第25話 戻って来た日常と

 みんなが戻ってくるまでに夕食に準備と軽くて掃除をしようと思った。

 まずは時間のかかるビーフシチューの仕込身をした。

 ステーキ肉に下味つけて。

 野菜たっぷりサラダも。


 火のもとの心配のないように魔導コンロを使ってじっくりコトコト。


 隙間時間にみんなの部屋を掃除して洗濯物を集めて洗う。洗濯は朝のが良いけどな。

 クリスとハートは部屋に人を入れたくない派なので洗濯物は部屋の前か洗濯場に置いてある。

 もちろん普段は彼らが自分でやるけど、溜まりがちだったり数日洗わない派とかは許されないので俺がやれる日はやってあげてる。

 あとミクは女の子なので下着とか困るから(俺が)洗濯は自分でちゃんとやってくれてる。

 

 魔法を使ってパパッと洗って干して。

 キッチンに戻って鍋の中を確認。

 うむ!良い匂いだ!


『ツバサ、もうじきリドルとミクが戻ってくるぞ』

 庭でくつろいでたらしいヒョウガが二人の帰宅を教えてくれる。

 リドルたちは冒険者として働いているけど、やっぱりまだ子供扱いで早めに帰されるんだろう。


「サンキュー!先に風呂案内してくれるか?」


 どうせならみんな揃ってゆっくり食べたいし。


 リドルたちは俺に「ただいま」と声掛けてからお風呂に向かった。後ろ姿の尻尾かわいいな。


「山ほど食べるだろうからパンと肉はいっぱい出して。エールもウイスキーも用意」


 ビーフシチューはくどめだからサラダと食後にアイスクリームでも出すか。

 


 ついでに神様たちにお供えもしよう。


 ヒゲ以外はお菓子や酒で好きって言っていた種類を数点ずつ。

 ヒゲにはボン○ンアメ。オブラートで口の中めきゃっとやっとけ。美味しいし腹に溜まるからラッキーお菓子だぞ。ゆっくり味わえ。あと日本一固いせんべえもいっとこ。

 神様の歯にせんべいは勝てるのか?


 ビーフシチューが良い塩梅になってきたとこでリックたちが戻ってきた。


「ただいま~良い匂いが充満しててキツい!早く食べさせてー」

「わぁご馳走~」

「お前らさき着替えてこい!」


 

 まだ外は非日常だけど、みんなが揃ってゆっくり食事をできるようになった。


 スタンピードがあったの全部嘘だったらって思うけど、みんなが無事戻ってからこれで良いんだ。


「クリス~!独り占めすんな」

「ミク!それはお酒だ!」

 

 テーブルの上がすぐにごちゃごちゃになった。


 サイラスもハートも嬉しそうに酒をがぶ飲みしながら食べてるし、ガルムはキッチンから出ないままつまみ食いしながら酒瓶を傾けながら料理してるし、クリスはつまみに出したイカ刺しの皿抱え込んでる。

 ルランとリックは肉を取り合ってるし、リドルは全部の皿から色々食べてる。

 ミクはなぜかガルムにくっついてちょいちょい餌付けされながら、料理過程を真剣に見ている。


「ミク、料理覚えたい。ツバサのは工程が多い。ガルムがちょうどいいみたいだ」

 リドルが教えてくれた。

 まぁアイテムボックスで出すもの以外はちょっと凝ったりしてるけど、ガルムのは男料理って感じで大雑把だから覚えやすいか?


「ミク、ツバサみたいにやりたい。でも難しいからガルムでいいって言った」


 ちょっとガルムの立ち位置が気になるけど、料理できるにこしたことはないし。


「ふーん、リドルは覚えなくていいの?」

「塩振って焼くだけで食える」


 ワイルドか!!


「ぶあはは!確かに焼けばだいたい食える!!」

 ほろ酔いになったリックとサイラスがリドルを囲んで自分たちの席に連れて行く。


 オッサンども、焼くだけじゃつまらんから俺のメシ楽しみにしてるくせに!


 


 それから数日、お手伝いに出たり、リックたちが近場の森の調査に出たりで平和に過ごした。


 ある日リックが俺に、

「戦う術を持ってるのに我慢するのは辛かったよな?そろそろ戦い方を学んでみるか?」

と言ってくれた。


 サイラスたちが交代で毎日1時間程度訓練に付き合ってくれて。


 エイミーたちの付き添いで低ランク魔獣を狩りに行けるようになった頃に棲家にエイミーたちが招待された。

 集まったのはリックたち、リドルとミク、エイミーたち。



「《竜の棲家》はクランを発足しようと思う」


 リックがサイラスに促してサイラスが話を始めた。


「クラン?」

 クリスがいくつかのパーティが集まって協力し合いながら活動するグループのことだと説明してくれた。


「今はまだリドルとミクは俺たちの手伝いの扱いだがそれぞれがかなり強い。いずれはツバサと三人で活動したらいいと思っている。そして三人はそれぞれ立場が危うい。独立させるのは時期尚早だし心配だ。うちの傘下に入れたことにして後ろ盾と世間に周知させれば多少は守れるだろう」

 

 要するにパーティメンバーじゃないけど仲間?ってことかな、


「クランなら仕事ごとに編成を組めるし力量差を気にしなくてもいいだろう」


 パーティメンバーとは違うんかな?


「俺たちがお前をパーティに入れたら悪目立ちするからな」


 んー、確かに見習いのガキを簡単に入れたとなるとリックたちの格も下がる。


「本当はそんなの気にしなくてもいいんだけどねー」

 ルランが俺の頭をポンポンとする。


「えっと私たちはなんでこの席に・・・?」

 ララァが困惑して聞いてきた。

「ああ、お前たちにもクランに入って欲しいと思ってるんだ」


 リックが軽い感じで言うとエイミーたちが一斉に椅子からちょっとお尻が浮いたよ。


「「「え!?」」」


「これまでの人となりと実力を見て信用できると判断しているし、仲間としてやっていけると思う。どうだろうか?」

 

 サイラスが畳み掛けるとエイミーがふにゃふにゃと床に座り込んだ。


「ほほほほほ」

「ほほほほほ?」


 フクロウ?


「ほんとでしゅかぁ?」


 エイミーだけじゃなくララァもクララも顔をぐしゃぐしゃにして泣き出した。


 リックとガルムが焦り、サイラスとハートは苦笑い。ルランは爆笑して、リドルは困惑。

 エイミーだけはエイミーたちの背中をポンポンとして慰めて?いる。


 エイミーたち三人は結局新たなメンバーを決められずいまだ三人で行動していた。

 女三人だからか戦力的に不安で討伐依頼を積極的に受けられなくて行き詰まっていた。


 クランに入れば、リックたちの仕事に付き合ったり、別のパーティと組んでも無茶なことはされない。


 真面目にコツコツ頑張ってきた甲斐があったなって良かったなって思ってたのに。


「「ありがとうございましゅぅう。よろしくお願いしましゅぅううう〜」」

 って感動で泣いてるクララとララァの横で!!!


「ぐふふふ、ちゅばしゃきゅんといっしょ♡」


 って言うキモい呟きを聞いてしまった。


 台無しだよ!!!!!

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どじっこ女神(自称)のせいで思ってた転生と違った≪おれ≫の物語 紫楼 @sirouf

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