最終話 ドロップキング
「ガイアス叔父上。セイレーン次期公爵、公爵令嬢。申し訳なかった。どれがというレベルでなく。父の死を持って、父の有する帝位継承権を破棄する。我が身と、我が家族の身は、叔父上に委ねる。」
父を、婚約者を亡くしたばかりのロッチ殿下は、声を振るわせながら、謁見の間の台座からの階段をおり、ガイアスに跪いた。
「ロッチ。叔父としてお前の良いところも、ダメなところも知っているつもりだ。落ち着いたらゆっくり話そう。」
「はい・・。私は・・・・、自室に戻ります。」
「衛兵・・・。」
「「「はっ。」」」
ロッチは、肩を落としてながら、自室に戻る後を、ガイアスの衛兵達が着いていった。
「謁見の間は閉鎖しろ。第二謁見の間に移るぞ。アリア、帝国軍に戦闘終了を伝えてこい。拘束されている官僚達を解放して、政府機関を回復させろ。」
「わかったわお兄様。スノー、アレックス行きますよ。ロッシは、ガイアス殿下の警護を。」
ルイズの指導で、みんなが数日走り回り帝都の正常化がなった。ルイズの能力かと言えば、そうではなく、一時期政府を離れたセイレーン公領出身の官僚達を一気に政府に戻し、セイレーンから来た援軍にサポートさせるとともに、食料を大量解放し国民達を安定化させ、闇社会は、ローデシアファミリーと、モザードファミリーが占めてはじめて事をなしたといったところだ。シルフ公爵軍も翌日には揃い、ギレイド皇子も、帝都に戻り、全面的な協力によるものも大きかっただ。正常化後も、帝国軍の掌握等に落ち着くまでには、更に日数を有した。
10日後、謁見の間の清掃も終わり、謁見の間にアレックス達も集められた。玉座にはガイアス皇子、その脇に、ギレイド皇子が立ち、文官、武官が並んでいた。アレックス達も、末席に並べられた。
「これより、御前会議を開催する。今回の反乱で父上と、兄上、ファミールが亡くなった。ギレイドと協議し、帝位継承順位が上位である私が、次期皇帝に着くことになった。戴冠式は、慣例により父上の命日より1年後とする。またこれも慣例でありが、本日の御前会議より、私が仮の皇帝として、公務を行うものとする。反論がある者があれば、今すぐ申し出よ。今この時であれば、何を言おうが罪には問わぬ。だが、この会議終了後より、反論があっても口を閉じよ。誰かおるか・・・。」
ガイアスが、見渡すとだれも反論をいう者はいなかった。それを見て、ギレイドが声を上げた。
「では、反論はないものとする。今より、宰相代理となる私が、御前会議を進行する。本日より、4日に渡り今後の方針、人事について定めていくものとするが、本日は、今回の反逆者達の処分を行う。主犯であるイフリート公爵は亡くなったが、イフリート公爵家の公爵の長男ゴフィスン、次女フローレンスの両名が捕縛されている。ここに引き出せ。加えてベイスターンも連れてこい。」
そういうと、縛られた傷だらけのゴフィスンと、片腕を失ったフローレンスが引き出された。二人とも、拷問にあった様子で、目から生気を失っていた。ベイスターンは、拷問を受けた様子はなく、変わりきった二人を見てびっくりしていた。
「さて、まずは、ゴフィスン殿、今回の反乱に対し、弁明はあるか・・・。」
「全ては、全ては親父はやったことです。私には・・・、何も・・・・。決める権利も、能力もありません・・・。言われた通りに。」
そう、泣きながら訴えた、哀れと思われるような、貴族の矜持が感じられなかった。
「わかった。だが、お主は、公爵家の跡取りで、多くの部下を死地に送り、実際に死なせているな。それに責任は無いとでも。」
「ですから、私は・・・・・。」
「お主は、悪魔に変貌した事も分かっている。イフリート公爵家が大量の悪魔を生み出し、帝国の平和を脅かしたこともな。」
「私は・・・・。」
