夜長ノ物語

家猫のノラ

第1話

ドンドコドンドコ。


高く暗い秋の空。小さな村に太鼓の音が鳴り響きます。ここは丘の上の辺境の地、キボウ村。普段は家畜を育て老若男女、年中働いています。だけど今日だけはお休み。

毎年10月の14日は村をあげてのお祭りだから。


ドンドコドンドコ。ドンドコドンドコ。


太鼓の音が強くなっていきます。

「シュウ!早くぅ村長様んとこ行かないとぉ、語り巫女に間に合わないよぉ!」

皆がざわざわと村の中心にある大きな村長の家に入っていきます。

「キィちょっと待ってよぉ」

そんな喧騒の中、10歳前後の少女と少年が、人混みの中はぐれないようにギュッと手を握っています。大人に負けじと胸を張ってずんずん歩くキィ。それに引っ張られるようについて行く猫背のシュウ。

押され、揉まれで着いた頃には、家の中はすでに村人でいっぱい。しかもなんだか今年は大人たちがざわざわしています。

「語り巫女が変わったらしいぞぉ」

「ばぁ様はいつの間に後継者を育てていたんやぁ?」

「若いのかぁ?語りは大丈夫なんだろうなぁ…」

語り巫女、というのはその名の通り物語を語る巫子。

あの少女と少年のような子供たちが物語を熱心に聞くのは想像できますが、ここでは屈強な大人たちも同じように語り巫女の物語を楽しみにしています。

それは、巫女が語る物語が、とても面白い伝説だからです。


チリン。


深いフードをかぶっていて巫女の顔は見えません。ただ、大きな耳飾りだけが輝いていました。

巫女は大暖炉を背にして、おいてある席にどっかりと腰を下ろしました。


「夜長ノ物語」


低く、それでいて繊細な、よく通る声。今までのざわめきが収まり、部屋に静寂が訪れます。


「夜長ノ物語。そう聞いたら、思い浮かぶのは慈悲深い女王の姿でしょう。

そして次は女王の善行を助けた賢者でしょうか?

しかし私は違います。私が思い浮かべるのは1人の少年。

これから話すのは、消えてしまった…いえ、一度も、誰にも、知られることのなかった物語。

真実の物語」


チリン。


耳飾りが音を鳴らします。

ギュッ。

シュウとキィは握る手を離しません。もう必要ないのに。

今年はいつもと違う。そんな予感が静かな夜を包み込みます。


「長い長い夜の始まりです」


チリン。


「1000年前、王都クレタ。当時の国王ミツルノ王は突如姿を消した。遺言はたったの1つ。

『知を何より重んじて、王都、各都市に天文学舎を作り、最先端の機器と教師を用意すること。』

そして最後に予言じみたことを残した。

『500年後私と同じように姿を消す者が現れる。』と。」


チリン。


「500年前、王都クレタの中心部に位置する王立天文学舎ミツルナ。そこはミツルノ王の遺言より500年続く学舎で、常に30人ほどの学生が集まっていた。しかしその年は特別だったのだ…。

外へ出かけたり、帰省したりと皆が自由に過ごす日曜日。1人の少年は寮に閉じこもっていた。どうやら必死に何かを書いている。肌が透き通るように白く、その美しい金髪のかいまから好奇心に満ちた灰色の目が見えた。

