第4話

スライム三兄弟

ーーーー時は中世ーーーー

新生魔王軍の幹部を倒したスライム三兄弟は、今度の目的地に向かっていた。火山である。

わたスラ「こ、こんな暑いところに幹部がいるわけないじゃないか。」

そうスラ「でも、噂で聞いたんだから本当だよ!」

はるスラ「マグマも吸収できるし一挙両得じゃない?」

わたスラ「うるせぇ!マグマと一体化しているやつが言えることじゃないんだぁぁ〜!」

はるスラ「大体そうちゃん、噂を信じすぎじゃない?大丈夫なの?」

そうスラ「大丈夫だよ。旅の噂ほど信用できる話はないから。」

はるスラ「まあそう言い切るのなら本当なのだろうと信じておくよ。」

わたスラ「でも、この火山を登るのは無謀なんじゃ・・・。」

そうスラ「う〜ん、温泉があれくらいの暑さだったからいけると思ったけど、浅はかだったかもな。」

はるスラ「僕は余裕だよ!」

わたスラ「うっせ黙れ。」

そうスラ「暑い暑い〜!」

わたスラ「まずいなぁ。こりゃ暑いを通り越して熱いになってるぞ。」

はるスラ「なるほど、こんなとこにくるやつなんていないから、幹部がいるわけね。」

そうスラ「にしても暑すぎだね。どこかで休憩しないと死んじゃうよ。」

わたスラ「異議なし。」

はるスラ「しかしまあ、なんだか何もないね。」

そうスラ「ただ広大とした火山なのがいやらしいよ。」

はるスラ「あっ、あそこに洞窟がある!」

確かに、わたスラの指差した方向には洞窟が見える。かなり奥が深そうで、避暑地にはなりそうだ。

わたスラ「やった、これでこの暑さからちょびっと逃げられる・・・。」

はるスラ「ええ?別に僕はここにいても何も感じないけど・・・。」

そうスラ「はるにいちゃん、すまないけどここは休ませてくれ・・・、クッタクタだよ。」

わたスラ「あああ、涼しい〜。」

そうスラ「それでもサウナくらい暑いんだけどね。温度感覚が狂っちゃうよ。」

はるスラ「大体魔王軍は領土が広すぎるから、寒暖の差が大きいんだよなぁ。」

そうスラ「氷の地方とかもあるらいしいから、気をつけないとね。」

わたスラ「じゃあそっち行けばよかったんじゃないの?」

そうスラ「幹部がいるって保証はないからね。噂に出た、このメラメラマウンテンに登ることにしたんだ。」

はるスラ「無茶だと思ったけどな〜。」

そうスラ「よし、休憩終わり!また登るよ〜!」

わたスラ「はぁぁ!?まだ五分くらいしか経ってないよ!」

そうスラ「うーん、まあそれもそうなんだけど、あまりに時間が経つと幹部がどこかへ行ってしまう恐れもあるから・・・。」

わたスラ「そ、そんなぁ。」

そうスラ「わたるにいちゃん、ここは我慢して登ろう。」

はるスラ「わたる、こんなところでへこたれてていいのか!?」

わたスラ「ひいいいいいいい・・・。」

一行は再び山を登ることにした。

わたスラ「アチアチアチアチアチアチ!」

はるスラ「うるさいなぁ、気が散るから静かにしてくれよ!」

そうスラ「さっきから熱い暑いばっか言ってるじゃないか!」

しばらく三人は、無口で行くことにしたが、早々にわたスラがリタイアした。

わたスラ「だめだぁ。涼しくなる呪文とかないの?」

