第2話 魔女の歴史
「メアー、次の町はどこにあるのさー!寒くて消えちまうよ~」
火の精霊イグニスがぶつくさ文句を言っている。
「私だってはやく町でゆっくりしたいわよ!でも、こんな状態じゃすぐに見つけられるわけないでしょ!」
メロニアが言い返すのも当たり前である。
辺り一面が白銀の世界で雪以外なにも見当たらない。そのうえ、吹雪のせいで前方1m先もまともに見えない状態だ。
雨よけの魔法とイグニスの火のおかげで、なんとか冗談を言い合えるぐらいの余裕があるが、この二つがなければ今頃凍死しているだろう。
「正直、今空を飛んでいても何も見えないし、吹雪が収まるまであの中で休まない?」
メロニアが洞窟を指をさしてそういった。
「僕もおなか減ったから休憩したいかも。」
イグニスも同意してくれたようだ。
洞窟の中に吹き込んでいた小枝や木の葉を集め火をつけた。
焚火だ。冷え切った体にはこの暖かさはたまらない。
揺らいでいる火の明かりを見ていると、何か壁に書いてあるのを発見した。
「アグー。何か壁に書いてあるんだけどなにこれ」
ミミズのような文字のような物がビッシリ壁に描かれていた。
私が持っている魔導書の中に、ルーン文字など古代文字が用いられている本などもあるため、見たことある文字であればわかるのだが、この文字はみたことがない。
イグニスは壁を見ながら少し悩んだ後にこう言った。
「恐らくだけど、エトルリア文字じゃないかな~」
メロニアにとっては初めて聞く名前の文字だった。
精霊は話を続ける。
「諸説あるけど、ルーン文字の元になった文字ともいわれている文字で、現在でいうと帝都ロマニアあたりで使われていた文字だね。」
「つまりはこの適当に入った洞窟は古代遺跡的なやつってこと!?」
メロニアはなぜかウキウキしていた。
イグニスは不思議そうにメロニアに問いかけた。
「なんでそんなにメアはそんなにテンション高いのさ。さっきまで寒がって元気全くなかったのに。」
メロニアは目を輝かせて言った。
「アグー博士そんなこと決まっているだろう!古代遺跡といえば…」
「ア、アグー博士?突然なんなの!?なんか気持ち悪い!」
あまりのテンションについていくことができず、イグニスは後ずさりした。
そんなことはお構いなしと、目をギラギラに光らせメロニアは熱弁する。
「古代遺跡といえば?…そう!お宝が眠っているに決まってるでしょ!ダンジョンや遺跡といえば金塊や宝石、古代王朝の大切な品々、ゲームや漫画じゃお約束の話よ!」
「でもメア、この壁に描かれてる内容って…うわぁああ」
壁画の内容を説明しようとしていたイグニスだったが、
お宝に夢中のメロニアに洞窟の奥へと引っ張られていってしまったのだ。
偉大なる王 タルクスの墓なり。
墓荒らしは永遠の責め苦により、自ら死を望むであろう。
壁の文字が揺らいだ火の明かりによって怪しく照らされていた。
亡国の魔女メロニア 藤沢 凪 @huryu0_0
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