対岸《ありがとう、虚構》to自分

石田颯太郎

第一話

対岸【ありがとう、虚構】to自分


暖房24℃

俺はリビングの壁際にある勉強机に向かって必死に勉強していた。

昔から家が大好きで家族も暖かくて好きだった。

母はご飯を作り、父はソファで横になって新聞を読んでいた。


締め切ったはずの家に冷気が入ってきた。


ズガァァァァァン


何か大きな衝撃が横から入ってきた。

気がつくと俺はボロボロになった一軒家の家の瓦礫の上で死んでいて、両親は重傷を負っていたが、なんとか生きていた。


このまま寝ちゃいたい。


雪がしんしんと降る。


まるで目薬みたい。



暖房23℃

外は雨が降っている。家は川の近くにあり、いつも対岸では何が起こっているかをリビングから庭に出て確認するのが日課だった。

今日は何故か対岸が霞んで見えた。わざわざ見に行く気持ちはなかった。


「ん、んんー?」


目を擦ると何か人が倒れている....ように見えた。でもそんなことは無いと思い勝手に自分の中で倒木だと決めつけた。

きっと向こう側の家は木が植えてある。それが寿命を迎えて倒れたのだろう。そう考えた。いや考えるのが疲れたからそういうことにしたかった。

自分の部屋に戻るといつものダウンライトだけで照らされた薄暗い部屋とベッドが待っていた。ベッドに倒れ込みスマホをいじる。


自分の部屋には窓があった。付近は冷たかった。


「もぉー。学校疲れたよー。明日は休もう。」



摂氏9℃


窓の外から人影が映る。

一人の老人であった。顔は見えない。

老人が冷たい窓に手を近づける。触れた瞬間体温が窓にじんわりと伝わった。それと同じように周りに人が増えていった。

その人々からはうめき声が聞こえた。


「うぅ。うぅぃーーぅーー。目ぇぇ」


顔が見えないのでは無い。目が見えないのだ。

何かを訴えているようにうめき声を続ける。

しかしうめき声はほとんど窓に反射されて窓の向こうに届かない。


窓の向こうは....



暖房23℃


なにやら冷たい風が吹き込んだ気がした。

窓はちゃんと鍵まで閉め切ってある。


「フ。ヒェ。なんか気味悪いな。」


スマホを片手にベッドでごろごろしている俺はリビングに向かった。

リビングに行くとお母さんが生姜焼きを作っていた。他には、なめこの味噌汁、ほかほかの白米、緑がたくさん入ったサラダとサーモン。


「うぉー。美味しそー。」


俺は思わず口にした。これは口癖だ。


「今日全然運動して無いでしょー。運動してお腹空かせたら美味しいご飯が待ってるよー!」


お母さんはそんなことを言う。俺はめんどくさそうな顔をしてため息をつき、床に放ってあるフカフカのコートを着て、リビングからベランダに出てランニングシューズを履く。そして一息ついて走ろうとする。

外は寒かった。薄暗い。そして雨は先程より弱まっていた。きっとお母さんはこれを見て走れと言ったのだろう。



摂氏9℃


俺は走ろうとした。

後ろから足音がした。

お母さんかと思った。

でも違った。

後ろを振り返りはしようとしなかった。

それは何故か。

さっきの自分の部屋で感じた気味の悪さの原因のように感じ取れたからだ。


「やっぱり目を瞑ってるんだね。」


誰か分からないような掠れた声が自分の耳元で囁く。


「そうやって現実から目を逸らす。」


「そうすることによって自分の理想像になってほしいと祈ってしまう。」


「君がいつも気にしていた対岸を気にならないのはそのせいでしょ。」


「君がやった事実に目を瞑ったまま事なきを過ごそうとしている。」


「ほら、目を開けてご覧。」


ずっと誰か分からない気味の悪い人に後ろからずっと囁かれていた俺は。俺は。俺はゆっくりと目を開けた。

目を。目を。目を開けた。のであった。


目は瞑っていなかった。

さっきまで。そう。さっきまでは。


目を開くとそこには俺。そう俺のような人。いや、ボロボロになった俺がいた。焼け死んでいる俺だ。そう。俺だ。


目の前の事象がなんのことかさっぱり分からなかった。

これから起きることなのか。それともこれがさっき言ってた理想像なのか。


「違うよ。」


「分からないふりをしているだけ。」


声が増えた。後ろには人がたくさんいた。老人から若者。赤ちゃんまで。

これも自分の部屋で感じた気味の悪さの原因だった。

俺の後ろには目が見えない薄暗い集団がいた。

でも後ろの集団はやがて目が見えてきた。

それと同時に俺も目の前のボロボロになった自分の事柄を理解できた気がした。



暖房24℃

俺は死にたいと考えていた。

家族は愛しかった。

でも俺だけでは。

俺だけでは心細かった。

だから俺は考えた。一緒に死ねばいいと。


自家製の爆弾を庭に埋めた。

親にはいつものように対岸の景色を見ているように見えたであろう。でも本当は対岸の景色を見始めた時から死にたいと感じていた。そのためにずっと自家製の爆弾を作っていた。


やっとできた。これを爆破して、目を瞑って。


死のう。



摂氏9℃

俺は上記のように考えていた。

暖房23℃はいつも俺が使わない温度。

いつもは暖房24℃に設定している。

目を瞑る。そんなことさえ考えなければ俺は家族に迷惑かけなかつ私。

暖房を23℃にしようと思わなければ、対岸の景色を普通に楽しめただろう。


俺がいたからいけない。


「違うよ。」


後ろにいたのは過去、未来の俺。現実を嫌った俺。


「正解。」


俺さえいなければ。


「違うよ。」


自分勝手に死ねば。


「違うよ。」


全て現実を受け付ければ。


「そういうこと。」



暖房23℃

暖かい家族が川に臨む庭のある一軒家で過ごしていた。

俺じゃ無い人が俺の両親と過ごしていた。

楽しそうに生姜焼きを家族揃って食べていた。

暖かそうだった。


これが現実。目を背けなかった俺の現実。


「正解」



気がつくと俺は家にいた。

左にはお母さん。目の前には俺じゃ無い人。

ほかほかの生姜焼きが目の前に置いてあった。なめこの味噌汁も、ほかほかの白米、緑がたくさん入ったサラダとサーモン。


俺は対岸の景色が見たくなってご飯中なのにも関わらず、リビングから庭に出た。川の向こうには大勢の人がいた。


「ありがとう。虚構」


ドカァァァァァァン


対岸の大勢の人がいる庭が爆発した。


「ありがとう。自分。」


「死んでくれ。現実を嫌った俺。」


「死んでくれてありがとう。青二才の俺。」


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