「今後の調査の結果によるが、ゴフィスンお主を含め。イフリート公爵家で、悪魔製造に関わった全て者を処刑とする。イフリート公爵家の後継はその結果で決める。良いな・・・。」
「私は・・・・・。」
ゴフィスンは、泣き崩れて動かなくなった。
「次に、フローレンス。」
「わ、私は悪魔には・・・。」
ギレイドが、ゴフィスン以上に厳しい目で睨み付けた。
「お主には、ガイアス兄上、セイレーン公爵襲撃、セイレーン公爵令嬢襲撃、シフル公爵家施設襲撃の指示、イフリート召喚に掛かる帝国兵大量虐殺の嫌疑がかかっているが。」
「私は悪魔に魂を売ってませんし、私自身は、何もやっていません。」
「私自身か・・・。帝国法に照らせば、指示しただけでも、罪は罪だ。」
「でも、私は・・・・・。あっ」
フローレンスは、アリアを見つけて、睨みつけた。
「あっ、アリア、貴方ね。」
「なんだ?」
ギレイドが、フローレンスの叫びに眉を顰めた。
「アリア、貴方が嵌めたのね。ベイスターンをとったから。貴方が嫉妬して私を嵌めたのね。オーホホホホ。」
「フローレンス、お主、」
と、叫ぶギレイドを、ガイアスが片手で制した。
「フローレンス、そちは、セイレーン公爵令嬢が、そちに嫉妬して嵌めたと思っているのか?」
「はい。ガイアス殿下。」
「うーん。わかった。そちはベイスターンと、この場で結婚出来るか?」
「は、はい。」
ガイアスは、何とか生きる道を探して答えると、ベイスターンの方を見た。
「ベイスターン、貴様は、セイレーン公爵令嬢の婚約を破棄した身だ、断ること無いよな。」
「はっ、はい。」
ガイアスの睨みに、ベイスターンは、はいと答えるしかなかった。
「わかった。フローレンス・イフリート、ベイスターン・バルザック。両名の婚姻をこの場で認めよう。その恩赦として、罪を減刑する。フローレンス・イフリートは、帝国での地位を全て失効させるものとする。ベイスターン殿についても、戦闘以外での犯罪行為の報告が上がって来ているが、無罪としよう。ベイスターン殿、フローレンス殿結婚おめでとう。バルザック王家の次期当主夫婦の誕生を祝おうではないか。」
「ありがとうございます。」
フローレンスは、その場で泣き崩れた。死を逃れ、沈むイフリート公爵家から抜け出し、バルザック王国の王妃の座が確保されたからだ。隣国としてセイレーンに対する復讐も心に秘めていた。
「フローレンス、大丈夫か?両名とも、この会議が終わるまで、末席で座ってよ。」
「はっ。」
そう、ベイスターンが、答え、フローレンスを支えて、謁見の間の末席に連れていった。
「殿下。」
「どうした、次期セイレーン公爵。」
「納得できません。我々の領土に被害を与えた者を許すなど。」
「セイレーンは、帝国の一部だ、気持ちは分かるが、帝室が決めたことに対して、楯突くことなぞ許さん。」
「殿下。わ、分かりました。セイレーン公爵家としてここは退きます。」
「理解してくれて嬉しいぞ。イフリート公爵は亡くなり、悪魔に魂を売った者は死刑だ。イフリート公爵家に対しては、それで終わり良いな。」
ガイアスを、守り引き上げたセイレーンに対して、文句を言わせぬ態度を取り、セイレーンに退かせた。この事実に、セイレーンと、ガイアスとの微妙な関係を疑う者も出てくると共に、イフリートの被害にあった者達が、文句を言えない状況を作った。フローレンスは、この状況に内心ほくそ笑んだ。
「続いて、ロッチ皇子を。」
そう言うと、ロッチ皇子が連れてこられた。
「ロッチ、大丈夫か?」
「はい。叔父上、落ち着いて来ました。」
「ロッチ、君は、学生の身で、他の罪人と違い直接罪科を重ねたものでもない。従って、罪には問わないものとする。但し、帝室の者として、親の罪により、親が失うべき権利は、子として失うべきであろう、よって、ロッチ及び、その兄弟の帝位継承権を剥奪し、帝室から追放する。」
