秘事は睫
星雷はやと
秘事は睫
『本日スタジオに起こし頂いたのは、幸運体質で有名なコウダさんです』
「むぐっ……」
テレビから明るい声が響いた。僕は炬燵に入りながら、剥いた蜜柑を口に含む。
『コウダさんは今迄多くの幸運に恵まれています。宝くじに何十回も当たり、懸賞の当選も数知れません。他にも危険なことも数多く、回避されています』
「こういう人、居るんだな……。まあ、凄い数だし当たり前か……」
アナウンサーが説明をすると、男性は恐縮したように頭を下げる。そんな彼を囲み、微笑みながら見守る5つの人物達。男性が3人と女性が2人だ。どれも着物姿で半透明をしている。多分これが世間一般的に言う、守護霊というやつだろう。
不思議なことに僕には、こういう物が視えるのだ。
5人という破格の守護霊が居るなら、彼の幸運体質も納得が出来る。僕は隣に置かれた緑茶を飲む。
「……でも、少しだけ羨ましいかも……。ん?」
宝くじは夢があるし、お肉やお魚などが当たるのも嬉しい。本音を呟くと、テーブルの上に置いてあるスマホから通知音が鳴った。
ピコン、ピコン、ピコン、ピコン、ピコン……。
「え? ええ? 何事?!」
次々と通知が表示される。通知の内容は懸賞の当選を知らせるものだ。だが僕は懸賞など応募した覚えがない。きっと何かの間違いだろうが、止まらない通知音に焦りが出てくる。
ピンポーン! ピンポーン! ピンポーン!
「えぇ? 今度は何!?」
今度は呼び鈴が鳴り響いた。スマホを握りしめたまま、玄関へと向かうと大量の荷物が届いていた。伝票を見ると、応募したことがない懸賞の会社からだった。
「いやいや……本当の当選者さん達に悪いよ……」
こんなに届くなんて何かの手違いだろう。正規の当選者に悪い。そう呟くと、スマホの通知音が止んだ。今がチャンスだと誤配送の連絡をすべく、スマホをタップした。
何時の間にか消えたテレビの画面に、巨大な白い影が映った。
秘事は睫 星雷はやと @hosirai-hayato
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