主人公の狂気

単なるバラバラの線に、一定の音と一定の意味とを有たせるものは、何か?

それに対する推理に推理を重ね、脱線してゆき、自己の作り上げた文字霊というものに、とり殺される。
 そう私は読んでおりますが。
 この疑問は、人にも及ぶわけで、そこで気づけぬところに、主人公の病的なさまがみてとれます。

ことにむつかしい問いでもなく、仏教をかじっていればたちどころに解けますよね。
空と縁起で。

もとより中島敦は博学ですから、それはご存知であって、作者が主人公とイコールということではないわけですね。

もしかすると、みなさまから呆れられるかもしれませんが、中島敦はひとつの教訓を示そうとされたのかもしれませんよ。

みなさま、よう知ってはる、あれ。

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