はるスラ「ないの。とっとと先に進んだ方が早いよ!」

そうスラ「はるにいちゃん、僕ももうだめだぁ。」

わたスラ「夜になるまで待ったらいいんじゃない?」

はるスラ「おお、わたるにしては名案!」

わたスラ「はっ、てめ・・・。」

そうスラ「そうだね、夜になったら少しは涼しくなるかもしれないし。」

わたスラ「おお、幸い小空洞があるから、あそこで夜まで待とう!」

はるスラ「でも、夜になったら僕が寒いんじゃ・・・。」

そうスラ「今まで楽してきたんだからしょうがないでしょ。」

はるスラ「・・・、時間が経つとどこかへ幹部が逝ってしまうと言っていたのは誰でしたっけ?」

そうスラ「はいはい、すみませんでしたよ!」

はるスラ「なんだなんだ?やるのか!?」

わたスラ「二人ともうるさい。弟だからって許さないぞ。大体こんなに暑くて疲れ果てた体で、患部に勝てるわけないだろ!」

はるスラ「確かに。」

そうスラ「確かに。」

そういうわけでうまく纏まったスライム三兄弟は、小空洞で夜まで休むことにした。

そして日が暮れた・・・。

そうスラ「よし、夜になって涼しくなったね。」

わたスラ「やっぱり、夜になってから行かないと焼け死んじゃうよ。」

はるスラ「ぼ、僕は寒くて死にそうだよ。」

わたスラ「いやいや、じゃあスライム用のモフモフコートでも買えばいいじゃないか。」

はるスラ「そ、そうする!」

なんとはるスラは山を下山して、温泉のお土産屋さんでもふもふコートを買ってきたのだ。もちろん、スライム用の。

はるスラ「ああ、あったけぇ・・・。」

わたスラ「よし、これで疲れはないな。傾斜がキツくなってきたからゆっくり行くぞ。」

そうスラ「ん?徐々に暑くなっている気が・・・。」

わたスラ「確かに、すこーしずつ暑くなってきてるな。」

はるスラ「やっぱり頂上だからかな?」

そうスラ「よし、火口付近まで来たってことか!」

わたスラ「そのもふもふコート、燃えちゃわないか?」

はるスラ「ん?多分大丈夫。火山の素材で作ってあるって言ってたから。」

わたスラ「そういう売り文句を信じていいのか?」

そうスラ「まあいいけど。」

すると、なんと徐々に明るくなってきている。これは火山付近に近づいている印だ。

わたスラ「あわわわわ、ついに直接対決か!」

はるスラ「フェイクヘッドみたいに強くないといいけどな。」

そうスラ「クイズ対決とかだったら勝ち目はあるよ。」

わたスラ「なんでそんな控えめなの・・・。フェイクヘッドに勝ったじゃん。」

はるスラ「まあそうだけど、たいていのRPGでは徐々に強くなってくるのが基本なんじゃ・・。」

そうスラ「うん、そうだよぉ。」

わたスラ「ああ、つまり大抵のストーリーみたいにフェイクヘッド幹部最弱だったってことね。」

はるスラ「そ、そうだよ。」

そうスラ「僕らの実力がまずいかも。」

わたスラ「うわ、どんどん暑くなってきた。」

そうスラ「夜じゃなかったら本当に焼け死んでたね。」

はるスラ「むむ?なんだか誰かいるぞ。」

なんと、黒い人影が見える。ここは火口だから、幹部に違いない。

???「ん、誰だお前ら?」

わたスラ「誰だお前は!」

