第2話
電車が通るガタンゴトン。
OLのヒールが鳴るコツコツコツ。
どこかに隠れている小鳥がさえずるピヨピヨ。
朝の何気ない雑音が、私は好きだ。
朝の爽やかな空気を肺いっぱいに吸って深呼吸する。
「おっはよー!」
雑音の中に、飛び抜けて元気な声が真っ直ぐ私の耳に届く。親友の瑞希だ。
「おはよ。」
元気な瑞希に答えるように微笑みながら挨拶を返す。
「今日の漢字テスト、勉強した?」
「え、そんなのあったっけ?」
「えっ、覚えてないの?!今回難しいからちゃんと勉強しとけってタム先言ってたじゃんっ」
タム先は、国語の授業を担当している田村先生。ユーモア溢れる性格で、生徒から人気を博しており、タム先というあだ名まで付けられた。
「まあ、なんとかなるっしょ。」
「点数悪くても知らないよ〜?とかいって、あんた結局点数いいんだもんなぁ。」
たわいもない会話をしながら学校に到着し、下駄箱で上履きに履き替える。
「そういえばさ、今日から転入生来るんだよね?どんな子かなぁ。男子?女子?」
「え、そうだっけ。」
「はぁ?それも聞いてなかったの?もうっ。転入生とか、一大事だよ?高校生活の一大イベントだよ?」
「そこまで言う?イベントはもっと他にもあるでしょ笑」
「まったく、、、転入生の重みを分かってないなー。ふふっ、楽しみだな。あ、もしイケメンだったら私猛アタックするから!取らないでよねっ。」
「心配しなくても私興味ないから笑」
キーンコーンカーンコーン。
「やば!遅刻!」
階段をかけ登り、教室に滑り込む。先生はまだいない。ギリギリセーフだったようだ。息を切らしながら瑞希とセーフ、とアイコンタクトをする。しばらくして、ガラガラと扉が開き、担任が入ってくる。日直が号令をかけ、若干覇気がない挨拶をする。いつもの朝だ。しかし、今日はいつもと少し違う。
「昨日も言ったように、今日から1年C組に転入生が来ます。」
クラスが少しざわめき、期待と、少しの緊張に包まれる。扉から、1人の高校生が姿を現す。
「、、、イ、イケメン、、、」
男子だった。しかも美形。少し時が止まる。
しかし、私は違う意味で時が止まっていた。
手。転入生の手。見覚えがあった。ずっと前に、あの手を見たことがある。触れたことがある。しかし、どこで、何があって転入生と会ったことがあるのか全く思い出せない。考えるうちに、勘違いだったのではないかと思い始め、徐々に頭の中の違和感が消えていく。でも、動悸が止まらない。何故だろう。胸騒ぎがする。転入生は担任に促され、自己紹介をし、クラスメイトから質問攻めにされていたが、一言も耳に入ってこなかった。クラスメイトは顔に注目していたが、私は手にしか目がいかなかった。
「あの夢」の続きを、 @Piyopii
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