「はっ、謹んでお受けします。」
そう言って、ロッチは、頭を下げ、去ろうとした。すると、ガイアスがロッチに声をかけた。
「そうだ、ロッチ。お前の母親はイフリート家だったな。」
「はい。亡くなったイフリート公爵は、伯父にあたります。」
「であれば、イフリートという空いた貴族の席がある。とりあえず、帝室の追放は、次期イフリート公爵確定時とする。それまで謹慎処分とする。今の宮殿は貸し与えておく。以上だ。」
「はっ。」
ロッチは、頭を下げ、謁見の間を出ていった。この裁定によって、ガイアスと、ルイズのやり取りが、既定路線で、ロッチにイフリート家を継がせ、前公爵の罪の影響を無くす為の芝居だったと気づく者も多かった。
「では、・・・」
今回の反乱に参加した者達が次々と裁かれていった。フローレンスは、命を繋げた安堵感もあって、他人事として我関せずの態度を取り続けている。極刑が続く中ら白い目で見られていることにも気づいていない。ベイスターンは、イフリート公爵にロッチがなると知って、フローレンスの政治的な価値が完全に無くなることが気になった。フローレンスとの関係を考え直さないとと思い悩みだしている。だが、ガイアス皇子にこの場で結婚を認められたことで、関係を絶てなくなっていることに怖気づきだしていた。
「今のところ殿下に判断をお願いする必要がある罪科のある者の、これで終わりです。」
「そうか。では、論功行賞に入ろう。」
ガイアスがアレックスの方を見て、笑顔を見せた。
「まずは、アレックス・リバース。セイレーン公爵家リバース騎士爵家五男。」
「はっ。」
アレックスは、呼び出されて、玉座の前で頭を下げた。
「アレックス・リバース。」
「はい。」
「卿を勲功一位とする。」
その言葉に、びっくりする者が多かった。この回の反乱を抑えたのは普通に考えれば、セイレーン公爵家の功績。悪魔達を倒したのも公爵家であれば、どう考えても、セイレーン公爵家の代表として、ルイズ・セイレーン次期公爵が勲功一位となる。家臣の勲功は、君主の勲功となる。セイレーン公爵家の騎士爵の五男も聞いて、皆、セイレーン公爵家の家臣だと勘違いしていた。その中で、ノーム公爵家に高く老将と知られるロシウス侯爵が、前に出た。
「殿下。」
「なんだ、ロシウス侯爵。」
「世の習わしとして、家臣の功績は、君主の功績となります。ここは、セイレーン公爵家では?」
と、常識知らず、とも言いたい顔でガイアスを見た。
「侯爵、それはそうだが、アレックスは、騎士ではなく、冒険者クランのクラン長代理だ。冒険者ギルドは、部下の功績を上司の功績として見るものでない。信じられる・信じられないは別として、彼の勲功を聞いてから、話を聞こう。」
「はっ。」
ガイアスの睨みにたじろぎ、ロシウス侯爵は、列に戻った。
「改めて、アレックスの勲功を告げよう。」
そう言って、ギレイドが、順番に勲功を伝えていった。勲功一つ一つに、謁見の間がどよめいていった。実際の実績はそれ以上であったが、この時点でその事実は分かっていなかった。
・ガイアス皇子を助けた魔導具開発主導
・ガイアス皇子回復薬提供
・バルザック王国、フランツ王国連合海軍90隻殲滅
・バルザック王国帝国侵攻軍殲滅
・フランツ王国帝国侵攻軍殲滅
・バザーモン公国帝国侵攻軍殲滅
・死霊軍団殲滅
・金剛軍団殲滅
・極魔軍団殲滅
・水魔軍団殲滅
・天魔戦団殲滅
・従魔戦団殲滅
・夜魔戦団殲滅
・氷炎戦団半滅
・反逆軍5000人討伐
・ゴフィスン・イフリート捕縛
・ゴフィスン・イフリート指揮下50人の悪魔討伐
・精霊イフリート討伐
・偽皇帝ブリモンド、反逆者レッチェル軍務尚書討伐
・おとり部隊指揮
etc.