???「ああ、なんだスライムか。」

はるスラ「お前は新生魔王軍の幹部か?」

???「いーや、俺はただの旅人だ。」

そうスラ「へ?」

???「いや、ここら辺に怪獣の卵があるって聞いたからきたんだが・・・。」

わたスラ「あんたただの旅人なのか。」

旅人「ああ、新生魔王軍の幹部の卵があるらしくて来たんだ。」

はるスラ「幹部の卵?」

そうスラ「あんた幹部のこと知ってんのか?」

旅人「情報屋で聞いた。」

わたスラ「教えるんだ。」

旅人「サラマンダーってやつだ。なんだか炎のトカゲみたいなやつらしいぞ。新生魔王軍の幹部の中ではとても小さいらしいな。」

はるスラ「な、炎?」

旅人「あったあった!これがサラマンダーの卵だ!」

旅人の手には、うずらの卵ほど小さい卵が握られていた。

そうスラ「その卵は?」

旅人「これを売れば大儲けできると言われるんだ!」

はるスラ「へ?どのくらいになるんだ?」

旅人「まあ1000コインは降らないだろうな。」

わたスラ「何ぃぃぃぃぃ〜!?」

旅人「だから取りに来たんだよ。」

そうスラ「でも、サラマンダーが怒らないの?」

旅人「じゃ、とっととずらかるぜ!」

旅人はそう言って火山を降りて行ったが、数十秒後、悲鳴が聞こえてきた。

巨大なトカゲみたいなのが、炎を纏いながら、卵を抱えて出てきた。

???「許さん!私の卵を売ろうとなど・・・!」

はるスラ「あ、お前がチビのサラマンダーか!」

サラマンダー「その通りだ。この火山で卵を温めていたのだ!我が子を売ろうとなど絶対に許さん!」

わたスラ「新生魔王軍になぜ入っているんだ?」

サラマンダー「新生魔王軍は、私の卵に手を出さないと約束したのだ。」

そうスラ「ふん、まあいい、お前も幹部なんだから倒さないといけない敵なんだ!」

わたスラ「こいつ、結構強そうだぞ!」

はるスラ「でも、フェイクヘッドみたいに、能力がややこしくないからやりやすいね!」

サラマンダー「ファイアーブーメラン!」

サラマンダーは、体に宿す炎を自由自在に操れるみたいだ。

わたスラ「な、炎がブーメランみたいに行ったり来たりするぞ!?」

はるスラ「数が増えるとカオスになる!早めに決めないと!」

そうスラ「確かにそうだね。毒針でも効かない可能性はなくはないから、気を抜かずに行こう!」

わたスラ(毒が熱で蒸発なんて、考えたくもないぜ。)

はるスラ「マグマアタック!」

サラマンダー「ファイアーサーカス!」

大量の炎の輪がぐるぐる回って、はるスラに迫ってきたのだ。ジャンプで次々と間を飛び抜けるしかないようだ。

はるスラ「くそー!」

わたスラ「メタルタックル!」

サラマンダー「その体で私に触れることができるかな?」

わたスラ「アチチチチチ!」

そうスラ「そうか、金属は熱を通しやすいから、やけにダメージを喰らうわけか!」

はるスラ「くっ、この炎技強力だ!」

サラマンダー「ファイアブーメラン!グランドファイアー!」

三兄弟がファイアブーメランを回避した直後、地面が炎に包まれた。

サラマンダー「終わりだ!」

わたスラ「あ、熱い〜!」

そうスラ(くそ、熱いけど声を上げたらバレる!)

