シルフィーナ視点
毎日毎日、何人もの傷を癒してきた。
戦いに連れ出され、たくさんの人が傷つき倒れるのを見ながら、それを治療する日々。
もう嫌だと言えば、
「お前は聖女だろう?」
「役に立たねばただのゴミだ」
と叱られた。
そんな毎日が続いたある戦場で私をさらってくれたのは、とっても綺麗な魔王さんだった。
魔王さん曰く、私は魔王さんの番、なのだとか。
けれど私は聖女、魔王さんは魔王さん。
聖と魔という正反対の属性故か、魔王さんは私に対して一定の距離を保とうとする。
だから私は、ずっとただの役立たずのごくつぶし、だったのだけれど──。
「おい聖女、何を考えている?」
「はい!? あ、す、すみません、魔王さんに攫われた時のことを少々……」
「人聞きの悪いことを言うな。……まぁ、事実ではあるが……」
結婚式とパーティを終え、私たちは今日から寝室を共にする。
でも大丈夫なのかしら?
だって結婚式のキスですらできなくて飛ばしてしまったというのに。
「あの、魔王さん? 私、やっぱり隣の部屋で寝ますよ?」
私は大丈夫だけれど、魔王さんは聖属性の魔力によってダメージを受けてしまう。
これは正反対の属性の副作用のようで、しばらく一緒に過ごせばお互いの魔力に馴染むから大丈夫なんだそうだけれど……。
指先が触れたり、愛していると伝えるだけでダメージを受ける魔王さんを見るとなんだか申し訳なくなる。
私と一緒に寝るとそれこそ死んでしまうんじゃないかと気が気でならないし。
「いや!! 大丈夫だ!! 問題ない!!」
とか言いながら顔が真っ赤だから説得力がないです、魔王さん。
「それより、俺の美しい身体を間近で見られるんだ。ありがたく思え」
おぉ、いつも通りのナルシスト具合で素敵です。魔王さん。
顔が真っ赤なのは変わらないところも素敵です。魔王さん。
と言ったら絶対にまた真っ赤になって否定するだろうから、思うにとどめておこう。
「魔王さん、好きです」
「ぐっ」
うん、大丈夫そうじゃない。
私は魔王さんの右手を取ると、ダメージを受ける彼を見上げて微笑んだ。
「無理はしないようにしましょう。時間はたくさんあるんです。ゆっくり魔力が馴染むのを待ってからでも、遅くはないでしょう?」
「聖女……」
それに、初夜よりももっと大事なことがある。
「まずは名前を呼ぶことから始めませんか?」
魔王、聖女。
私たちの名前はこのどれでもない。
「っ、そうだな。し、しし、しし、シル……っ!!」
そういうヘタレな魔王さんも好きです。
私はくすりと笑ってから、魔王さんの耳元でこういった。
「それもおいおい、ですね、グレンセス様」
とたんに赤く染まる魔王さんの耳。
焦る必要はない。
私達には永い永い時間があるのだから。
そして私たちは、人一人分の間を開けてから、同じベッドの上で眠りについた。
少しずつ進んでいく距離に笑いあいながら、これからも私たちは、永い時を共に生きていく。
―あとがき―
ちょっと気まぐれにシルフィーナSideを書いてしまいました……!!
可愛い二人のじれ恋、いかがでしたでしょうか?
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それでは、ここまで読んでいただきありがとうございました!
景華
美しき【魔王】の俺の番が【聖女】だとか聞いてない~聖なる力にダメージを受けながらも不遇聖女を溺愛したい~ 景華 @kagehana126
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