アレックスも身に覚えのない勲功に戸惑ってしまったが、流石に口に出せる状況で無かった。戸惑っていたのは、アレックスだけではなかった。
「お・・・・お前が、我が軍を・・・・。」
ベイスターンが、震えながら怒鳴っている。
「ベイスターン。静まれ。」
「閣下・・・・。」
ギレイドが睨み付けると、ベイスターンは尻込みしていた。
「兄上、恩賞は如何しますか?」
「あぁ、アレックスについては、父は、「仮に、敵の主力の三分の一でも破り、国の一つでも貰えば王位でも与えよう。帝国の傘下の、公爵の傘下の王。面白い褒美だな。」との話をしていた。」
「という事は。」
「そうだ、アレックスお主に王位を授ける。」
「はっ。」
アレックスは、頭を深く下げた。
「兄上、爵位は与えたが、領土はどうしますか?」
「そうだな、それは、セイレーンから提案があったので承諾した。」
「提案ですと?」
「ルイズ。」
「はっ。」
ルイズは、ガイアスに呼ばれて、玉座の前に出ていった。
「殿下。まずは、最新の戦況をご報告します。魔王軍、バルザック王国帝国侵略軍、フランツ王国帝国侵攻軍、バザーモン公国帝国侵攻軍共に撃破。国際法の範囲で、リヒャルト王国を含め、各国に逆侵攻をかけております。戦況として、まず、バザーモン公国は、今週中に、公都に届いているはずです。フランツ王国ですが、リヒャルト王国の王都は抑え、フランツ王国に向かっているはずです。最後にバルザック王国ですが、主たる王家は、王都に侵攻した際には既に反乱により亡くなっていたとのことです。既に、ほぼ占領完了している筈です。」
「なっ。」「えっ。」
ベイスターンと、フローレンスが固まっている。ベイスターンにとっては、家族を失い、母国が無くなる話で、フローレンスにとっては、王妃となるべき国が無くなる話だ。戦後、セイレーン公爵領を征服し、優雅な生活をイメージしていたフローレンスは、イメージが崩壊し、思考停止に陥っている。
「バルザック王家の生き残りは、ベイスターン夫婦だけとなったか・・・。ベイスターン殿は、バルザック王家の当主ということか。」
「はい、その様ですね。」
ガイアスと、ルイズは、予てから準備していた様に、ベイスターンとフローレンスを無視して話を進める。
「そうか、バルザック王国を如何する。」
「借金返済に使います。」
「借金とな。」
ガイアスは、ルイズの言葉に、大げさに驚いた。ガイアスを良く知る部下達は、悪い癖が出たと思い、良く知らない者達は興味深く見ている。
「戦費として、バルザックの国家予算の最低でも50年分位使ったので。」
「50年分か。」
バルザック王国は、ベイスターンの母国で王家の質がそれ程でなくとも、規模も大きく、それなりの規模の国家予算を組んでいる。その50年分と言えば、帝国の国家予算を優に超える規模だ。そこには触れないことを見ても、話がついているのは明らかだった。
「実際には、そんなものではなく、金額目処がついていませんか、その程度の返済で話をつけます。」
「そうか。今セイレーン公爵家債の金利が2%だから、国家予算を全て渡してやっと等価値か。」
国家予算を金利2%で割ると、セイレーン公爵家がその国を有した時の売却価値が出てくる。単純な計算だ。
「国家運営費用は、貴族領を全て直轄地にして賄えるかと。」
「そうか。」
そうして、2人は、ベイスターンを睨んだ。
「ベイスターン殿。ベイスターン殿が、戦費と賠償金をお支払い頂ければ、国をお返しするが、可能か?」
「えっ、賠償金は?」
ベイスターンは恐る恐るルイズに聞くと、ルイズはそっけなく答えた。
「多分、貴国の国家予算の10年分位ですね。因みに、ガイアス殿下のご指示があったので、貴方のやった被害額は抜いてあります。」
「国家予算の60年分。」
ぶるぶると震える声でベイスターンは、声を絞り出し、フローレンスは、遠くを見ている。
「即金でです。分割したら、年10%位ですから、雪だるま式に増えていきますよ。」
「2%じゃ?」
「2%は、セイレーンのもの、貴国の利率は、戦前で10%だった筈です。」
「えっ、」
