第3話 ぼく すらいむ だよ!
洞窟の中、岩がゴツゴツとした壁をつくり、一見ただのトンネル。
しかし、れっきとしたダンジョン。
しかもAランク。
なのに在るのはボス部屋だけで、道中出現する魔物はいないという。
初心者に優しく、職業冒険者にとっては金にもならない旨味の少ないダンジョンなので普段は人影も無い閑静なダンジョンなのである。
Aランク認定されてるのに。
しかし、実際の所、ダンジョンと言うより白鬼乙女さんのお住まいというのが正しいのかもしれない。
入り口から玄関のボス部屋入り口まで一直線。私道の玄関アプローチな様なもの。
リニューアル工事で、
私道の補修工事後にいくつかガゼボが追加され、入り口門にセキュリティが導入された所は、正に住宅のリフォーム。
選ばれず、資格無き者には門の中に入る事も叶わず。
当たり前と言えば、当たり前な事。
誰が自分の邸宅を知らない
今、現在資格を持つ者はおそらく二人。
阿部さんとミズモチさんである。
いつ、どの様にして資格が得られたのか?
本人達も知らない事だと思われる。
本当に玄関アプローチに魔物は居ないのか?
実は居たりする。
スライムである。
勿論、ミズモチさんとは種類も違う。
透明化が出来、気配も極小という実に暗殺者向きのスライム。
属性は土。
地上関係であれば、土のあらゆる属性魔法の行使を可能とする才能がある。
レベルアップして修練も必要というのは誰しも同じではあるが。
世の中、甘い話は無いのである。
でも、ステルス性に優れているのは元からの事。
そのステルス性を生かし、阿部さんが初めてダンジョンを訪れた時から監視、いや、眺めていたのだ。
見えないし、気配も感じない鈍い阿部さんにはこのスライムに乗られても気付けない。
もし、スライムに害意があったらとっくに阿部さんの命はなかっただろう事は容易に分かろう。
で、阿部さんに攻撃もせず、何をしてたかと言うと、ミズモチさんとコミュニケーションをとってたってだけなのだ。
ミズモチさんは、阿部さんとの生活を自慢混じりに話し、
阿部さんが如何に優しいか、如何に楽しい毎日か、周りの人達との関わりとかもう色々とスライムに意志疎通させた。
レベルの低いスライムの情報は最上位のボスたる白鬼乙女さんにも逐一送られ、共有されるのは必定。
何で白鬼乙女さんが阿部さんの事を知っていたかなんて、当たり前の事だったと言う訳だ。
そして、審査に合格するのももう当然の帰結だった。
でも、事故が起こってしまった。
『阿部氏ラッキースケベ事件』である。
初めて自分の肌を見せてしまった(と自分では思い込んでいる)阿部さんには、もう責任を取って貰うしかない!
未来の旦那様の最有力候補。
人柄も知れてるし、旦那様になって貰うのもやぶさかではない。
婚約指輪兼、白鬼乙女邸へのパスポートを阿部さんに贈り、無事受け取ってもらった。
後は・・・ぐふっ。
ぼく、白鬼乙女邸で監視を担当してるスライムです。
ボスはご自分の配偶者に阿部という人間を選んだ様だけど、ぼくもぼくと一緒にレベルアップしてくれる人が欲しい。
だってミズモチが自慢するんだもの。
初めはどうでも良かったけど、羨ましくなっちゃったのだもの。
それに、ぼくもミズモチみたいに名前が欲しい。
誰か好い人がぼくに名前を付けてくれないかなぁ?
そういえば、人間の行事にクリシミマス?
じゃなくて、クリスマスと言う日の前日の夜に気配のおかしな人間の女の人とお知り合いになったって言ってたっけ。
気配関係に何らかの才能のある人ならぼくと相性がいいかもしれない!
早くそういう人と会いたいな。
その人、ここに来てくれないかなぁ。
まだ見ぬぼくのパートナーに早く会いたいな。
スライムが愛らしいので話しが膨らみました 六月 @rokugatu3
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