淡く柔らかな色合いの世界を、少年少女たちの騒がしい日常が鮮烈に彩る!

 魔法が人々のすぐそばにあることが当たり前の世界。そんな世界での日常を、3人の女の子の視点から描いたドタバタ日常系コメディです。

 『カラーメモリー』と題名にあるように、物語の各所には色とりどりの色があふれています。そこに魔法と、個性豊かなキャラクターが加わる。すると不思議なことに物語の全体にパステルな、優しく柔らかい雰囲気が生まれます。どこかゆったりとしているように感じる世界で、しかし、巻き起こるのは勢いのある喜劇という…。
 そのギャップが上手く生きていて、世界観とコメディ。本作の2つの魅力が引き立っていたいた印象です。

 そんな本作ですが、キャラクターの性格や関係性が見えてきてからが真骨頂なんです! キャラ同士のやりとり、関係性が生み出す掛け合い。生まれる対話のテンポ…。それこそが、本作最大の魅力であるコメディの要素を生み出しています。ポンポンとキャラたちが投げ込む言葉の応酬がなんとも心地よく、何よりも面白い!

 コメディらしく会話が中心なのですが、それぞれの言葉からもキャラクター性が感じられて、ともすれば山も落ちもない展開になりがちな日常風景に適度なメリハリを生んで、面白おかしくしてくれています。

 そうして、勢いで攻めるコメディだけなのかといえば、そうでもなくて、しっかりとした世界観も感じられます。

 先に挙げたように、本作は主に仲良し3人の少女の視点から描かれます。それぞれの主眼となっている人物がどのような生活をしていて、どのような人とのつながりがあるのか。生活が違えば見ている世界も、知っている知識も違う。同じ人を見ても、主眼となっている人物によって見え方が違う。例えば、ある少女から見れば幼馴染でしかない少年も、別の少女が見れば特別な力を持った少年に映る。ときには、主眼となっている少女自身すら気づかない力を、他の少女の視点が教えてくれる。

 同じものを見ても、別の視点のキャラとは違うものが見えている。そのたびに新たな発見があって、読者である私を驚かせてくれる。物事を多角的に捉える。物語だからこそ感じられる面白さもしっかりと楽しむことが出来ました。

 惜しむらくはこれが文字で描かれていること! コメディ作品に共通することなのかもしれませんが、漫画やアニメなど、映像として楽しめたならきっと、本作の魅力はもっと引き出せるはず。本作は多分、その最たる例になるのでは。ということで、漫画家さん、アニメーターさん、映像化してくれないでしょうか?

 パステルカラーのフワッと柔らかな印象の世界で巻き起こる、あっちへこっちへのドタバタコメディ。魔法のワクワクがあったり、不思議を解き明かすドキドキがあったり、時々、恋や物理もあったり。

 個性豊かな面々が描く面白可笑しい日常はハッキリした色となって、淡い色合いの世界を彩っていく。個人的には、ニチアサの魔法使いの女の子たちが活躍するお話が好きな方にはピッタリだと思うのですが、どうでしょうか…?