『一体どうすれば……まさか?!…急いで賢者様と話さなければ』

謁見の受付表には、細やかな字で『キレイ・ツク』と書かれていた。

これがこの国を救う、秀才の名前である。」


チリン。


「一週間後、ツクは様々な彫刻がほどこされた扉の前に立っていた。

『賢者様、ツクです』

落ち着かない様子で応答を待っていた。

『入れ』

扉を開けると1人の老人が革張りの大きな椅子に腰掛けていた。この老人が賢者である。

『どうしたツク』

『誤魔化さないでいただきたい。貴方さまなら分かるはず』

ツクは応答に対し、挑発的で普段なら罰せられるであろう発言を冷静に言った。

『…其方は聡い。粗方もう分かっているのだろう?世界の仕組みについて』

賢者の声は低く、重かった。

『分かるどころか私はもう覚悟を決めました』

彼の声もまた重かった。

『そうか…もう…決めたか』

『明後日に最初の捧げがある。本当にギリギリ間に合いましたよ』

寂しげな、しかしどこか自嘲するような声。

『そうか。其方捧げるのか…』

『私はこのために生まれて来たのだと確信しました』

『そうか。その勤めの重さ、忘れるでないぞ』

『言われずとも』

口は強気だが、握る拳は震えていた。

ツクはお辞儀をすることもなく、扉を力強く閉めて出て行った。

『ツクはキレイの血筋。ここで消えるのが一番いい。奴も国の役に立てて本望だろう…そうだ、彼奴も連れて行かせよう』

ツクが去った部屋で賢者は独り呟いた。」


チリン。


「旅の支度は夜のうちにすんだ。一人で行くのだから大荷物にならないはずだったからだ。しかし…

『賢者様?とサンシャ??』

遠い山脈に朝日が差し掛かる頃、ツクはすでに馬にまたがっていた。

『ツクよ、其方はクレタから出たことも、ましてや山に登ったことも、野生動物と出くわしたこともない。そして昨日も言ったように、その勤めの重大さは決して一人で背負えるものではない。だからわしの義娘サンシャを連れて行け』

そう言って肩を掴まれた女は恭しく一礼した。それを見ながらツクは困り顔を浮かべた。

このサンシャという女は王家と伯爵家の血をひいており、大規模な政変で母方の伯爵家が落ちた時、娘が王家に嫁いだことで繋がりがあった賢者の元にやってきたお嬢様である。落ちたとはいえ、家柄が良く、成績も優秀だった。後者はもっぱら改ざんとの話だったが。

とにかく扱いにくい女なのだ。

『賢者様、お気持ちだけで構いません。1人ならばどうとでもなりますが、2人となると何かと面倒です。それに賢者様もおっしゃった通り、危険な旅路です。そこに愛する義娘を向かわせて良いのですか?』

女は賢者と目配せすると、淑やかに泣き出した。

『ツク様はとても聡明で、馬術も剣技も優秀ですわ。それに何より自らを顧みないその勇気、素晴らしいですわ。それゆえサンシャは心配なのです。貴方は外の世界については無知、赤ん坊ですわ』

