Ⅳ 親父と”岳士探偵“
「お帰りなさい」と、俺とお袋がいうと、
「ああ、疲れたよ! まだ見つからないんだ。連日の捜索だから今日は、少し早めに切り上げて帰ってきた」そう言いながら玄関を入って、台所に入ってきた。
「あなた。先に着替えてきてよ」お袋に叱られてた。こうなると天下の県警の刑事も形無しである。
「解ったよ」と、口先を尖らせながら自分の部屋へと入っていった。お袋からすれば、子供みたいなもんである。着替えが終ってから、台所に入ってきた親父は、
「あ~、疲れたよ。ビールを頂戴」
「ビールは貴方の目の前にあるでしょ」とやり返された。
「ハイ、ハイ」親父はビールをコップに注ぐと、グビグビッと、先ずは一杯目を飲み干した。そこで俺は、
「親父! 食事のあとで良いから今回の女の子行方不明の件について、俺の考えも聞いてくれないか?」
「何、お前の考え。“岳士探偵”の推理ってやつか? 子供に何がわかるってんだ。まぁ、よいか。お前の推理はあまり馬鹿になら無いからな。良いだろう後で、プロの考えと、お前の考えを付き合わせてみようじゃないか」
「ハイ、望むとこですよ、但し、親父は色々な情報を持っているから、少しは俺には解らないところを教えておくれよ」
「まぁ、まだ捜査秘密になっているところ以外ならな」
「チェッ、それじゃあ俺には不利だな。しかし、仕方ない」と食事が終ったら、親父と、推理を交換することになった。
食事を済ませると、お袋は後片付けを始めた。俺は親父の前の席に座り直すと、尋ねた。
「親父。当然警察では、先ずこういう少女誘拐などの前科者や、そう言った噂を聞いた人などには捜査をしたよね。しかし、該当者らしき容疑者は上がらなかったんだろう。あの日は時々激しい雨も降ったから、証拠となる下足根等は流されてしまっただろうからね。容疑者を絞りこむ手掛かりさえ掴めなかったんじゃないかい?」
「まぁ、そう言うことだな」そこで、岳士はベッドで考えていたことを親父に話してみた。
「成る程、事故の事までは考えなかったな。お前のいうような事故があったのなら、誰も目撃者がいないと言うことは、考えられないな。だからそれはない」
「俺もそれはないと思うよ。だから智の話を信じてみると、俺は異次元の世界はあると信じているからね。それとあの防犯カメラの映像から考えられることは、誰かを見つけて逃げているようにしか見えなかった。女の子が逃げる相手と言えば、知らない人じゃないと思える。怒られると思って、逃げているように見えたからだ。では日頃から怒られていたと言われていた、お母さんか、お姉さんになる。それに智の話によると、おとなしく背負われていたと言っていた。それを考えると更にお母さんかお姉さんが浮かんでくるんだよね。……お母さん……。いや、それはないと思うよ。何故なら、お母の子供を探す行動やマスコミのインタビューを読むと、そんなことはとても考えられない。ズバリ❗ 智が見た人物は、お姉さんだ!」
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