So5

 ハローハロー。


 紳士淑女の諸君Ladies and Gentlemen、久し振り。


 私だ、アウターだ。


 いやあ、遂に六章も終わったね、帝国編。


 なんか色々とやっていたけれど、個人的には特に見所は無かったかな。


 今日はあれだ。


 珍しい事に、我が子からの呼び掛けがあった。


 私から呼び掛ける事はあっても、声を掛けられる事は中々無いからこういうのは新鮮で良いね。


「…お久し振りです——よ」


 久々の登場、イーラ君だね。


 彼——否、彼女・・は中々優秀な良い子だ。


 そんな愛しい子からの呼び掛けだ、無碍には出来ないというものだよ。


 私が耳を傾けていると感じ取ったのか、イーラ君は言葉を続ける。


「事の全ては、主の思い描いた進んでおります」


 ああ、そうだね。


 お陰で気分は上々だ。


 最近出来の悪い子が一人消えたが、それすらも私の気分を害する要因にはなり得ない。


 全ては順調——というより、もう私の計画は完遂している。


 彼女の働きもあり、もう六神側に勝ち目は無くなったからね。


「…この世界が完全に主のものになる日も近い。全てが終わった後の事を伺いたく、声を掛けさせて頂きました」


 終わった後の事…?


 ふむ…何か心配事でも?


の処遇について」


 彼…? ああ、彼ね。


 処遇も何もという話だが…。


 何故、今になってそんな事を?


「全てを終えた後、は用済みになる筈…その折に——僕に頂けないでしょうか」


 …は? む? え?


 頂けないでしょうかって…君、彼が欲しいのかい?


「……はい」


 えぇ…まさかの肯定…。


 君がそんなに執着するなんて珍しいね。


 一応聞くけど、なんで?


「…」


 沈黙——答えたくないという事かな?


 君、そんな子だったっけ?


 彼はそんなに魅力的かい?


「…」


 また沈黙か。


 ふむ、君が私の問いに答えないなど、これまでなかっただろう。


 え、彼とそんな親密になるエピソードとかあったっけ?


 でも君に限って絆されたなんて事はまずあり得ないだろうし…


 …あ。


 分かった、《権能・・》の影響だろう。


 飲み込むつもりが逆に飲まれた——違うかい?


「…」


 …沈黙は肯定という言葉を知っているかな?


 イーラ君、君は優秀だ。


 最も存在が私に近く、最も私の思想を理解し、最も私の意に沿って動いてくれている。


 そんな君であれば、私も寛容になるというものだ。


 だがね、それでも…彼は駄目だ。


 彼は私が想定していた以上に人間・・だったよ。


 やはり下等生物人間は駄目だね。


 短命故か、そもそも生物的なレベルが低いのか、その行動原理は酷く浅はかで愚かだ。


 実力に関しては評価しているが、それ以外は駄目駄目だよ。


 私の世界に人間は要らない——無論彼もね。


 そして君が、そんな愚かな生物人間に染まる事を私は善しとしない。


 言っている意味は分かるね?


「…」


 返事が聞こえないよ、返事が。


「…はい」


 良い子だ。


 …私もね、これでも彼には期待していたんだ。


 だが彼は頑固者、その本質は変わらなかった。


 君でも変えられなかったのだろう。


「…」


 責めている訳ではないよ。


 だが、私でも君でも、彼の矯正は出来なかったんだ。


 だからこれは、仕方のない事だ。


 ああ、下手な行動は起こさない様にね。


 幾ら君でも、今の彼・・・には気取られるだろう。


「…理解しています」


 …ふむ。


 《百獣の魔王ルクスリア》は、《黒き者》アレイスター・レイにより滅ぼされた。


 《血染の魔王アヴァリーティア》は、《白の御子》アーサー・ロワにより滅ぼされた。


 《深緑の魔王インヴィディア》は、《黒き者》アレイスター・レイにより滅ぼされた。


 《金鉱の魔王グラ》は、《黒き者》アレイスター・レイと《半竜の魔女》ミネルヴァ・ハイ=ドーラにより滅ぼされた。


 《循環の魔王アケーディア》は、《半竜の魔女》ミネルヴァ・ハイ=ドーラと《森人の忌子》リリララ・ル=シエルにより打ち倒された。


 《煉獄の魔王スペルビア》は、《蒼の魔人》エリファス・スフィアと《大地の竜王》シュー・アヴァロにより封印された。


 …そして君——《共感の魔王イーラ》は《黒き者》アレイスター・レイと《白の御子》アーサー・ロワにより打ち倒され、封印された。


 つい千年前この間の話だ、覚えているだろう?


「…はい」


 七柱居た《魔王》も、残りは実質的に君だけになった。


 だが、何も問題は無い。


 何故なら君は、他の不出来で愚かな子達とは違い優秀だ。


 優秀で仕事が出来る君だ、下手な事はしないでくれるね?


 君は優秀だが、いつも肝心な所でドジを踏む。


 それで千年前も殺され、封印されただろう。


 だから——…おや?



 私の声が彼女に届いていない…?


 ……。


 どうやら、イーラ君に会話を切られてしまったらしい。


 本当に、どうしてしまったのだろうね。


 昔はこんな子ではなかったというのに。


 説教を嫌っての話を聞かない——まるで何処かの誰かさんの様ではないか。


 随分との影響を受けているらしい。



 イーラ君——君、本当に大丈夫だろうね?




*お知らせ*

リピート・ヴァイスの設定資料集である「ヴァイス・プロパティ」を更新していますので、良ければご覧下さいませ。

https://kakuyomu.jp/works/16817330664063017508


サポーター様用に投稿していたおまけSSを六章完結記念に本編の方で差し込んでおります。こちらも良ければご覧下さいませ。

*69#/おまけSS…魔王のお風呂

https://kakuyomu.jp/works/16817330651994399896/episodes/16818093076362583884

*77#/おまけSS…桜髪の騎士

https://kakuyomu.jp/works/16817330651994399896/episodes/16818093076362718072

*77#/おまけSS…荊の令嬢の介抱

https://kakuyomu.jp/works/16817330651994399896/episodes/16818093076362941645

*83#/おまけSS…巻き込まれた姫巫女

https://kakuyomu.jp/works/16817330651994399896/episodes/16818093076362873621

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