はるスラ「なんのこれしき!」

サラマンダー「小癪な!ファイアショット!」

はるスラ「吸収!」

サラマンダー「ファイアサークル!」

はるスラ「な、炎の檻か!だが脱出!」

わたスラ「うーん、このメタルを一時的に捨てればいいのかもしれないけど、そうするとタックルでやられてしまう・・・。だが仕方あるまい!」

サラマンダー「死ににきたか!ファイアショット!」

わたスラ「へっ、こんなの熱くも何ともないぜ!」

サラマンダー「な、金属の体を捨てて熱に対抗を得たか!」

はるスラ「おいどこ見てやがる!マグマショットぉ!」

サラマンダー「その程度のマグマが効くはずがないだろうが!」

わたスラ「はると!ちょっと耳かせ!」

サラマンダー「何をするつもりだ?」

はるスラ「な、そんなことができるの!?」

わたスラ「これが成功したら、そうたの一撃必殺の攻撃が通る!」

はるスラ「確かに、これしかない!このままだとジリ貧になって死んじゃうよ!」

サラマンダー「何か思いついたようだが、無駄だな!足掻きはよせ!」

はるスラ「突っ込めー!」

サラマンダー「ファイアブラスター!」

炎が、マシンガンのように飛んできて、次々とはるスラに当たっていくが、はるスラは涼しい顔。

はるスラ「ふふふ。マグマを吸収した僕に、効くとおも・・・っ、あちぃ!」

サラマンダー「ははは、二秒のフラグ回収だったな!しねぇ!ファイアブラスター!」

わたスラ「うわああああああー!」

サラマンダー「な、なんちゅう馬鹿でかい声!」

はるスラ「吸収ぅ〜!」

サラマンダー「き、貴様、私の炎を吸収する気か!?」

はるスラ「吸収!」

わたスラ「吸収〜!熱いけど!」

サラマンダー「や、やめろ!」

はるスラ「わたる、お前熱さで死ぬぞ!?」

わたスラ「いや、吸収した瞬間に排出してるから多分大丈夫!」

はるスラ「よし、吸収!」

サラマンダー「やめろ貴様ら〜!」

わたスラ「こうすれば、お前の熱はなくなる!」

サラマンダー「くそ、死ねスライムども〜!エンドレスファイア!」

馬鹿でかい火球が、終わりなき連続攻撃を仕掛けてくる。一秒に一回生み出されるため、恐ろしい連撃となる。サラマンダーの奥の手だが、これを出したということは、もう他にわたスラはともかく、はるスラを止める手段がなかったということだ。

わたスラ「うわあああー!退避〜!」

はるスラ「緊急回避〜!」

サラマンダー「ここで決める!」

わたスラ「耐えれば俺たちの勝ちだ〜!」

はるスラ「ど、どうやって凌ぐんだよ!この連撃、吸収する暇ないぞ!?」

わたスラ「マグマボディでも無理か!?」

はるスラ「無理だ!耐えられずに死ぬ!」

わたスラ「はっ、一つだけ耐える手段があった!」

はるスラ「嘘だろ!?」

わたスラ「やるしかない!」

はるスラ「まさか、わたる・・・?」

わたスラ「吸収〜!」

はるスラ「だから、いちいち吸収してると間に合わないよ!?」

わたスラ「排出ー!」

なんとわたスラは、火球を火球にぶつけ、打ち消した。

わたスラ「お、お前もやれー!人手が足りない!」

はるスラ「よおし、吸収ー!排出ー!」

そして、連撃が終わった五分後・・・。

サラマンダー「どうだ!?」

わたスラ「た、」

はるスラ「耐え切ってやったぜー!」

サラマンダー「んな馬鹿なぁー!」

わたスラ「吸収ー!」

はるスラ「吸収ー!」

サラマンダー「無駄だ!」

サラマンダーは、ペシっと尻尾でわたスラを吹き飛ばしてしまった。

わたスラ「グヘェ。」

サラマンダー「はははは!やはりこうすればよかったのだ!」

はるスラ「吸収ー!」

サラマンダーは、その時異常に気づいた。

サラマンダー(おかしい、炎の減りが早すぎる!)

そうスラが、透明化しながら吸収していたのだ。

そうスラ(よし、このタイミングだ!)

サラマンダー「死ねぇ!」

はるスラ「ぐはっ。」

そうスラ「毒針!」

ブスっ。間違いなく刺さった。体内の炎が少なくなっていたので、毒は問題なく効いた。

サラマンダー「な、なんだ!?視界が揺らいで・・・。」

わたスラ「終わりだぁぁ!」

サラマンダー「ゲホッ!」

そうスラ「や、やった、倒した!」

はるスラ「よおし、サラマンダーよ。このはるとが敬意を表し、お前の死骸を吸収してやろう!」

わたスラ「この卵、どうする?」

そうスラ「・・・。売るのはなんだかな・・・。」

わたスラ「だよな・・・、武士の誇りっつーかなんていうか。」

そうスラ「魔王軍に預けて、育てさせてみよう。」

わたスラ「そうだよ!」

はるスラ「次の幹部と行きたいところだが、もうだめだ。」

そうスラ「そうだね、温泉とかで休憩しよう!」

気づけば夜が明けていて、下山は暑くて地獄だった。


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