第12話 本屋

子どもたちの遊ぶ、楽しそうな声が聞こえてくる。

「じゃあおれ用事あるから」

え?

「なんの用事だよ!」

「用事は用事だって、じゃ!」

あやしい……。颯爽とコーイチはミーティングから離脱した。なんやあいつ……。

「ていうか、何で集会を開いたんだ?」

「さっきの紙切れ、朝起きたらポッケに入ってて……」

なるほど。

「とらわれ……。どういうふうにしたら超力が使えるんだろう?」

「わかんないけど、使えるように今度いろいろ試行錯誤しなきゃね」

「そうだな」

「ねえ、本屋に行かない?」

「おう、いいぜ」


この子は本当に不登校を経験した子なのだろうか。こんなにもフレンドリーなのはどうしてなのだろう。

思案してたら、さっきぶりの本屋だ。

「本は読む?」

「あんまりかな」

「なんとなく夕太って本読む人かと思ってた」

「そう?ゆかりは本を読んでそうだ」

「私よく読むの!1日1冊は読むようにしてる」

「すご!」

「まあ活字に疲れたら漫画の時もあるけどね」

僕は本をじっと読むのが苦手だ。むずむずして、立ち上がっては歩き回ってしまう。

「この本最近読んだんだよね。面白かった!」

楽しそうに本を見ている。僕は邪魔しまいと小説コーナーからそっと離れて、ぶらぶら歩いた。目についたのはサヴァン症候群という病気に関する本である。

「あ!いたいた」

「そんなに買うのか!」

「まあね。夕太もそれ買うの?」

「いや、いいや」

棚に戻そうとした時、違和感に気づく。この本が棚にある。今手に持っているものと同じものが。あれ?もともと2冊あったっけ。

レジの方へ行く。店員はいない。

「もしかして……」

「ああ、あの世界に来ちまったみたいだ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

本棚のむこうに もずく @mozk_zzz

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る