第5話
スライム三兄弟
ーーー時は中世ーーー
フェイクヘッドに続き、サラマンダーという新生魔王軍幹部二人を倒す快挙を成し遂げたスライム三兄弟。今日はどこへ向かうのか・・・。
そうスラ「今日は、ここに向かうんだよ。」
そうスラは、全国見取り図を取り出し、人間軍の王都の真北にある、エアロック鉱山を指差した。
はるスラ「な、今日も戦うのぉ〜?」
わたスラ「連日の無茶で満身創痍疲労困憊、たまには休息を取ろうよ〜。」
そうスラ「うーん、確かに無茶がすぎるなぁ。なるべく早く殲滅したいところなんだけど。」
わたスラ「も、もう無理だよ!この状態で戦えって・・・。」
はるスラ「意気込んでたけど、サラマンダーでわかったよ。ちょい実力不足だねこりゃ。」
そうスラ「うーん、能力強化もしないと無理かなぁ〜。」
わたスラ「だけど、鍛えまくったせいで限界が見えてきちゃってるよ?」
はるスラ「そうちゃんの毒は幹部にも通用するからいいけど、僕たちはまだまだ強さが足りないんだよ。」
わたスラ「ど、どうすればいいんだ!」
はるスラ「楽観的に見ると、今まで二人も倒せたんだから、次も行ける!て思った方がいいかな?」
そうスラ「いやそうなんだけど、実は弱い順に回ってたんだよ。」
わたスラ「な、なんだってぇ〜!?」
はるスラ「フェイクヘッドとサラマンダーは最弱級ってこと?」
そうスラ「いや、相性とかも加味して考えたから、やりやすいって・・・。」
わたスラ「ま、ますます絶望的だぁ。」
はるスラ「うわぁぁぁぁ。」
そうスラ「そこで提案があるんだけどさ。」
わたスラ「なんだいなんだい?」
そうスラ「お兄ちゃんたち二人は、確かまだ二つ目の系統を獲得していないでしょ?」
はるスラ「え、全員そうじゃないの?」
そうスラ「僕は草と透明化をもってるじゃないか!」
わたスラ「確かに、言われてみれば二つ目を持ってないな。」
はるスラ「おお、希望の光が・・・!」
そうスラ「恐らくだけど、もう相性がいい幹部がいないから、二つ目の系統を獲得しないとなすすべもなく死んじゃうよ?」
わたスラ「ゲゲゲのゲー。」
はるスラ「そ、そんなぁ!」
そうスラ「だから、相性は合っているけど汎用性のあるものにしないといけないんだ!」
わたスラ「厳しい・・・!」
そうスラ「一切のミスが許されない、取り返しのつかない要素なんだ!」
はるスラ「何ぃ・・・。」
そうスラ「まあ、もう候補は絞ってあるんだけど、お兄ちゃんたちが気にいるかどうかが心配なんだよな〜。」
わたスラ「おやおや、さすがそうた。じゃあ、候補ってなんだい?」
そうスラ「えーと、電気・水・成長・ダイヤモンドかな?」
わたスラ「ダイヤに決まっとるやないか〜!」
そうスラ「だ、だよなぁ・・・。能力の強化かもしれないから、まだまだ系統習得のチャンスはあるしね。」
はるスラ「ううーん、特に気にいるのがないなぁ。」
そうスラ「でも、系統を二つ入手しないと勝てないよ。」
はるスラ「成長って何?」
そうスラ「ん?能力強化とか、植物成長とかそんな感じだよ。」
はるスラ「明らかにマグマ能力と相性が悪いね。」
そうスラ「そんなことはないけど、気に入ってないみたいだね。」
はるスラ「水もなんだかおかしくない?」
そうスラ「え?はるにいちゃんがよくやってる、マグマスプラッシュみたいなもんだよ。」
はるスラ「それだー!」
そうスラ「よかったぁ・・・。じゃ、早速強化の現場に向かおう!」
わたスラ「場所は?」
そうスラ「ここだよん!」
そうスラは、カモーン草原を指差した。
そうスラ「うーん、ここは情報が入ってないから、不確定要素が多くて嫌なんだけど、今あげた候補の系統がまとめて習得できるのがここしかないから、しょうがない。」
わたスラ「情報が入ってないって、幹部がいるかもってこと?」
はるスラ「幹部倒すための能力強化の現場で幹部にやられるとかさいっこーにカッコ悪いぞ!」
そうスラ「しょうがないでしょ、ここしかないんだから!」
わたスラ「へいへい。」
はるスラ「じゃあ、出発!」
そうスラ「この、ウェルカムロードを通っていけばいいんだよ。」
わたスラ「カモン平原につけるの?」
