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 グギャアアア! と下卑た断末魔の声を上げ、扉が緑色の血と体液を吹き出し、ぐったりとする。蹴り破りたくもなかったので切り付けてしまったが正解だったようだ。

 扉だった怪物の隙間から覗き込むと……そこは1階……触手のボスがいた所ではなく入ってすぐの異形の神々の像が並んでいたフロアーとそっくりだった。

 像が並んでいる所も同じだが……奥には階段はなく、異形の柱が乱立した、どこか祭壇の様な感じだった。

 そして、その前には……


 「ウェンティ……?」

 祭壇の前にいるのは、先程俺達の前から姿を消したウェンティだった。彼女はこちらを興味無さげにちらりと見た後、祭壇の上に浮かんでいる……ネックレスの様なものに手をかけようとしている。

 あれを手にさせたらやばい……と感じたが、俺の技能を使っても間に合いそうにない……彼女はそれを手に取り……


 「……」

 「……ふ、ふふふっ……」

 「……成功、成功したわ……ふふっ、ふははははっ!!」


 何だ? ……ウェンティの声に似ているが……ウェンティじゃないっ! そもそも彼女は無表情のまま笑ってもいない!

 「だ……誰だ? 「お前」は……」

 俺の問いかけにネックレスを手にしたウェンティはゆっくりとこちらを振り向き……。


 「????? ……嗚呼、貴方がたが「これ」をこちらまで運んでくださったのね……ありがとう……」

 「「これ」ですって……?」ネメシスも困惑気味に問いかける。

 「並の冒険者ではこれを連れてきた後この階の「餌」になる筈でしたのに……まさか生き残って此処まで来るとは……上手く「銀級以上の冒険者」を引き当てたのかしら?」

 「何だと?」

 「そうなると……プランεとなるわね……ふふっ、人と話すなど数年振りだわ、上手く説得出来るかしら……」

 ……どうにも話が噛み合わない……ウェンティじゃなく、その手に持ったネックレスから声が聞こえている気がするが……。


 「……お前は、何者だ?」

 「ええと、確か……ウェンティだったかしら? ふふっ、偶然だろうけど「風の女神」と同じ名前とはね?」

 「ち、違う、今喋っているお前の方だ……」

 「うふふ、今はこの様な無機物の中から失礼しますわ……ええと、最近は何と名乗ったかしら……失礼、まだ私も記憶が曖昧でしてね……嗚呼、そうだ」


 そのネックレスが名乗る。


 「私の名はナイア、ですわ。短い間でしょうがお見知りおきを」

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スキル「緊急回避」で無敵スローライフ あるまん @aruman00

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