10%だと、国家を渡しても10年分にしかならない・・・。積んだとベイスターンは、確保した。一方フローレンスは、現実を受け入れきれなかった。
「ベイスターン。どうなるの?」
「破産だよ。」
「破産。えっ。」
怒鳴るフローレンスに対して、ベイスターンは、苛立ちながら答えた
「いえ、ベイスターン殿、破産はありませんよ。王家は、破産できないんです。破産法は国民と、貴族にしか適用されず、その帝国法を、そのまま貴国は取り入れているので、王家には、適応されません。」
「えっ、どうしたら。」
「貴方達を売るしか。」
「人売りって。ギャー」
「そうだな。そんな金額で。」
フローレンスは、気を失い、ベイスターンは、混乱の極致に陥っている中、文官の列の中からか細い声が聞こえた。
「あの~。」
「どうした、ローリンゲン宮廷魔導研究所長。」
イフリートに加担した宮廷魔導士達が排除された中で、歴代最年少で宮廷魔導士の第三位の宮廷魔導研究所長に就任した鬼才だ。ただ、魔導研究オタクなので、見るからにか細かった。
「ルイズ殿下、イフリート召喚の血統魔法の謎を実験で調べたいので、お貸し頂けませんか?」
「研究か。だが、それだけの資金を出せるか?」
「いや、予算からは、」
「でがな・・・。」
ガイアスと、ギレイドが予算のことで話しているところにアリアが声をあげた。
「兄上。」
「アリアどうした?」
「我がクランのセイレーン公爵家への貸しの内、幾許かで出来ないの?」
「出来るが。」
ルイズは、アクアクラン長のスノーとアレックスを見た。
「私は良いわよ。」
「決まりだね。」
二人が快く答えるとガイアスが笑顔で気絶していると、引き攣っているバルザックをみた。
「ということで、2人は宮廷魔導研究所が引き取り、研究実績をセイレーン公爵家に共有する。2人の生活費は、宮廷魔導研究所持ちで。」
「バルザックご夫婦。宮廷魔導研究所は、実験動物には十分な餌を与えますので、安心して下さい。」
ローリンゲンは、ニッコリと笑った
「餌?」
「餌です。」
「餌。」
フローレンスだけでなく、ベイスターンも気を失った。
「で、本題だが、バルザック王国の領土については、アレックス、スノー2人にアクアクランへの対価として領有権と、徴税権、帝国免税権を与えることにした。アレックスには、王位を、スノーには、公爵位を与える。権利の分配については、2人で分けよ。アクアクランのオーナー、アリアには、候爵位を与える。セイレーンとの貸し借りは家の中で処理せよ。また、セイレーンに、伯爵位の任命権を一つ与える。ロッシに与えよ。」
「「「「はっ。」」」」
気絶している二人を尻目に、アレックス達四人への恩賞が決まった。
「あと、セイレーンの戦の後の処理について、今話しておこう。バルザック王国は、先程の通り、アレックスと、スノーに与え、アレックスは、セイレーン公爵家でなく、アレックス、スノーは、帝国直属とし、王領、及び侯爵領とする。流石に王家だからな。フランツ王国については、独立を継続させる予定だが、帝国の属国とする。バザーモン公国は帝国の直轄領とし、リヒャルト王国は、セイレーン公爵領に併合することとする。」
「セイレーンは、4カ国落として、実質、1カ国得て、強力な武力を手に入れる。帝国は、何もせずに1カ国を得て、強力な貴族を直参として得る。その上で、セイレーン前公爵の悲願であったフランツ王家への復讐を果たし、孫をフランツ国王に据えることを成し遂げることで、セイレーン公爵領の民、騎士、貴族達の気持ちが晴れる。そんなことですな。」
「そうだ。まあ、アレックス達は統治に興味ないだろうから、帝都に屋敷を設けて、代官長は、帝国から出そう。監視役に、副代官長としてセイレーンからも出せば、大した問題はないだろう。良いポストになるな。」
「はい、内務官僚の出世ポストの一つになるだろうな。」
「アレックス達は傀儡で良いな。しっかり治めたいなら、学校でみっちり統治の勉強をしてもらうが。」
「はっ。傀儡で結構です。」
「よろしい。では、このモルモットの2人を研究所に連れて行ったら、続きをしようか。」
