ヨネザワさん 👨‍🏭

ヨネザワさん 👨‍🏭

　レンチン鮭に小鉢、味噌汁の朝定食、四五〇円だから、ま、こんなもんだよね。

　六年ぶりの吉☆家を出て運転席に座ると、ラジオから鑑識さんの声が聞こえた。

　捜査一課のイタミ刑事ともども、なくてはならない名わき役だったヨネザワさん。

　どういう事情か降板してから何年にもなるのに、いまだにあの風貌がなつかしい。

　いわゆるイケメンではないけど、女性たちにたいへんな人気と聞いたことがある。

　なんか分かるな、サシで飲むなら主役のおふたりよりも断然カンシキさん。🍶

　茫洋としていて尖っていないところが可愛いし、話題の抽斗もたくさんありそう。

　カラオケに行けば行ったできっと抜群にうまいんだろうね～、知らんけど。（笑）

　　　　　　🌃🎤🎶🎷

　思えばわたし、男運？　わるかったよね～、半生をその処理に費やしたんだもの。

　折しも朝ドラでは町工場を経営していた夫に急逝された妻に同情が集まっている。

　だけどね、呆然とする額の負債があるわけではないし、社員ごと引き受けてくれる企業もありそうだし、それに夫の保険金も入るんだし（笑）恵まれていると思うよ。

　うちの場合、高額な機械が何台もある町工場と違い、備品はみなリースだったし、生別ゆえに（笑）保険がおりるわけもなく、閉業＝自己破産だったんだよ……。💧

　一刻も早く負債を返したくて朝から晩まで働きづめ、子どもたちが独立してからは未明出勤の朝食を吉☆家でとる日もあったんだよね、みゆきさんの曲を思いながら。

　　　　　　👘🏠🪴📫

　もう済んだことだからいまさら詮無いけど、いっそのこと初めから男性に生まれていたらどんなによかったろうね、女性だからって苛められることもなかったろうし。

　NHKドラマ１０で放映中の『大奥』みたいに男女の入れ替わりもいいよね。女性将軍吉宗になって「そなたは今日からわたしの男じゃ」なんて言ってみたかったな。

　その場合、大奥のキレイドコロのひとりとしてカンシキのヨネザワさんを侍らす。

　扇子の先で面（おもて）を上げさせ「そなた、名は？」とか言うの。うわ、たまらんわ～。

　あれこれ妄想をはたらかせているうちに、車は早くも自宅に到着し、大奥どころかだれもいない小家の鍵を開け、心の内でただいまを言って靴を脱ぐのでありました。