Ⅱ 再び学校にて
次の日、下からお袋の声に起こされ、土曜日なのだが今日も練習だ。
今日は余裕を持ってでかけた。例の河川敷の土手の上を自転車で走っていると、江戸川沿いに多くの人が出て女の子を探している。町内の人。ボランティアの人。消防団。そして、当然警察署の人々。多くの人が皆で探し回っていた。その土手の上の道を学校目指して自転車を漕いだ。今日は遅れるわけには行かない。
今日は余裕で学校に着いた。何時もの自転車置場に自転車を止めて、体育館の横にあるバスケット部の部室に入ると、半数以上の部員が来ていた。俺も早速練習着に着替えていると、橋本や高梨が近付いてきた。橋本が声をかけてきた。
「オッス、智! 昨日のテレビを見たか? 本当に昨日女の子が行方不明になったってにユースでやってたな」
「あぁ、俺も見たよ。まさか! と思いながら見ていたけど、直ぐにテレビを消したよ」
「おう、そうか、すまん、すまん、お前には触れられたくない事件だったな。しかし、ニュースによると、お前の妹と同じ障害を持った女の子だそうだな」すると、後ろから頭をポカリと殴られた橋本は、誰だ! とばかり振り替えると、高遠だった。
「橋本❗ 余計なことをいうんじゃないよ、智が辛くなるだろ!」
「あぁ、そうかすまない。智。俺は馬鹿だから、なにも考えずにしゃべっちゃうんだよな。すまない智」
「解ってるよ、心配するな。もう三年も前の事だ」それでも橋本はすまなさそうな、申し訳ないといった顔をしていた。
「しかし、驚いたな。智が体験した異次元の世界と同じことがあったとはな~」と高遠が呟いた。橋本も頷いていた。
「こんなことが起こったのだから、絶対に昨日の話しは、誰にもしないでくれよな!」すると高遠が、
「すまないその事なんだが、つい、俺昨日ニュースを見ながら、親父に少しこぼしてしまった。すまない」
「そうか、高遠、お前の親父は千葉県警の刑事だからな、今度の事件の捜索本部に詰めているのだろ」
「ああ、そうなんだ、飯食ってるときだったんだけど、つい、喋っちゃったんだ。すまない」
「親父さんは、なにか言ってたかい?」
「多分、事故だろうなって言ってたな。まだ解らないけど。何か新しいことが解ったら教えるよ」
「そうしてもらえるか」
「おう、了解だ」そんなことを話していると、大声が響いた。
「こらっ❗ お前らいつまでも喋りながら着替えてんじゃねえよ」と監督の怒鳴り声が聞こえたので、三人とも首を竦めて”クワバラ、クワバラ”と言いながら着替えをすませ、体育館に向かった。その日もあのハゲ監督にビッシリときたわれて、午後五時に解散となった。
「明日も朝からやるからな! 皆忘れずに来いよ❗」後ろから監督の檄が飛んだ。
「さあ、帰ろ、帰ろ!」と言いながら皆家路へと着いた。家に帰り着くまでも河川敷の捜索は続いていた。
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