第22話
「おおっ」
まるで天地創造の神々が、戯れにそこに土砂を盛って形作ったかの様な何とも大雑把な作りの屋久島。
だがそれは、高縄山地や中国山脈などの峻険な山脈しか知らない宗三郎には酷く新鮮な物に感じられた。
その景色を目に焼き付けようとジッと水平線を見つめる宗三郎。
そんな宗三郎に時堯から声がかかった。
「どうだ?良い物であろう?」
「ええ、城暮らしが長かった故、この様な景色を目にしたのは初めてです。
海といえば瀬戸内の狭い海。島と言えば猫の額程の小島が連なって居るだけの物でした。
しかし、この世界は広いのですね……」
そうしみじみと語る宗三郎は、ふと、ある男の顔を思い出していた。
誰でもない、村上右衛門大夫通康その人である。
まさに海の男然とした彼でも、この南洋の大海もそこに浮かぶ雄大な島々は知るまいと、少し憐憫に似た感情を抱いてしまったのだ。
かの男は今も我が実父を神輿に、狭い伊予国のそのまた一部でしのぎを削っているのだろうか……
などと、宗三郎がぼんやりと考えていると、隣の時堯からまたもや声が掛かる。
「そら! 見えてきましたぞ。
あの岬の先、島間の浜から半里程の上妻城に我が父、種子島左兵衛尉が居られます。
皆々方、今晩は城でゆるりと休まれよ。ささやかながら宴の用意もしております故」
その台詞に、船員たちからは歓声が上がる。
無論、宗三郎も喜びに顔を綻る。だがその身中には少々複雑な物。
それをつい、いつの間にかそばに来ていた新城に一言吐露してしまう。
「やれやれ、流れ流され日の本の端まで来てしまった。このまま王鋥殿に従って唐天竺まで行ってみるか」
と、新城はその冗談とも本気ともつかない言葉に、
「そうだな。それも面白そうだ」
と、呵呵と大笑するのだった。
陽炎之浜 ほらほら @HORAHORA
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