亡国の魔女メロニア
藤沢 凪
第1話 魔女メロニア
「メロニアこれが火の魔法よ。」
女性が積みあがった枝に火をつけた。
お母さんの作ってくれた焚火の温かみ。
私の大事な思い出。遠い遠い記憶の一つだ。
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今から約200年前。私の国は亡びた。
当時、まだ幼かった私は戦争の理由も、国があった場所も全く覚えていない。
覚えているのは、横たわった父の開ききった目と母の生暖かい血だけだ。
「おい、メア起きろ。もう昼だぞ!ランチタイムだ!ランチタイム!」
突然の騒がしい声に、目を覚ますメロニア。
私の周りでグルグルまわっている、赤い光が喋っているようだ。
「うるっさいなあ、アグー。今起きるっての!」
文句を言いつつも悪夢にうなされていたことを考えると少し感謝をしていた。
「だったら文句言わないで早く起きろよ~!俺は目覚まし時計じゃねえ!」
赤い光がグチグチと言っていた。
この赤い光の名前は「イグニス」といって火の精霊だ。
私たち魔女は精霊と契約し、精霊の持っているを精霊力を分けてもらうことで、魔法を使っているのだ。
「ほらアグー。お昼ご飯だ。」
手に持っていた、くたびれたパンに青白い光を込めて精霊へ渡した。
さっき言い忘れたけど、魔女は精霊から力を分けてもらっているだけじゃなくて、魔女もマナとよばれる魔力を精霊へ渡しているの。お互いさまってやつね。
「さてと、私も何か作るか」
パチン
メロニアが指を鳴らすと料理道具が目の前に現れた。
「なにを作ろうかな~」
"びっくり節約術!簡単レシピ!"と大きく書かれたレシピ本を片手に少し悩んでから作るメニューを決めた。
選んだ料理は「野菜炒め」。
極々普通のメニューであったが、メロニア特製の野菜炒めは一味違う。
豚肉…そんなものはないからそこら辺の魔獣の肉
にんじん…そんなものはないから野草という名の雑草
キャベツ…そんなものはないから野草という名の(ry
ピーマン…そんなものはないから野草(ry
もやし…私の自家製もやしをたくさん投入
ん?
ほぼ雑草じゃないかって?
仕方ないじゃない!だって!
「私、魔女メロニアは貧乏人なんだもの!」
自分で言っていてとても悲しい気持ちにはなるのだが、仕方のないことでもある。
時代の流れというものはとても残酷で、
今の時代、機械が発達したことで、機械が魔法みたいなことを行える時代だ。
昔のように暗闇で火や光を灯したりするだけで奇跡と言われていた魔法や、あまり当てにならないインチキ占いだけで生活できる時代はとうに終わっている。
「なんともまあ、魔女には生きづらい時代となったものだ…それでも昔と比べれば全然マシだけどね」
苦笑いをしながらメロニアはそう言った。
もう100年以上前の時は魔女というだけで殺されかけていたぐらいだったし…。
時代の流れというものは残酷なだけではなく、戦争の悲しみや憎しみも洗い流してくれていたのだ。
そんなこんなで、貧乏くさい…じゃなくてメロニア特製野菜炒めを美味しく(?)たいらげ、魔女は立ち上がった。
「さてと、とりあえず町を探さないとね~」
指を鳴らしてほうきを出した。
「…お金稼ぎに」
ボソッと一言いうと。魔女は空に飛び立った。
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