ifストーリー もしあの時ベルが……


~もし、あの時ベルが死んでいたら~



う~ん……折角過去に転生したんだし、恐竜見たいよな。さっきのトリケラモドキみたいなのじゃなくて、ティラノみたいな肉食のやつ。

よし、探しに行くか!


俺は恐竜を探すために森の中を探索することにした。しばらくガサガサと森を歩いていると、急に開けた場所に出た。


うん、やっぱりどこにも見当たらないな。トリケラモドキみたいな草食っぽい恐竜すら見つからない。

そういえば、狼になったからなのか後ろまで見えるんだよなぁ。慣れない。

しかも、視力も少し落ちてる……っぽい?

あと、なんと言うか色が褪せて見える。

最初の方は転生した勢いと、歩けるようになった喜び、洞窟から出れた喜びで気づかなかったけど。

落ち着いて周りを見れば色が少ない……。

これも狼に転生した影響か?


もしかして、今まで普通に視界に入ってたけど目が悪すぎて見えなかった?



……ありえる。


狼って目に頼ってるってイメージより、鼻で獲物を見つけてるイメージあるし。


もう少し、がんばって探してみよう。

そう思いまた場所を移動しようとするとガサガサとした物音が聞こえた。


なにかと振り返ると木々の間から大きな体が見えた。どうやら四足じゃなくて二足歩行のようだ。

この事から考えられるに、多分肉食の恐竜なのか? 草食のやつで二足歩行の恐竜っていたっけ? 見たことないしなぁ……。


こんなことを考えてると、二足歩行の恐竜がノシノシとこちらに向かって来ているのが見えた。


あれ……? これヤバくない?


あの恐竜こっちをガッツリ見てる気がするんだけど。え、まずくね?

ちょちょちょちょ絶対ヤバいって!


俺は恐竜から逃げるために、急いでその場から移動した。

いやね? もしかしたら、ただこっちに向かってきてたって可能性もあるわけだし?


そうだよな、そうであってほしいな。

そう思いチラッと後ろの方を振り返ると、そこに写るは艶々としたトカゲのような鱗の下にある筋肉を躍動させ、こちらにズシズシと歩いてくる恐竜じゃないですか! やだー!



まてまてまてまてまて! いやマジでヤバいって。ふざけてる場合じゃない。逃げないと!


まだ完全には慣れない4本の足を必死に動かして足元の悪い地面を駆けていく。


まずいまずいまずいまずい!


このままあの捕まったら……? 確実に死ぬ。

今の自分にはあの恐竜に対抗する手段がない。

魔法の才能なんてものはあるけど、どうやって使えば良いのか1ミリもわからない。


少しずつ、少しずつガサガサとした音が後ろから近づいてくる。


はぁはぁ、はぁはぁっ……! やばい!

呼吸が苦しくなってきた。


それに、ずっと慣れない自然の道を進んでるせいで体力も限界に近づいてきてる。

でも、4本足があるお陰か不安定な道もなんとか進むことができている。



だけど、それでも……そろそろ限界だ!



