光が端末周辺に漂ってきた。
「いくよ、ほしゆー!」
そんな声と共に、青色の光が視界に広がった。同時に身体全体にグッと圧力を感じる。本来の空魔法とは思えないほど鋭さに欠けるものだったが、代わりにビリビリとした衝撃が塊となってやってきた。
「……これ、火魔法に転じたら相当痛そうだな」
「あ、それいいね、ほしゆー」
「させないよ!?」
慌てて空魔法を鋭く細く、端末の手元を狙って撃つ。しかし広範囲に及ぶひかりんの魔法のせいで、威力減衰は免れなかったようだった。
「おっと、腕がブレる」
端末を叩き落とすつもりだったのにこの余裕だ。
「いっけー、スパーク!!」
バチバチバチッと目の前で火花が弾ける。花火の真ん中に来たみたいな眩しい景色と細かい粒子が肌に絶えず突撃してくるような痛みに襲われる。
「痛っ、イタタタタ!」
思わず地に伏せて頭を抱えて縮こまる。首筋なんかにビシビシと弾けるような細く鋭い痛みが浴びせられた。痛みが消え、薄っすら目を開けて上を見上げると、ひかりんが飛び跳ねて喜んでいた。
「や、やったぁ!! 私の勝ち!!!」
「あっ、しまった」
負けるのはこれで2人目か、と夕樹は肩を落としてゆっくりと立ち上がった。
Select 神崎秋夜 @kanzakishuya
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