そしてこのようなことをしゃくり上げずスラスラと言ったのだ。

『僕が無知な赤ん坊だと!?』

彼はこれまで一度も言われたことがない言葉に神経を逆撫でられ、声を荒げた。

『そうでございますわ。あなたは赤ん坊。赤ん坊には子守が必須。私はあなたが心配なだけですわ』

『そういうことだ。サンシャの料理は美味しいぞ。歳も同じだ、何かと話も合うだろう』

畳み掛けるように御託を並べる。

『…無駄な議論はやめよう、時間が惜しい。サンシャ、君は本当に付いて来たいの?』

昇り出した朝日を浴びながら、彼は女に問いかける。

『もちろんですわ』

『分かった』

彼は苦い顔で応じた。」


チリン。


「『やっっっと出れた』

馬を休めることなく走り続け、昼過ぎ、ツクたちはクレタを出た。

『あ、ビックリした?私ね、都では猫かぶって理想の孫娘やってるから。まぁ都を出たことないから猫脱いだの初めてだけど』

出発の時にツクを説得した健気な女は消えていた。そこにいたのはただの反抗期の娘だ。

『は?外のこと知ってるんじゃないのか!?』

彼は驚き馬を止めて振り向いた。

『そんなのおじいちゃんの出まかせだよ。料理はまぁまぁ出来るけど』

ついに彼は頭を抱えてしまった。

『なんなんだ。賢者様はこの国を救わなくてもいいのか?』

彼の呟きに今度は女が驚いた。

『国を救う?なにそれ超メルヘン』

秋の少し肌寒い風が2人の間を抜ける。少しの間沈黙が流れる。

『サンシャ、お前もしかしてなにも聞いてないのか?』

沈黙の間、頭を働かせていた彼は問い掛けた。

『聞いてないもなにも…、えっ?ツクあんた隕石取るんじゃないの?』

沈黙の間、ドギマギしていただけの女は困惑した。

『…サンシャ、君はもう引き返しなよ。君は賢者様に騙されてる。もし都に帰りたくないなら帰らなければいい、君の馬の鞍だけでも一生は食べていける値はつくから自由に生きろ』

また沈黙が流れた。女は珍しく頭を働かせているんだろう。

『…それじゃ私は探され、いずれ見つかる。だから私はあんたについてく。役目を果たしてそれからおじいちゃんと話すの』

『君は…いや、いい。なんでもない』

彼は言葉を濁した。」


チリン。


「そこから2人は一言も喋らず進み続け、夜になる頃には山の麓まできていた。

王都は円状の山脈に囲まれた平野の中心部に位置しており、山脈に近づいていくほど田舎になっていく。だからこの辺りには民家も街灯もなかった。

ただ2人の間で焚き火が赫赫と燃え上がっていた。

『ねぇ寒いんだけど』

『上着着れば』

木を焚べ続けなければすぐに消えてしまう。火が消えれば終わりだ。賢者の言っていた野生動物に襲われ、冬眠の栄養となるために2人は永眠することになるだろう。

『ねぇいい加減教えてよ』

『…何を』

火が落ち着いたので、彼は鬱陶しそうに顔を上げた。

『あんたは何をしようとしてるの?国を救うってどういうこと?』

『教えたら黙ってくれるのか?』

『内容による。でも教えてくれなかったら聞き続ける』

しばらく考えてからツクはため息をついた。そして紙を付ぎ足しぶ厚くなっているノートを取り出し、開いた。

『地球と月と知球の位置だ』

『は?』

その図は、何枚にも渡って書き殴られた星の移動図だった。

『地球というのは僕たちがいる知球から約20光年離れた遠い星だ。その周りを回っている衛星が月。その月が何故かこちらに向かって真っ直ぐ動き出していた。この図は過去550年間の月の移動図だ』

『ぶつかっちゃう…?』

『いや、逆だ。これが最新の観測記録だよ』

そう言って比較的新しい継ぎ足し部分を開いた。古いものとは筆跡も違かった。

『真ん中で止まってる…?』

『そう。止まってしまったんだ』

話すのに夢中になり2人は火を気にしていなかった。火が消えた。

『何か問題があるの?』

すぅと息を吸って吐く。重たい口を開いて一気に喋る。

『この移動図はたくさんの人が一生を捧げて研究を繋げていた。そしてその長い歴史を始めたのは、500年前謎の失踪を遂げた国王、この国を知の都としてくれた国王、僕たちの学舎を作ってくれた国王、君の遠い先祖…』