後ろから絶望の音が聞こえてくる。

次の瞬間後ろから凄まじい衝撃が加わった。



「キャウンッ!」


思わず口から鳴き声が漏れてしまった。

でも、仕方ないだろ急に痛みが来たんだから。

情けないない悲鳴だなぁ……。




痛い。


苦しい。


辛い。



頭の中をそんな感情が支配する。

そんな思考を頭に抱えながらも、思考の片隅で何が起こったのかを確認するために後ろを振り向いた。


そこには巨大な口gッ……

















大きな恐竜が四足歩行の生き物を咀嚼している。この時代に存在するはずのない生き物。

その恐竜は飢えていた。

2、3日獲物を狩ることが出来ず、何も口にしていなかったからだ。そんな植えた状態の時に生き物を見つけた。

その生き物は今まで見た事などなかったが、飢えを満たすという思考が頭の中を埋めつくしていた恐竜には、そんなことは些細なことだった。


一心不乱に貪る。

少量ながらも久しぶりの食事。

恐竜は喜びという感情に支配されていた。



肉の最後も一欠片残さずに平らげた恐竜は満足しそこから立ち去ろうとした。


が、その瞬間恐竜の体が急激に音を立て変質し始めた。

到底生き物から鳴ってはいけないような何かが折れるような音や、グチョグチョとした音が辺りに響く。


無論そのような変質が体に起これば痛みも発生するわけで……恐竜は痛みに抗うように暴れ始めた。


辺りの木々は、なぎ払われ。地面は抉れ、咆哮が辺りを揺らす。

普通だったらありえないような力を発揮し辺りの地形をめちゃくちゃにしていく。


恐竜が暴れるのを止めたのは、体から鳴り響く異音が止んでからだった。


その恐竜は万能感に満ちていた。

以前とは違い明らかに知能も上がっている。

そう、もし声帯という物があれば言葉を理解し話せるように成程には。


恐竜は自身の姿を首を回して見回す。

牙や武器などを通さないほど強靭な鱗。全てを切り裂くような鋭い爪と牙。遠くまで見渡せるほどの驚異的な眼。自身の体を流れる謎の力。

以前の自分にはなかった大きな翼。

頭の上には一対の後ろに流れる角。



もし、未来の人々がその姿を見た時に皆が皆揃って思い人に伝える時にはこう言うだろう。



ドラゴンのようだった、と。



恐竜は竜に成った。

不思議とこれからは飢えることも恐怖することもないという実感が心に満ちていく。

自分は何者にも負けない全ての頂点にたったのだと理解した。


竜は考えた。



そうだ、この力を試そうと。



獲物を狩るついでにこの身に流れる不思議な力を使ってやろうと考えた。

この力に触れたのは初めてだ。だが、何ができるのかは不思議とわかった。


竜はその力を翼に込め、羽ばたいた。


瞬間、浮き上がる巨大な体。

2度羽ばたけばさらに上空へ。3度羽ばたけば一瞬で大地が遥遠くに見えるほどの高さに上昇した。


竜は実感した。自分は大地だけでなく空さえも支配できるのだと。



竜は喜びに満ちたまま獲物を探しに行こうとさらに羽ばたいた。



その瞬間。



















竜は死んだ。









竜に外傷は存在せず毒などで死んだ訳でもない。

竜の鱗はたとえ未来に存在する核兵器であろうとも傷つけることは出来ない。

また、毒も瞬時に解毒し抗体を作るためその毒は二度と効かなくなる。


そんな竜が死んだ。

なんの前兆もなく、死んだ竜も何が起こったのかを理解せずに死んだ。


もし、特殊な瞳を持った者がその瞬間を見ていたならば何が起こったのか理解し、そして恐怖しただろう。


あの時、あの瞬間竜の体を中心に凄まじいほどの圧が放たれ……魂が砕け散ったことに。




















その星は魔力に満ち様々な生物がいた。

人と呼ばれる生き物も存在し、魔法を扱い生態系の中間で栄えていた。


別の大陸に目をやると見上げるほどに大きな生き物や空を飛ぶドラゴンのような生き物がいる。


そして、その星を大きな力が巡っていた。

その力は2つの場所から溢れだしている。

1つは巨大な竜の骨から。



そしてもうひとつは辛うじて形を保っているおそらくイヌ科であろう生き物の頭蓋から。



きっとこの星は様々な事がこれから先起こるだろう。ただの人がとうてい勝つことが出来ないような生き物が現れたり、その生き物を倒すために人類が結束したり。


それがこの星の未来なのだろう。




















~もし、ベルが正気を保てずに狂っていたら~



あれから何年だ? いや、なんでもいい。

あれから何年も経ち、人という生き物が誕生した。私も遥か昔そんな生き物だった。


自分は知っている。



人という生き物の愚かさを。



私は知っている。



人という生き物の脆さを。



俺は知っている。



人という生き物が放つ美しい輝きを。





人は争う。争いから人々は技術を発展させる。しかし、人は争いを嫌う。

不思議なものだ……争いは嫌だと言うのに結局争う。


あぁ人間はなんと愚かなんだろう。


でもそれを乗り越えようとするあの輝きがいいよね!


もっとあの輝きを見てみたい感じてみたい。


俺は人の輝きを目にした。

仲間を助けるために自分が勝てそうもない生き物に立ち向かうあの様を。

僕だったら殺してしまうような裏切り者を許し、仲間として迎え入れたあの優しさを。

あぁ、愚かな。結局のところその者は殺された。


あの輝きを見たい。


あの愚かさを正したい。


あの輝きを知りたい。


あの哀れなものを救いたい。


あの輝きを感じたい。


あの脆さを守りたい。


あぁ……そうだ、私が人を管理すれば良い。



我が人を管理し、争いを起こし、沈め、成長を促し、守り、救い、殺し、恨まれ、崇められ、恐れられれば人々は輝くだろう。


今までに俺が見たことないような……そんな輝きを見せてくれる存在が現れるよなぁ。


そうだそうだよね!

そうしよう。

あぁ、そうするとも。

そうしなければ……!






◆◆◆













人々を管理して何年も経った。


人は素晴らしい物語を紡いでくれる。その全てが私に潤いをもたらした。


特定の人々に僕の力を分け与えて人を裏から操らせたよ。


素晴らしい。毎日この星のどこかで人々が輝いている。なんて素敵なことなんだろうか。



今日も私を殺そうと数人の人々がやってきた。彼らは私を邪神として扱っている人々なんだろう。その宗教のマークを身につけている。

その宗教を作ったのは俺だ。


我を邪神として扱う宗教を作ればきっと殺しに来てくれると思っていた。

その通りになった。今までも何度も何度も殺しに来てくれた。嬉しい! 素晴らしい! 今まで亡くなってきた仲間たちを思い! 今! この場に立っている!!!

恐ろしいだろう、憎らしいだろう、逃げ出したいだろう!


だが! ここに来た!


今その心は輝いている。


なんと……美しいんだ。



そうだ殺そう。


私は先頭に立っていたものを弾け飛ばした。

後ろにたっていた者達に血や内蔵だったものがかかってしまったが申し訳ない。


あぁ、恐怖している。だがそれでも立ち向かうその勇気。素晴らしい……!


いいねぇ! いいよ。


たった一人だけ残して後は殺した。


最後の一人は仲間を思い泣いている。あぁ、話している言葉から察するに恋人がいたのだろう。あるいは婚約者か。

きっと今まで愛を深めあってきたのだろう。

沢山辛いことがあったろうに、それも恋人のおかげで、恋人を思うことで耐えてきたんだよね。


美しいね。綺麗だよ。素敵だなぁ!



いいよ、逃げなよ。

逃げて、恨んで、人々に伝えて。

また来てくれ。








私に輝きを見せるために。







――――――――――――――――――――

どうもオオキャミーです。


お久しぶりですね。今回の話はもしベルが〇〇だったらということで書きました。


まだ次章は書き進めている段階なので、投稿するのに時間がかかります。


待ってくださってる方達にはもう少しだけ待っていただけると嬉しいです。

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【次章執筆中】異世界じゃなくて地球に転生したけど自分の好きなように生きていきます オオキャミー @oukyami

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