第2話 頑張ったよオレ
別に今更『80%無農薬コオロギ使用』とか気にしないよな。そんなこと考えながら
自分でもこの状況がうまく飲み込めていない。
秋田に着いたのが昨日の夕方。その日はめんどくさくてなんもせずに寝た。そして今日は真面目に起きて荷解きを始めた。オレは急ぎの引っ越しだったから荷物は少ないし、誰かを家に呼ぶことなんて滅多にないから、テキトーでよかった。予想通り午前中に終わったから、家で昼飯食いながらおっさんらしくテキトーに飲んでた。そしたら突然インターホンが鳴って今に至る。
「家野さん!!次タンス運んでもらえますか?」
「了解です」
「めっちゃ助かります!!本当ありがとうございます!!」
『ふっ。こんなんで君の笑顔が手に入るなら安いもんさ』って言えたら、いや、言えることが許されたらどんなによかったか。
「いやいやとんでもない」
だせぇよオレ。でも頑張ったよオレ。
ポテチの油をウェットティッシュで拭き取り、タンスを運ぶ。
昼から始めて、ただ今18時半。粗方片付いた、もう男手が必要になるような場面はなさそうだ。
よし帰るか…
「家野さん!うちでご飯食べて行きませんか?」
「は?」
「お礼と言ってはなんですが、私結構料理上手いんですよ」
「…」
「何が好きですか!?」
どうしよう。頭真っ白だ。
「ハンバーグ…」
うわやっちまった。なんだよハンバーグってだせぇよオレ。でも頑張ったよオレ。
「私ハンバーグ作るのめっちゃ上手いですよ!!」
なんか美少女ちゃんの笑顔を見るとオレの動悸・不整脈なんて安いんじゃないかと思えるな。
「お言葉に甘えて…」
「待っててくださいね!!すぐ作ります!!」
本当にすぐだった。『エプロン姿って萌えるな。どっかで書こう』そんなこと考えながら待ってたら、ほかほか出来立てハンバーグが目の前に出された。
「どうぞ、肉汁たっぷりハンバーグ、私の愛を添えて」
アイ?あい?愛?は???
ていうかそれよりも…
「今肉汁って言った!?もしかしてこれって…」
「あー気にしないでください。引越し記念にってことで、昨日スーパーで買ったんですけど買いすぎちゃっただけですから」
マジか…。今どき大豆は普通に肉扱いだし、肉汁と言いつつ、豆汁かな、いや、そうであってくれ、と思ったが、マジの肉だったか…。
「気にしちゃうな…オレそんなに働いてないですし」
「私の冷蔵庫にいても腐らせるだけですし、家野さんのお腹に入れちゃってください」
「お言葉に甘えて…いただきます」
箸を入れる。ああ肉だ。紛れもない肉だ。弾力が違う。最後に100%肉食べたのっていつだ?従兄弟の結婚式以来じゃないか?うわなんだこれ、肉ごときで緊張してきた。しかもキモい考えだけど、これこねたの目の前にいる美少女ちゃんだぜ。もう価値何千万とかつくんじゃないのこれ。ていうか早く食えよオレ。その美少女ちゃんが若干困り顔でこっち見てるよ。…そんなジロジロ見られるとさらに緊張するな。ていうか…
「食べないんですか?」
「いえ、見ていたいので」
わけ分かんない理由を即答された。
まぁ美少女ちゃんが早く食べられるように早く食べるか。
口に入れる。
「…うまっ、なにこれうまっ」
「やったー!!練習したかいがありました!!」
うまい。うまい。うまいしか言えない自分が恥ずかしい。とりあえずうまいんだよ。
ぐぅぅぅ。
「…」
「…」
「えへへ、食べたくなっちゃいました」
「食べてください」
「まだ我慢します」
結局美少女ちゃんはオレが食べ終わるまでお腹を鳴らし続けた。食べ終わった瞬間、オレの皿と共にキッチンへ行き、10秒後にはジュウジュウと音を立て始めた。…つまんねぇよオレ。
「もう帰っちゃうんですか?」
「は?」
逆に居座ったらキモいだろ。
「家野さんも、家猫のノラ先生のファンみたいだったので、ヲタクトークがしたいなと思っていたのですが…」
なぜこんな美少女ちゃんとオレについて語らなければならないんだ!?もっとロマンのある話題はないのか!?
「分かりました」
こんな誘い断れないだろ。上目遣い特級だろ。
それにオレ絶賛スランプ中なんだよな。
「考察サイトやってるって言ってましたもんね。ぜひ聞かせてください」
「はい!!本当嬉しいです!!」
この時のオレは、考察サイトに載っていない最新考察・最深考察まで聞けたらいいなぁぐらいの軽い気持ちだったんだよ。
「…でですね、現在連載が止まっている理由として考えられるのが…」
お隣のゴーストライターさん。
面白い通り越して怖いし、ヲタク通り越して作者なんだが。
ゴーストライターはお隣さん 家猫のノラ @ienekononora0116
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