第54話 騒がしい日常です。

   ◇◇◇


「はぁぁぁぁぁ、やっと帰って来れた……」


 数日後の夜6時――。

 俺は東村家で日常とはかけ離れた抗争に巻き込まれたが、無事家に帰ってくることができた。


 久しぶりの我が家に落ち着いた気分になる。


「腹減ったな……三矢と芽以さんは別で帰ってくるんだったか……」


 俺はベッドに仰向けで倒れ込む。


 俺は如月家が所有する病院で『血』の精密検査を受けて、フレアさんに家まで送ってもらった……。

 三矢と芽以さんは今後の話をあかりちゃんとするらしく、別行動をとっていた。


「………………」


 1人静かに見慣れた部屋の様子を眺める。


 まったく、天血だか、血刀だか、数持ちだか知らんが……すげぇことに巻き込まれたな……。


 俺は危うく雪城のジジイに連れていかれるところだった……ジジイは金にがめつく、人道と言う言葉を真っ向から否定する人間だ。

 そんな人間に貴重な血を持つ俺が連れていかれたら……どうなっていたか……マジであの場を収めてくれた、あかりちゃんは恩人だ。


 あかりちゃんかっこよかったなぁ……


『私は最後の東村山組長、東村あかり、私は雪城翔は渡しません。雪城翔に手を出すということは東村組の『全て』を敵に回すということをお忘れなく――』


 あかりちゃんのその言葉にジジイは――。


『ふむ、スマートに翔を攫えればよかったのじゃが……さすがに東村と全面戦争の時ではない……我々の『スポンサー』もそれは望んでない。いいじゃろう。時が満ちるまでせいぜい楽しんで暮らすが良い』


 とか言って去っていった……あのクソジジイ、クソ憎たらしい……というか、それよりも……俺の事で襲撃されたことが申し訳ない……


 まあ、あかりちゃんにそのことを謝ったら『雪城さんが悪い訳じゃないので謝らないでください。今度そのことで謝ったら怒りますからね?』と言われたけど……。


「さて、これからどうするかな……如月さんの話だとまた俺は狙われる可能性があるらしいけど……」


『たっだいまあああああああああ!!』


 そんなことをベッドで寝っ転がりながら目をつむって、考えていると……突然家のドアが開け放たれて、騒がしくも嬉しそうな声が耳に入ってきて、腹のあたりに衝撃を受ける。


「ぐはっ!」


 ゆっくりを目を明けると、にんまりと楽しそうに笑う三矢が俺の腹の上に乗っていた。短めのスカートからチラチラと太ももが見えて目のやり場に困る。


「ふふっ、ざーこざーこなお兄さんは私がいなく寂しかったでしょ? 1人で如月さんの言うこと聞けた? あっ、如月さんとあかりちゃんと『契約』してお兄さんにしばらく『護衛』をつけてもらうことしたから……浮気しないでよ?」


「はぁ? 待て待て、俺は護衛なんて――」


『ああああああ!!! 雪城三矢! 抜け駆けしてるんじゃないわよ!!!』


 俺が勢いのある三矢に話しかけようとした時、もう一つの声にかき消された。ドアの方を見ると芽衣さんが頬を膨らませて、こちらを睨みつけていた。


 そして俺の方に歩いきて、ベッドに乗っかって俺の腰あたりに座り込む、2人分の体重が乗っかっているので多少苦しいがそれよりも、柔らかいお尻の感触が腰あたりに……まずい!!! 

 何がとは言わないけど!!


「ま、待って芽以さん!?」


「雪城三矢! ず、ずるいじゃない! 翔さんの聖なる身体に触れるのはエリクサーで清めをしてから、長篠の戦いみたいに代わりばんこでその……」


「ええ~。私が正妻なんだからいいじゃん。こんなのは日常だよ。日常」


「だ、誰が正妻よ!! 私は認めてないわ!!」


 な、なんか、俺の上で喧嘩し始めたんだけど……。


『くっくくく、にぎやかですね……こういう雰囲気はあまり家に経験がないから、戸惑いもありますが……くくくっ、楽しくなってしまいます』


 その時、もう一人聞きなれた声が……聞こえた。

 振り向くとそこにはゴスロリ服姿の南坂さんがいた。


 あっ……護衛ってもしかして……。


「くっくく、私も仲間にいれてよ」


 無邪気にそう言うと、南坂さんはベッドに乗り俺の胸辺りに座り込む。

 ぐへぇつ、さ、流石に重い……く、苦しい。


「くくくっ、キスできそうな距離ね。少し……ドキドキする」


「あああ!! 杏珠ちゃん! ずるい! というか、ざーこざーこのお兄さん、流石に重い? まあ……私はどかないけど」


「それならあんたが初めにどきなさいよ!!! 次は新入り! あなたよ!」


「くくくっ、お断りします」


『いいからお前らさっさとどけえええええええええ!!!』


 どうやら俺の騒がしい日常は終わりそうになかった。

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気がついたらJKと結婚していました…… シマアザラシ @shimaazarashi

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