『ミツルノ王…?』

よほど歴史に自信がないのだろう、先祖の名前ですら疑問形だ。

『そう。そして王が書いたと思われる古文書も残されていて、僕は解読してみた。その結果分かったことは、とんでもなく…君の言葉を借りるとすると、メルヘンなことだった』

『何なの?』

急かすように質問を重ねた。

『王都クレタは月光により守られていて、長い期間浴びなければクレタは結界を失う。そして月光を強めるために月を近づけるには生け贄が必要』

『は?』

『そして僕は今からその生け贄になってくる。記録上3人目の名誉だ』

『生け贄って死ぬの?』

『多分ね』

その言葉は自分の運命を確信していた。『多分』じゃない。彼は死んでしまう。

『は?何それバカじゃないの。ていうかそんなものをどうしたの?』

『先週、王立図書館の14番目の棚、14番段目の板が二重底になっていた。本を全てどけてみると、鍵穴が見つかり、毎年成績優秀者に渡されるメダルとぴったり合わさった』

『それっておじいちゃんも関わっているの?』

『多分ね』

2人は仰向けになった。星が綺麗だった。

『僕は認めてもらいたいんだ』

『は?あんたそんなことのために死ぬの?』。」


チリン。


「朝起きると、2人は竜の腹の中だった。

『…ねぇどうしてこうなったの』

『君が話しかけたからだ』

昨晩火が消えた後、この辺りにいる竜に丸呑みにされたのだ。

『早く出ようよ』

『刃が立たないんだっ』

ぷよぷよした濃いピンクの肉に対抗する小さな刀はもはやおもちゃにしか見えなかった。

『もう!あんたは頭ばっかり良くって何にもできやしないじゃない!!』

『…そうか、それだ!!!』

ツクは突然大きな声を出した。

『別にそんな間に受けなくていいんだけど…』

『頭を使えばいいんだ!!』

彼はそう叫ぶと、荷物の中から昨日のノートを取り出した。ページをバラバラとめくる。

『古文書の中に確か同じような記述があった…これだ!!』

開いたのは古代かな文字が一面に敷き詰められている見開き1ページだった。

中央に竜の絵が描かれている。

『これってこいつ?』

女は気持ち悪そうに肉を突きながら尋ねた。

『俺は寝てて見てないけど竜の顔こんな感じだった?』

『こんな感じだった気がする…っていうかなんであの状況でまだ寝てられたの?!図太すぎるでしょ!!』

『…うるさい。それより僕たちはこのまま竜に乗っていていい。僕たちは案内されてるんだ』

彼はバツが悪そうに頭をかいた。

『地獄に連れていかれそう』

『…うるさい』。」


チリン。


「2人はヌルヌルした肉の壁にもたれかかった。

どれくらい進んだだろうか。竜というより蛇みたいだ。地面を這いずり回る振動が伝わる。

『ねぇ私たちどこに向かってるの?』

『英知の火。これから僕は焼かれに行く』

古文書によれば、英知の火は神聖なもので人間には隠されている。だから麓で火を焚いた者は竜が案内してくれるのだ。喰われるのはいわば目隠しである。

『早速死ぬの?』

『いや、まだ死なない。月の満ち欠けと合わせ順番に巡って行く。古文書には山としか記述がなくて困っていてがこういうことだったんだな』

ツクは話題をそらした。

『本当に死ぬの?』

『…』

彼は何も答えなかった。答えたくなかった。

『なんで死ぬの?なんで認めてもらいたいの?』

『うるさい。君には分からない』

『ねぇ昨日さ、私に自由に生きろって言ったじゃん?自由じゃないのはあんたの方じゃないの?』

『うるさい』

『私はね、あんたが思ってるよりバカじゃない。あんたが一番階級に縛られてんだよ』

『君は何にも分かってないよ、バカだよ!現に今も自分が賢者様に厄介払いされたことに気が付いていないじゃないか!!』

『気が付いてるよ!!』

『…?!』

予想外の返事に彼は驚き、黙ってしまった。

『私はあんたに騙されてるって言われた時、利用してやろうと思った。あんたと一緒に国を救って、おじいちゃんに話して、全てを作り変えるの』

『じゃあなんで邪魔を…』

女は彼の言葉を遮った。

『でも、あんたが死ぬなら話は別だよ。私は私が自由になるために誰かに犠牲になってほしくない。それこそ私はあんたの死に縛られ続けることになる。そんなの絶対嫌』

『個人の願望を吐き散らかさないで。この国が結界を失えば、貴重な隕石の取れるクレタは侵撃にあい、滅ぼされる』

『だから私が全部作り変えるって言ってるじゃん。だいたいおかしくない?そのよく分かんない結界のせいで、私たち国から出られない。この山脈を超えられない。生まれた瞬間から死ぬまで縛り付けられてるなんて、絶対おかしい!』

