母の転移、私の転移
鈴音
親子揃って
小さい頃好きだった話がある。とても賢くて、強い魔法使いが悪い魔王を倒すお話。その魔法使いは異なる世界からやってきた人で、世界を救ってからたくさんのお金と、素敵な旦那を連れて元の世界に帰ったらしい。
その話をする母はとても楽しそうで、その話を聞くのが毎日の楽しみだった。仲間との愉快な旅と、痛快な戦いの話。そして、それをまるで懐かしむように話す母。
そして今私は、見てしまった。
真っ黒なローブに身を包み、いかにもな帽子をかぶった魔法使いを。そう、私のお父さんは魔法使いだった。
…いや、待ってほしい、私はこの人とお風呂に入ったことがない。だから、性別はまだわからない。そういえば、母と一緒に風呂に入った記憶もない。私の両親の性別はどっちなのだろう。
悶々と考える日々。そんなある日、私は考えすぎでのぼせ、風呂で溺れてしまった。
そして気づくと、私は異世界にいた。…そう、母の話は全て本当の話。私も異世界に転移してしまったのだ。
だが、母の話してくれた世界とこの世界は同じもので、私は全てを知った上で世界を救うことに成功した。生まれ持った魔法の才能と、剣の才能。これを駆使して、私は世界を救った。
そして帰ってきた私に、両親はこう告げた。
「隠していてすまん。実はな、お父さんは元は女で、お母さんは負けて性転換した元魔王なんだ。そしてお前は元々男だったけど男で産まれたら魔法使えないから女にした」
…はぇ???
「そしてお前は、私と同じく世界を救ったのだろう?なら、あと三日くらいで元魔王がお前の元に嫁ぎに来る。幸せにしろよ」
…父と母はそれだけを伝えて、まだJKの私を置いて旅行に出かけた。そして、本当に転生した魔王がやってきて、どたばたの新婚生活が始まった。
…幸せで、素敵な家庭を築けた私は、子宝にも恵まれて、末永く妻と添い遂げた
母の転移、私の転移 鈴音 @mesolem
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