フローレンスと、ベイスターンを宮廷魔導研究所に運ばれて、夕方まで、論功行賞を行っていった。二人は、宮廷魔導研究所でモルモットとして、一生を研究所内で過ごした。喧嘩も多かったと言われるが、4人の子供を設け、4人はそれなりの魔導士として活躍した。また、フローレンスは、研究されることで、血統魔法が大きく解明され、魔法の発展に寄与した、魔導史最高のモルモットと言われ、学院での教科書にも載ることになった。子供達の残した記録では、二人は子供からみても自業自得で、庇いようのない人たちだったが、いつもアリアの悪口を二人でいいながらも、それなりに幸せだったとのことだった。
翌日、アレックス達に与えされた王宮の部屋にいると一人の白髪の老紳士が入ってきた。
「アレックス陛下、スノー閣下、代官長を拝命しました、モノクス内務審議官です。」
「「よろしくお願いします。」」
モノクスが、握手を求めてきたので、2人は握手で返した。話を聞くと、彼は、元々セイレーンのアレックスの生まれたリバース領の近所で生まれ、勉強して官吏になり、平民として最高位となる審議官にまで上がり、内務省で、筆頭補佐官をやっていたが、セイレーン侵攻で一旦退官し、今回復官して、志願して代官長になったそうだ。将来は次官級になるが、初代が平民ということで、無能な貴族達の汚職ポストになることは、防げるらしい。代官長に対する注文を聞かれたが、アレックスは思いつかずとりあえずは、お任せにしたが、スノーからは、開発や、王宮造り等についてさまざまな注文があった。
「それで、基本的に王宮は、実務面優先で、華美である必要は無いわ。王家がお金を使うことで潤わすなんて、前時代的なのよ。王家に金があれば、投資して、産業を作り、街を整備して、よりお金を作っていく。無駄無しで良いわよ。私達にも資金を送る必要はないわ。アレックスは唸るほどお金を持っているし、とりあえずは、冒険者として生きていくから、そんなにお金使わないし、アクアクランの傘下の商会、工房へアレックスが莫大な金額貸し付けていることになっているから、今後の売上で莫大な利益が待っているから。」
「えっ。」
「当たり前でしょう。貴方が工房に渡した素材や、商会の利益の源泉となっている道路、施設の材料費は、工房や商会で適切に処理されているのよ。しかも、クランに売った訳じゃないから、クランから天引きされないし。純粋に貴方の利益よ。今までクランが商会を持ってなかったからルールが無く、会計処理ルールに照らすとそうなるらしいの。」
「ごめん。スノーさん。スノーさんの分前を取る形になって。」
「そうよ。アレックスくん。アレックスくんの莫大な資産は私のものにするからね。」
「私のもの?」
「そうよ、私達付き合っているんでしょう。一生かけて使い倒してやるから。」
「スノーさん。」
アレックスと、スノーは、3年後復興した旧バルザック王国、新生リバース王領の、新宮殿で華燭の典を挙げ、1人の娘をもうけた。娘は、アリアと、ロシュフォール王子との間に生まれた次男と結婚して、次世代に繋げて、リバース王領は、帝国最大の工業地帯へと発展していった。その頃、二人はと言うと、冒険者を続け、冒険者ギルド再編し、再編後の帝国冒険者ギルド総帥、副総裁となった。二人の冒険は後に英雄譚として語り継がれ、アレックスをドロップキング、アリアは、かの伝説の魔導士ドラ・
バコ、ドス、ボカ・・・(ナレーター死亡)
「美しい、ビューティフルクイーンと言われ幸せに暮らしましたとさ、めでたしめでたし・・。」
「ひいオバーちゃーん。ナレーターを倒しちゃってダメじゃない・・・。だから私、破壊神の掃除屋さんって呼ばれるんだから・・・。ひいおじいちゃんもなんか」
ZZZZzzzz
「伝説がドロップキングが、寝ないでよ~・・・・。ってあらやだ、みなさん、今までありがとうございました。お・し・ま・い。」
ドロップキング 〜 平均的な才能の冒険者ですが、ドロップアイテムが異常です。 〜 出汁の素 @dashi_1977
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます