第10話

【2126年12月30日・早朝・ヨコハマグランドホテル】

「おはようございます。」

俺は飛び起きた。

姫の声にびっくりしただけだ。


俺は姫の事を仲間を抗争で亡くし逃げてきたケンに任せることにして、

ドームを目指した。

既に聖少女マリアは会場に居るはずだ。


爆弾は、どこかにある。

予期できたことだが・・・



【同日・朝・ヨコハマドーム】

ヨコハマドームは、競技場というよりも、集会場といった用途で使われることも多い。

解放祭のカウントダウンクロックが2日を切ったことを教えている。

安堵の息が漏れ掛けるが、それがパァになりそうな現実が目の前にあった。


4階層あるこの施設の中で、爆弾を探すのは至難の業だ。

しかし、諦めるわけにもいかないので、職員の制服を奪って忍び込んだ。

客席2階から順に探し始めた。

観客席の下や、ダクト、探せる範囲を全て探した。


次は、1階の玄関だ。


しかし、すべては遅かったのだ。激しくドーム全体が揺れる。このドームは爆発のさなかにあった。


「くそっ」


さらに、悪い知らせが空からやって来た。絶望だ。幾千のミサイルがヨコハマに降り注ぐのだ。


【同日・朝・某所】

ここにいてくださいという声があった。その後、強い衝撃があった。眩い閃光と煙の臭いがあった。


炎の中から私は生まれた。


「マリア様」


私は瓦礫の街に繰り出した。


「マリア様!」


瓦礫の街の中で、銃を向けられている横顔。間違えなくマリア様だった。動かないでいる。


「なんだ。お前は」


「おい、同胞に銃を向けるな」


私はマリア様と銃の間に割って入ったのだった。


「お前の奴隷か?」


「・・・」


「どうなんだ」


「奴隷でなければ処刑する」


「私の奴隷です」


私はその言葉を決して言いたくはなかった。しかし、言う必要があったのだった。




その日から出来事は思いもよらない方向へと転がっていった。一万人の旧人類の勢力は蜂起した。かつて世界の警察を名乗った超大国にしまわれていた幾億ものミサイルが使用された。獣人は死に絶え。形勢は逆転した。イフリートは、立ち回り表の顔は獣人たちの管理者として、裏の顔は獣人を保護する聖人として生き続けた。




雪が降っている。


「イフリート様」


「マリア。こちらへ」


かつて、マリアがイフを抱き寄せたように、イフがマリアを抱き寄せる。もはや、マリアの目は何も映してはいない。


100年目に降る雪は、白く虚無で寂しいものだと、イフリートは思った。

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100年目の雪 グンジョシキ キレイ @r_gunjo_iro

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