第4話 創軍の翼 (3)

[私の名前は申太一...大韓民国の空軍中尉だ。

3年前までは私は日本帝国海軍航空隊の大尉だったが、今は生まれ変わった私の祖国大韓民国を守る軍人になった。

私は祖国に大きな罪を犯した罪人であり、私の父もやはり祖国を裏切った大きな罪人だが、それでも今の私の心はこの上なく安らかだ。

なぜなら、今は私の意志どおりに私の翼を広げることができるようになったからだ。

数年前、フィリピンのジャングルで生きて帰ってきて以来、私は二度とこの空を飛べないと思っていた。

しかし、私はまた空を飛んでいる。

たとえ私が操縦している飛行機はゼロ機(注:0式艦上戦闘機)だが、飛行機に太極旗をつけて私は再び空を飛んでいる。

それも名前も分からない太平洋の遠い海ではなく、私の祖国の南の海を飛んでいる。

私は軍人だから拘束される存在だけど私の翼は...私の意志はこの上なく自由だ。

もう私は私の本当の祖国の軍人だから.. ]



操縦桿(コントロールスティック)を握ったまま遠い空を眺めていた太一は首を振って頭の中の想念を払い落としました。

すると、想念から外れた太一の視野に真っ青な海と空の境界線がまるでどちらが上下なのか当ててみなさいというように迫ってきた。

それに対し、太一はその夢幻的ながらも脅威的な風景を眺めながら、操縦桿をゆっくりと引っ張りながらつぶやきました。


「 ちぇっ…」


海上で3千メートル以下の低高度飛行をするのはこれだから危険なことだった。

それは単調な海の上を長く飛んでいくと無駄な考えだけが頭の中にいっぱいになり、下手をすると空と海の区分ができなくなり上昇しようとして海に気体を打ち込むことになることも太平洋の空で多く見てきたためだった。

そのため、太一は錯視を防ぐために首を切り、あの遠い空を眺めた。

高度がそれほど高くないため、はるかにのんびりと浮かぶわた雲が視界に入り、太一はそれを基点に空と海の区分ができた。

しかし、その他に目に入る風景はなかったが、戦争が終わったおかげで海に通る船さえ珍しいため、海の上には何も見えなかったためだった。


お弁当でお昼でも食べよう。 ’


今の南海で雪の退屈を解いてくれるような何かを探すことがどれほどばかげているかを改めて悟った太一は、スティックを膝で固定し、手を下ろして操縦席の下にあるおにぎりの包みをつかんだ。


「ちぃぃぃぃぃっ...海東清(株:韓国の狩猟用鷹)!」 へドンチョン!

ここは本部。海東清!応答せよ。 ’


その瞬間、突然聞こえてきた呼び出し音で操縦席の中が騒がしくなった。

それに太一はやっと手に取ったおにぎりの包みを下ろして受話器を取った。


「ここは海東清…。本部どうした?」

「海東清!海東清!」 無線感度いいですか?? 」

「ここは海東清。 無線感度いい。

本部!無駄に無線を送るな。

米軍に傍受されたら大変じゃないか。」

「その米軍のために無線を送ったんです。

ハインツ准尉から連絡が来ました。 」

「ハイン…おい!無線上で名前を言うな!」

「あっ…しまった…すいません。

ギデオンから4時50分くらいに到着すると航路の哨戒をお願いすると連絡が来ました。

二つ~ゼロ~ポイント方向から入ってくるそうなので、一度見回してください。」

「あと7分ぐらいだね。 分かった。そっちに行く。

ギデオンに無線頼むよ! Roger! "