『出られないから僕たちは安全なんだ。外からも入ってこれないから!』

『私がこの国を強くする。私がこの国を優しくする。私がこの国を開く。私はこの国の女王になるの!』

『はぁ?』

『私は前の政変の時に落ちた。だけどまた大規模な政変が起きようとしているの。それで母の家は上がって来ている。私には立派な王位継承権があるの。だからおじいちゃんは私を今の内に排除しようとした。可愛い孫が不利にならないように。いい?これはチャンス』

『じゃあ、なおさら僕たちは国を守ったほうがいい。いいネタになる。僕は生け贄になるべきなんだ』

『うるさい!あんたこそバカなの?私さっき言ったよね、それは嫌なの。それにあんたは私と違って賢い。これからはおじいちゃんの代わりに私に付いて、私が女王になれるように尽力を尽くしなさい!!』

『僕ぐらいの人間ならどこにでもいる』

『ならそんなレベルのあんたは英雄にはなれない!自己犠牲がそんなに好き?』

『そういうわけじゃ…』

『とにかくあんたは死ぬな!!』

そこで二人は外に放り出された。」


チリン。


「ヌメヌメした体液が体にまとわりついて前が見えない。二人は顔を拭った。

『『わぁ』』

二人の背丈ほどの高さまで火が燃え盛っていた。周りはすっかり夜だ。

ツクはただ呆然と眺めていた。

『まだあんたはこの火に飛び込みたいの?』

ツクの背中は震えていた。そう、彼は最初から、

『僕は怖い』」


チリン。


「二人はまた竜の腹の中、馬の背中に乗りミツルナに帰った。着いた頃にはもう夜で学舎は静まり返っていた。

『あんたどうすんの?』

『明日考える』

『じゃあまた明日』

『うん』

ツクは寮の方へ歩き出し、サンシャはその反対側にある自室に歩き出した。数歩進んでから女は彼の方に振り向いた。

『…ねぇ』

『何?』

彼は呼びかけに振り向いた。二人は向かい合った。

『これから私たちが国を守ろう。結界なんかに頼らずに生きよう』

『うん。約束しよう』

『約束だからね?』

この約束を最後にツクは姿を消した。

生け贄の力なのか、結界は今もなお解かれておらず、誰もこの山脈を越えられない。この国は守られた。

サンシャは全てを、ツクの唯一の理解者であったジェリにだけ話した。

ジェリはサンシャの想いを信じ、女王になれるように尽力を尽くした。嘘の伝説『夜長ノ物語』を捏造した。そして女は無事女王になった。しかし女がツクの身を案じていたのは見せかけだった。ジェリはそのことに気づき王都を去った。そしてサンシャが死んだ後も、ツクを探し続けた。その間に『夜長ノ物語』は語り巫女によって広まった。」


「時は来た。私は今一度月を、ツクを近づける。皆に真実を伝える。

私の名はジェリ。不死の賢者」


チリン。


語り巫女は立ち上がり深くかぶっていたフードを取り払いました。耳飾りが激しく光ります。


「今からこの身捧げる!!」


チリン。


そう叫ぶやいなや、大暖炉の火に飛び込みました。

始まりの時のような静寂が訪れました。しばらくしてから皆は慌て恐れ始めました。

シュウとキィは大暖炉に近づき、中を見ました。

大暖炉にはただ炎があるだけです。語り巫女の姿はありません。

二人は顔を見合わせました。





「ジェリ様。王立軍と地球防衛軍が待ち伏せしています」

「分かった。プラス、こちらも準備して行くとしよう」

ジェリとプラスは丘の頂上で話していました。

「次で半分ですね」

「ああ」

秋の夜は高く、暗く、長い。それは変えられない。ただ照らしてくれる存在を取り戻したい。

これが私の夜長ノ物語。

「長い長い夜の始まりだ」

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