第2話

(ここは?)

僕は見知らぬ世界にいた。

みたことない材質の布の布団、柔らかくて気持ちがいい枕。

みたことない場所、物。

「ここはどこ!?」

つい声が出てしまった。

「雄一! もう起きて! 学校行かないの!?」

学校? うちってそんなに裕福だったかな?

とにかく訳がわからないから確かめに行こう。

家の中に階段なんてあったっけ?

それにとても降りやすい。

下に降りると全く知らない女性がいた。

「速く!」

心臓が縮まるような気分になり、急いでテーブルに座る。

(なんだろうこれ? 食べ物であることは知っているんだけど、食べたことがない)

「遅れるよ!」

僕はとりあえず急いで食べた。

味はよく分からなかったけど、何か甘塩っぱいサクサクとした感覚がした。

(こんな物は食べたことがない!)

目を輝かせてがぶりつく。

おいしくって、すぐ無くなってしまった。

「もう一つもらっていい?」

「学校!」

そう言われて焦り、みたことがない持ち物を持って急いで外に出た。

みたことない景色、みたことない人たち。みたことない動物。

ただ一つ見たことがあったのは、どこまでも続く青い空だけだった。

「え、ええ!!? どういうこと!?」

とりあえず、学校に行くことにした。

期待と不安渦巻く新世界へ!




学校に来てみると、いつも通り? の光景が広まっていた。

ゲームの話で盛り上がる人たち。

女性でなんの話をしているのか全く分からない集まり。

部活どうしで仲良くやっている人たち。

全部知らないはずなのに全部誰か知っている。

とりあえず、席に着くことにした。

「大丈夫か? 田中。 なんか3日くらい無断に休んでいたから」

田中。どうやら僕の名前みたいだ。

「大丈夫だよ」

そう言って友達? はまたゲームの話をしている集まりに戻っていった。

ホームルーム? が始まる。

先生? が入ってくる。

出欠をとり、自分の番が呼ばれた時に先生が話しかけてくる。

「田中、ゆっくり休んでどうだった? 次回から卒業や内申点に響くから休むことがないように」

横で少し笑われた気がするが、まあ何を言われているのかピンと来なかったので気にしないことにしよう。

出欠をとり終わった先生が教室を出ていき、新しく入ってきた先生が授業を始める。

先生の名前...知っているはずだけど、なんだっけ?

とりあえず授業を聞いているが、心の余裕はないので、今までのことを整理する。

僕は元々農村の息子で畑仕事をしていたはず。

で、それなりに真面目に働いて、いつかは家を出ていき、都会で暮らすという夢があった。

でも、今ここにいるのはみたことがないほど栄えた街、そして学校に行けるほど裕福な環境。

美味しかったご飯。

ものすごく胸が躍る。

そして、真剣になって授業の内容を聞く。

...何も分からない。

鎌倉幕府って何? 原人、猿人? どういうこと?

高鳴る胸がだんだんと落ち着いているのがわかる。

それに反比例して、思考がだんだんと真っ白になっていくのがわかる。

まあ、でも頑張って聞いてみよう。

結局何も分からないまま1時間の授業が終わる。

だんだんと、これからこんな時間が後、何時間も続くと考えると、頭が真っ白になるのと比例して頭痛がだんだんと始まっていく。




何も分からないまま、半日が終わってしまった。

「じゃあね、また」

周りでは別れの挨拶をしている人たちが多く見える。

どうやら今日の授業はもう終わってしまったようだ。

仕方ないから、僕も帰り支度をする。

一日過ごしたけれど、朝に一回だけ心配されたことを除いて一回も話しかけられたことがなかった。

(この人、ここでは嫌われているのかな?)

そう思ったが、あまりしっくりこない。

とりあえず時刻は午前4時。この後何も予定はないし、そのまま帰ることにした。

帰る最中、元の世界を思い出す。

(今まで学校に行く貴族や金持ちの人たちをうらやましく思っていたけど、そいう人たちも苦労しているんだな)

少し、気持ちがわかった気がする。

(お父さん、元気にしているかな?)

天の声の人から自分と全く同じ人が入ったと言っていたけど、どんな人なんだろう。あってみたいな。

今日一日、主に大変なことが多かった田中雄一(ヌーベル)は、とりあえず家に帰りながら、夢のような生活を楽しもうと思った。

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現実で死んだ俺は異世界で頑張る。え、死んでないの? テイリル @teirilu

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