「 リョウカイ....いや、Roger Out'。」


太一は無線を送った管制要員の日本軍時代の口癖について何と言うかと思ったが、ただ受話器を下ろした。

太一もまだたまには日本語が出てくるほど日本軍時代の癖は彼と今一緒にいる同僚全員を精神的に締め付けていたからだ。

そのため、太一は再び想念を振り払おうともう一度首を振って操縦桿を引いて機体を上昇させた。

そして機体が毎分300メートルの遅い速度で上昇することを確認した太一は哨戒のため西南方に機首を回した。

そうしてしばらくして旋回を終えて機体が安定するのを確認した太一は再び腰を下げておにぎりが入っているかごを取り出そうとしたが、そのまま水筒だけを取り出した。


' どうせご飯のつもりもないから… 」


太一は口当たりをしながら水筒のふたにお茶を注いだ。

するとすぐに操縦席の中が煎茶の香りでいっぱいになったが、煎茶の香りを嗅ぐとふと太一は半年前に喫茶店でキム·ジョンリョル少領(少佐)に会った日を思い出した。


「空軍ですって? あっ~熱い。」


太一はキム少領の言葉に手に持っていたコーヒーカップをひっくり返してしまった。


「そうだ。今度、空軍を創設しようと思う。

シン同志(注:この時期、韓国で男性同士でよく使われていた呼称)。

だから君がぜひ手伝ってほしい。」

「急にちょっと戸惑いますね。

ところで空軍を作るのにどうして私のような人を…?」


太一は喫茶店のマダムににらまれてハンカチで膝にこぼしたコーヒーを拭きながら話を止めたが、金少領は太一の方に身を寄せながら哀願の声で話した。


「君のような人材だから頼むんだよ。

君のように経験豊富な人材が田舎で腐っているなんて話にならない。

今この国には空軍が必要だ。

君も航空隊出身だからよく知っているじゃないか。 どうか助けてほしい。」

「しかし、私は日本軍に服務した反逆者です。

李応俊(イ·ウンジュン、注:日本軍出身の韓国軍元老)将軍のような方も故郷であんなに自粛しているのに、私のような奴がどうしてまた軍に入ることができるんですか。

何よりも私の父は日本の手先で数多くの若者を戦場に追い出して死なせ、この国の大きな財産となる貴重な飛行機を単なる私益のために廃品として売ってしまった売国奴です。

そんな売国奴の息子である私のような奴が、どうして軍に入る資格があるのでしょうか。」

「いや、今この国は何一つ不足していないのではないか。

私も日本陸軍士官学校を出て陸軍航空隊に服務した。

日本軍として連合軍の飛行機も数機撃墜した。

しかし、その時は私たち皆どうしようもなかったじゃないか。」

「...」

「もうこの国は解放された。

無条件に隠れたからといってすべてが解決されるわけではない。

李応俊将軍のように隠遁するのも贖罪の方法だろうが、今すぐこの国に必要なことをするのも贖罪の方法だね。」

「でも…」

「まったく…。このもどかしい人よ。

君もパイロットだったからよく知っているじゃないか。

パイロットというのはどこの日照一夕で育てられるものだったのか。

それも君のようにベテランパイロットがね。

君のような人材がパイロットたちを新たに教え、リードしなければ誰がするだろうか。」

「しかし、私の父は空軍の財産になる余剰戦闘機を米軍に古鉄で売って片付けました。

そんな反逆子である私を軍で歓迎しますか?」

「この人がこんなにもどかしいのは…。

君のお父さんはもう反民特委に逮捕されて連れて行かれたじゃないか。

そして今、国軍にそのような過去のない人が何人いるだろうし、誰があえて君に対して何と言う資格があるのか。」

「そんなことありません。 私みたいなやつは…」

「何より光復軍(株:韓国独立軍)出身の中には戦闘機に乗ったことのあるパイロットがほとんどいないんだ。

だから結局、私たちのような経験者が先頭に立って動かなければならないんだね。」

「でも米軍がいるじゃないですか。

新しく空軍が作られたとしても、アメリカの助けがなければ空軍を創設して維持することは不可能だと聞きました。

そして新たに国軍が装備することになる飛行機も米軍のものだと思いますが、私のような日本軍出身が何の役に立ちますか?」


太一の反問に金少領はもどかしそうに自分の前に置かれた煎茶を一気に飲み干して言った。


「このもどかしい人が、どこの智異山(チリサン、注:韓国南部の山で、大きくて広い森があり、昔から山賊や反乱軍の巣窟が多かった)にでもいたのか。

アメリカは今、韓国陸軍が戦車や重砲を持つことさえ妨害している。

北朝鮮では戦車部隊が作られ空軍が作られていても、米国は我々が教弾(注:訓練のための弾薬)を使うことさえいちいち干渉しているということだ。

小銃が足りず、日本軍の38式や99式まで使っていても、彼らは知らないふりをするだけで、空挺部隊が使っていた軽野砲に対戦車砲数門を渡しては戦車はいらないと言っている!

