老人の流行
高黄森哉
流行病
イ→インタビュアー
ロ→老人
【インタビュアーは老人に取材をすることとなった。最近の若者、というテーマである】
ロ)「最近、流行り物が多くてな。軽薄だ」
イ)「例えば」
【老人はぼろきれのような姿で、鼻毛はボーボーであった】
ロ)「例えば。例えばそうだな、似たような歌ばかりだ。似たような、がちゃがちゃしたな、歌ばかりだ」
イ)「それは、難聴だからでしょう」
ロ)「いや、同じだ。まるで、区別がつかん」
【インタビュアーは、あべこべに、昔の演歌に、区別がつかなかった】
イ)「じゃあ、脳の衰えかもしれませんね」
ロ)「同じと言えば、アイドルもそうだ。昔はあんなに個性的だったのに」「やれやれ」
イ)「ドヒャー、これは老眼」
ロ)「こここ、これ、し、失礼だと思わんか。まったく最近の者は、これだから、(なんとかかんとか)」
イ)「年の功より亀の甲、でしたかね」
ロ)「若者は、諺も知らんのか」
イ)「老人は、冗談も知らんのか」
【青年はうんざりした】
ロ)「にしてもなんだ、この書き方は。きっと、若者は理解力が低く、鉤かっこの前に名前を示してやらなければならいないに違いない」「最近の若いのは、文学も読まん」
イ)「いえいえ。これは『ファウスト』式でございます」
ロ)「最近は、流行り物が多くて、軽薄だ」
イ)「それはさっき聞きました」
【本当のことだ。彼らは、どうでもいいことを、なんども繰り返す。まるで、繰り返すことで、その確かさを高めているように思えるが、実際、それで信用性が増すわけではない】
ロ)「ついていくことに疲れているように見える」
イ)「ほほう。流行に詳しいのですね。さて、その、『若者は流行の奴隷だ』という論調の流行は、いつ頃収束しそうでしょうか」
老人の流行 高黄森哉 @kamikawa2001
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