第27話:みんなで遊園地!ー春の陣ー ③


◇ ◆ ◇ ◆ ◇


 詩花・茜チームと夕菜・赤弥チームは既に合流をしていた。赤弥はスマホを見ながら口を開いた。

「翔に連絡つかねぇな~」


12:22 赤弥[ 翔今どこ? ]


 10分程前に送った連絡は未だに既読が付いていないままの為気になってきた。その横で夕菜は小声でブツブツと言っていた。

「見つけたら蹴る見つけたら蹴る見つけたら蹴る見つけたら蹴る見つけたら蹴る見つけたら蹴る見つけたら蹴る見つけたr………」


 その光景に茜と詩花、赤弥は顔を真っ青にして目を逸らし、見てないフリをした。

「と、とりあえず探しに行こうか…」

 赤弥がそう言うと3人は同意した。


◇ ◆ ◇ ◆ ◇


 同時刻 翔・凛音チーム―。


「翔君のも美味しそうだね」

 凛音は羨ましそうに自分の抹茶クレープを持ちながら翔に語りかけた。

「あ、ひ…ひと口いる?」

「ありがとうっ」

 気遣いにお礼を言った凛音は翔のクレープにかぶりついた。


「美味しいねっ!おっきいし、甘くて!あ、ぼくのも食べる?」

「(違う意味に聞こえる俺は死にたい)」

「じ、じゃあひと口だけ…」


 そう言って凛音の抹茶クレープをひと口噛んだ瞬間だった。


「…見ーーーつけ…た…」

 薄くて細い声が聞こえた翔は振り返ると顔を真っ黒に曇らせた夕菜が翔の肩に手を置いて仁王立ちしていた。


「なばっっ」

 翔はモブの様な悲鳴をあげると、イチゴクレープを凛音に渡して立ち上がり5メートルほど離れた。

「写真…写真……」

 そう呟きながら少しずつ翔に歩み寄っている。

「ひ…ひぇっゾンビ…」

 翔はそう言いながら逃げて行った。それを全力で夕菜は追いかけて行った。


「おりおんーっ!何食べてんのーっ!」

 夕菜と翔のやり取りを見ながら笑っている凛音に茜は話しかけた。

「クレープだよ!松本さんも食べる?」

「えーーっ!食べるーっ!!こっちもーーらいっ!」


 茜はそう言うと翔のイチゴクレープを凛音から奪い取り食べた。

「あ…それ…」

 凛音が止めに入ろうとした頃にはクレープの半分近くは茜の口の中にインしていた。


「「混沌カオスだ……」」

 詩花と赤弥はその光景を見て同時に呟いた。



◇ ◆ 5分後 ◆ ◇


 翔と夕菜は疲弊しきった状態で赤弥たちの場所に戻ってきた。

「…はぁ……はぁ…ナイスランだったよ……白沙流さん…」

「……はぁ………はぁ…う、うっさいわね…空本も良い走りだったわ」

 2人はそう言うとハイタッチをした。


「「友情が芽生えている…」」

 詩花と赤弥は同時に呟いた。


「あ、あれ俺のクレープは?」

 翔がその場にいた全員に聞くと誰も口を開かない為、1人1人順番に尋問を始めた。


赤弥「俺は青葉に電話入れてたから知らないぞ。その証拠にもうすぐ青葉が到着するよ」

 そう言うと、同じタイミングで青葉・風愛チームが帰ってきた。


凛音「えっと……翔君から預かったけど…気が付いたら手から消えてたというか…」

 翔は凛音に甘い為、許された。


夕菜「あたしは空本あなたを追いかけてたわよ」

 それは事実。証拠は疲労。


詩花「皆の写真撮ってたから知らないかな」

 証拠にスマホを見せてきて、本当にその時の写真が写っていた。


茜「イチゴ美味しかったーっ!」

 犯人。


 翔は茜の顔をジッと見つめた。茜は焦って顔を逸らすが、翔は見続ける。

「ご、ごめん」

 茜はあっさりと非を認めて謝罪した。


「おーーい」

 遠くから声が聞こえ、振り向くと1人の男がここの遊園地のキャラクターの眼鏡やカチューシャ、パーカーを身に着けて右手にチュロス、左手にお土産の袋を持って立っていた。


「誰?」

 全員が口を揃えて言った。

「いや、晴太だよ晴太!金山晴太!」

 晴太はそう言って眼鏡を外した。


「誰…?」

 またもや全員が口を揃えて言った。

「一緒に来たのに……」

 晴太はそう言って膝から崩れ落ちた。


「お前そんなキャラだっけ?」

 翔がツッコミを入れた。


◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 そこからは集合した赤弥・翔・凛音・青葉・茜・夕菜・詩花・風愛でジェットコースターやカフェ、お化け屋敷などを遊んでまわった。


 17時―。

「そろそろいい時間ね~」

 夕菜は目いっぱい伸びをしながら夕陽を眺めて言った。

「楽しい時間は早いよね」

 詩花も伸びをしながら言った。

「「「確かに」」」

 茜、赤弥、晴太、青葉も伸びをしながら言った。


「何この伸びの連鎖」

 翔はそう言いながら伸びをした。


 するとエントランスの逆方面にふらふらと歩いて行く風愛の姿が見えた。

「風愛ちゃーーんっ!」

 茜が思い切り呼ぶが声は届いてない様子だった。

 すると、青葉が風船ガムを膨らませながら風愛の近くまで駆け寄ると手を引っ張って皆の元へ連れて来た。

「ありがとう~ございま~す」


「ほーー」(翔)

「へぇ…」(赤弥)

「わお」(凛音)

「わぁ」(詩花)

「…あら」(夕菜)

「ほうほう」(茜)

 5人はそれぞれそのような反応を見せた。


 しかし青葉も風愛も照れてない様子で不思議そうにその反応を見届けるだけだった。

「「「「「(慣れてる……)」」」」」

 5人は同時にそう思った時、風愛は不思議そうに首を傾げていた。


◇ ◆ ◇ ◆ ◇


 夕焼けに包まれながら7人は遊園地から出て行った。


「…なんか忘れてるような……」

 翔が腕を組みながら目を瞑って考えていた。

「…俺も…」

 赤弥がそれに賛同する。

 それに続いて、風愛を除く全員が賛同していった。


「ま、楽しかったからいっかー!」

 茜がそう言うと皆はそうだねと各々呟いて、茜色に染まっている空の下を歩いて帰って行った。



◇ ◆ ◇ ◆ ◇


――同時刻 茶緑・麗羅チーム――。

「皆どこ行ったのかしら?」

 麗羅はキョロキョロと周りを見ながら呟いた。風愛に現在地を聞くために連絡をしていたが、彼女は超マイペースの為返事は返ってきてないなかった。


「…2人は嫌ですか?」

 眼鏡をクイッとしながら、茶緑がそう言うと麗羅は頬を少し赤らめて首を振った。

「…そ、そんなことはない…」


「せっかくならディナーも頂こう。ご馳走するよ」

 茶緑の言葉に麗羅は身体をビクビクと震わせながら頷いた。


 

「「しかし……」」


「何か忘れてるような…」

「何か忘れてる気がするわね…」


 2人は同時にそう呟くと、茜色に染まる園内を歩いて行った。




 夜 21時 空本 翔宅―。

「あ、茶緑たちだ」


 自室で本を読んでる時にふと思い出したが、茶緑に連絡はしなかった。




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前を向いて歩くのがヘタな二人の話。 雨月 揺 @ametsukiYuragi

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