そうスラ「なんだかみんな、最近僕の知力を疑ってない?」
わたスラ「じゃあ信じるけど・・。」
はるスラ「ここをず〜っと行けばいいんでしょ?余裕じゃん。」
そうスラ「本当はここを通りたくなかったんだけどね。」
わたスラ「へ?なぜに?」
そうスラ「今は魔物の街並みだけど、ここから10kmほど行くと人間地帯があるんだ。そこを通ると、高確率で交戦になると思うんだよね。」
はるスラ「はぁ・・・。消耗するじゃん。」
わたスラ「しょうがない。カモーン平原に行くにはこれしかないんでしょ?」
そうスラ「裏道があるけど、新生魔王軍の縄張りだよ。」
はるスラ「全力却下。」
わたスラ「じゃあ、ここから10kmは何も起きないってこと?」
そうスラ「だね。」
スライムは何せ足がめちゃくちゃのろいので、10km進むのに1日かかってしまうのだ(宿屋に止まるとそれくらい)。そのため、三兄弟は宿屋に泊まることにした。大体ウェルカムロードは人間用に作られたが、五十年前の大戦で、魔王軍が全力で、半分を奪い取ったため、足が遅い魔物にも使われているわけなのだ。
わたスラ「五十年前の大戦?」
そうスラ「うん、ウェルカムウォーズって言うんだけど、魔王軍対人間軍で、50日間戦争が続いたんだ。人間軍の少年勇者が若き大将で、熟練の魔法使いが副将だった。どちらもめちゃくちゃ強くて、魔王軍の軍勢が押されていたんだけど、一人の十二将が副将を討ち取って、そこから流れが変わっていったんだって。」
はるスラ「その少年勇者はどうなったの?」
そうスラ「うげぇ。それがね・・・。」
はるスラ「死刑!?」
そうスラ「いや、家族を人質に取って、自分の命か家族を選ばせたんだ。」
はるスラ「ギロチン台で!?」
わたスラ「いやそんなもんないだろ、魔王軍に。」
そうスラ「まあね。とにかくエグすぎて、人間軍の歴史には載ってないくらいだよ。」
わたスラ「エグすぎだろ。」
はるスラ「少年斬首って・・・。」
そうスラ「魔王様は止めようとしたらしいんだけどね。」
はるスラ「じゃあ、その十二将がやったの?」
そうスラ「正解。」
わたスラ「知ってた・・・」
そうスラ「首狩鬼っていう、昔滅んだ『妖怪』っていう魔族の類らしいよ。」
わたスラ「流石に知ってるけど(教科書みたいなのに書いてあった)、妖怪が滅んだから今の魔族があるんでしょ?」
はるスラ「へえ、末裔な訳か。」
そうスラ「各地に点々といて、魔族への恨みから人間軍に入った奴もいるくらいらしいしいね。」
はるスラ「ただ、僕たちは気にする必要なくない?」
そうスラ「しまった、だいぶ話が脱線してた!」
わたスラ「今日は遅いし、宿屋に泊まるか。」
はるスラ「お金はどうするというんだい?」
わたスラ「こうするというのさ!おーい、ペリカンバード!」
またまた、ペリカンバードが頭上から急降下してきた。この展開はもう慣れっこだ。
ペリカンバード「るせー!十二将の片腕ともあろうこの俺様を、いちいち呼ぶんじゃねぇ!」
はるスラ「片腕じゃねぇだろ・・・。」
そうスラ「いや、魔王軍偵察隊の総司令だけあって、魔王軍の重要戦力だよ。」
ペリカンバード^「宿代よこせだぁ!?そんなん持ってないテメェらが悪い!」
わたスラ「俺たち、立て続けに幹部と戦って疲れてるんだけど。」
ペリカンバード「何ぃ!?幹部と!?そりゃすげぇ。でも金やんない。」
はるスラ「しょうがないな。通行人からスるか。」
そうスラ「ちょ、そこまでは堕落してないよぉ!」
ペリカンバード「わーたわーた、ほら金だ!」
わたスラ「やった、金だー!」
ペリカンバード「言っとくけど利息つくかんな!『貸す』んだからな!」
はるスラ「せっこ・・・。」
そうスラ「偵察隊総司令ともあろうものが・・・。」
ペリカンバード「うわあああ!やめろやめろ!俺の評判が落ちる!」
結局三兄弟は、宿屋に泊まれ、借金せずに済んだ。宿屋は大分高いため、50Gも使う。これにはペリカンバードも涙目であった。そして翌日、事件は起きた・・・。
スライム三兄弟 @me-puru
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