そして今、陸軍航空隊が保有しているのもキ-9のような古い練習機だけだが、これからアメリカがくれるという飛行機が何なのか知っているか。

風だけちょっと激しく吹いても作戦に出られない連絡機みたいなものをあげるって言うんだね。 キ-9よりましなものはない!」

“...」

「そんな米軍に何を望んでいるのか。

何よりもうこの国は解放されたよ。

独立国家には自ら作った軍隊があるのが当然ではないか。

お願いだ。君のようなベテランが必ずいなければならない。

だからぜひ手伝ってほしい。

この機会を利用しなければ、韓国空軍はまともな装備を手に入れる機会がない。」


太一は何かもっと言おうとしたが、金少領の熱意にこれ以上彼の頼みを断つのをあきらめ、小さなため息とともに軽くうなずいた。


「分かりました。そこまでおっしゃるなら少佐の意向に従います。」


金少領は太一の承諾に飛び跳ねるように喜んで彼の手を握った


「ありがとう。本当にありがとう!

シン同志が共にしてくれるなら、これ以上望むことはない。」

「ところで、これから私がどうすればいいですか?

軍事英語学校(注:解放後に作られた韓国軍の予備校)にでも行かなければなりませんか? 私も英語ならある程度できますが…」

「いや、実は私も大統領の密命を受けて今このように動いているんだよ。」

「大統領がですか?」

「君は明日から陸軍の參尉(主:少尉)として働くことになるだろう。

そして明後日か明後日くらいに日本に行ってほしい。」

「參尉って…。大韓帝国の階級じゃないですか。

それより私はまだ軍籍も受けていないのに參尉で日本に行けなんて?

分からないことばかりおっしゃるんですね。」


太一の言葉に金少領は突然彼に顔を近づけてささやくように話した。


「実はね…君をこのように捕まえようとしたのは、我々が空軍創設のために新たに導入する戦闘機だからだ。

君、パクドンヒョンとユ·チャングンって知ってるよね?」


太一は金少領の口から出た二人の名前に驚かずにはいられなかった。


「はい。私と一緒にフィリピンで働いていた部下です。

整備兵として働いていた財源です。 でもなんでその人たちを…?

まさか新たに導入するという戦闘機というのは…!"

「そう。実は今回買い入れる戦闘機は日本軍の戦闘機だ。」

「そんな…!」

「どうせなら、我々も米国や欧州から戦闘機を持ち込もうとしたが、米国の妨害が並大抵ではないからだ。

そして、どうせ今の韓国がまともにお金を払って戦闘機を買ってくる立場でもないのではないか。

それで今日本から米軍が廃棄中の日本軍戦闘機を持ち込むことにした。

そしてちょうどあの二人が日本に行って米軍属数人を買収したそうだ。”

「確かにどうせ廃棄されるやつらだから、大金をかけずに少ない費用で航空戦力を確保する方法ですね。」

「そうだね。だから君が行ってその二人と一緒に機体の状態もチェックしてくれて機体も引き渡してもらいたいんだ。

もちろんパイロットたちも急いで特攻隊出身で数人集めた。

しかし、少年航空学校でやっと離着陸や学んだ低い実力なので、シン同志のようなベテランが導いてあげなければならない新米たちなので、このように君を訪ねてきたのだ。”

「しかし米軍がじっとしていないはずですが。

そしてまだ米軍顧問官が国軍のあちこちに残っているのに、飛行機を持ってきても隠す方法がないじゃないですか。

そこに隠しておくだけでは、どうせ持ってきた意味がなくなります。」


金少領は太一の言葉に少しは見苦しい笑みを浮かべながら顔をぐっと寄せながらひそかな声でささやいた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

雷擊騎士團 イプリトウィング @jun70

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